SDGsで自由研究![第4回]

実験&工作編……簡単コンポスト&浄水器

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自分で電気を生み出し省エネを実感

 どんな電化製品もコンセントにつなぐだけで簡単に動きますが、電気を生み出すのはとても大変なことです。それを実感させてくれるのが、手回し発電機。この発電機にいろいろな電球を装着し、点灯させる実験をしてみると、電気のありがたみを実感することができるでしょう。
 また、電球の種類によって、発電にかかる労力に差があることにも気づくはずです。

「LED電球は軽く回しただけで点灯しますが、白熱電球は抵抗があって重く、力を入れて回さなければなりません。これによって、省エネ性能の違いを実感できます。この手回し発電機は数千円で購入できるものもありますが、各地にある環境学習機関によっては貸し出してくれるところもあります」

 もう一つ、発電に関する実験のアイデアを下村さんが教えてくれました。

「夏の日中、カーテンを閉めた場合と開けた場合で、部屋の温度がどのくらい変わるかを計測する実験です。これによって、暑い時間帯はカーテンを閉めておく方が、エアコンの効きも早いこともわかりますよ」

生ごみを栄養たっぷりの堆肥に!

「フードロスにも関連しますが、家庭ごみを利用してコンポスト(生ごみを堆肥にする容器)を作り、ここでできた肥料で野菜を育ててみるのはどうでしょうか。SDGsという意味では、ごみの削減や有機的なリサイクルに貢献できます。自由研究では、このコンポストでどのくらいの生ごみを削減でき、どんな植物を栽培することができたかを発表するのもいいでしょう」

 実際に、下村さんに「自家製コンポスト」の作り方を教えてもらいました。

用意する物

 プランターや発泡スチロールの容器・乾燥させた土・火を通していない生野菜クズ・果物の皮・お茶ガラ・卵の殻など。


(1) 生野菜のクズを細かく刻みます。新鮮なうちに刻むのがコツ。乾燥が速くなり、臭いや虫などの発生を抑えられます。
(注)火を通した残飯は、臭いや虫が出やすいため、この方法には向きません。火を通す前の生ごみだけを使用します。

(2) プランターなどに土を6分目ほど入れ、刻んだ生野菜を入れ、よく混ぜます。1回に混ぜ込む量は、プランターの土の約1/6くらいまで。プランターの数や大きさはごみの量に合わせて用意しましょう。お茶ガラを混ぜると、虫避けに効果的。

(3) 庭やベランダに置き、毎日1、2回かき混ぜます。雨水が入らないように注意しましょう。

(4) 夏場は4、5日過ぎると 最初に投入したものが腐葉土になります。その後も生野菜クズを投入し、少しずつ土を足していきます。

(1)~(4)を毎日繰り返と、数ヶ月でプランターがいっぱいになり、とても良い堆肥ができ上がります。これを土と混ぜ合わせて使います。

浄水器も手軽に自作!

 昨今、多くの浄水器が売られていますが、主流は活性炭とフィルターを組み合わせたカートリッジ式のものです。構造は意外に簡単。材料を買えば子どもでも自作できます。

用意する物

 下部に蛇口がついているスポーツ用のドリンクキーパー、または、アウトドアレジャー用の水タンク、布、活性炭・備長炭・竹炭・セラミックなど。


(1) ホームセンターで、下部に蛇口のついているスポーツ用のドリンクキーパーを購入。アウトドアレジャー用の水タンクでもOK。

(2) 蛇口の内側を布でカバーします。中には活性炭・備長炭・竹炭などを敷き詰め、セラミックを入れます。ミネラルをたっぷり含むサンゴ石などを入れるとさらに良いでしょう。
 炭は、カルキ臭の原因となる塩素や悪臭を吸着し、水道水に含まれる有機物を分解します。また、ミネラル分が水に溶け出すのでまろやかな味になります。
 セラミックもカルキやカビの臭いを取る効果があり、水を弱アルカリイオン化します。

(3) あとは上から水道水を注ぐだけ。

    【お手入れのコツ】
    炭・セラミックは週に1回流水で洗い、天日干しすれば効果が回復します。炭は、もろくなり、割れやすくなったら替え時です。細かく割って植木の土などに混ぜるとよいでしょう。ものにより、2か月~半年間は繰り返し使用できます。

雨水タンクは親子で合作!

 雨水タンクも手作りできます。材料もホームセンターで手に入るものばかり。浄水器よりやや難しいですが、親が手伝えば、子どもでも作ることができるでしょう。

「毎年大雨が降ると大量の雨水が下水に流れ込み、入りきらなかった水が道路にあふれるという現象がしばしば起こります。雨水タンクに水を貯める家が増えれば、それらがダムとなって道路の冠水を防げるかもしれません。そういうことも自由研究でまとめられるといいですね」
(注)コンポスト、雨水タンク、浄水器の作り方は、『環境市民の遊びかた暮らしかた』(NPO法人環境市民)から抜粋

プロセスにこそ価値がある

 最後に、これからSDGsをテーマに自由研究に取り組もうとする子どもへのアドバイスを、下村さんに語っていただきました。

「一番伝えたいのは、“結果だけが成果ではない”ということ。子どもたちは、いい結果を出してうまくまとめたいと思うでしょうが、その過程でどのようにして調べ、考え、新しい気づきを得て、どんなふうに考え方が変わったのかという、プロセスそのものが貴重なのです。

 幼いうちは、わかりやすく結論を出したいという欲求に駆られるものです。しかし、そもそもSDGsが目指す目標は一朝一夕に達成できないし、いろいろな要素が複雑に絡み合い、解決が難しい問題ばかりです。だからこそ『答えが出ない』『これだけが正解じゃないかもしれない』という結果になる方が、子どもたち自身がいろいろ考えるようになるのでいいと思います。

 調べる過程で地球温暖化、熱帯雨林の激減、海の汚染などの原因が見えてくると、自分の生活スタイルを変えることにつながるかもしれません。例えば買い物をテーマに自由研究をしたことで、自分だけが使い捨てのペットボトルを買うのをやめて金属製の水筒にしても、すぐに社会がよくなるわけではないけれど、これがこの先世界にもっと広がれば、未来はきっとよりよくなる、つまりSDGsの目標が達成されるという希望をもてます。

 だから、最後にきれいにまとめようとしなくていい。曖昧な結果になってもいい。問題提起で終わってもいい。それをきっかけにこれまで当然だと思っていたことに疑いをもったり、視野が広がったり、新しい気付きを得たりして、その結果、行動が少しでも変わる方が自由研究の成果としては大きいと思います」

SDGsを動画で学ぶ :「内田篤人のSDGsスクール!」

www.youtube.com/channel/UCyLpj6fbC4Q8sXYu8o_2x3Q/featured

LIXIL SDGsアンバサダーの内田篤人さんと一緒に、SDGsというテーマを分かりやすく学び、 楽しい実験や体験を通じて、皆さんと一緒に知識を身につけていただくYouTube番組です。

≪お話をうかがった方≫

下村委津子(しもむら しづこ)さん

NPO法人環境市民副代表理事。1997年、フリーランスアナウンサーとして担当していたラジオ番組で、COP3(地球温暖化防止京都会議)について毎日報道していたのをきっかけに環境活動に目覚め、NPO法人環境市民に加入。以後「日本の環境首都コンテスト」を10年間実施、環境教育やグリーンコンシューマー活動などを展開。2017年、副代表理事に就任。現在はメディアと環境NGOの双方を知る者として、より正確な情報と真意をわかりやすく多くの人に伝えられる役割を担いたいとの思いで、持続可能な生産と消費の実現を目指して活動中。そのほかNPO法人持続可能な開発のための教育推進会議 (ESD-J)、一般社団法人市民エネルギー京都理事、NPO法人FEE Japan(国際環境教育基金)理事、NPO法人アントレプレナーシップ開発センター理事、京都市廃棄物減量等推進審議会審議員、龍谷大学政策学部非常勤講師なども務めている。

文◎山下久猛
撮影◎山田紗基子
撮影協力◎京都ペレット町家ヒノコ
写真提供◎photoAC/Shutterstock/PIXTA
イラスト◎たかはしみどり

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