今日からできる! 誰でもできる! SDGs入門[第6回]

ごみ問題編[2] 地球にもお財布にも優しい自炊&家庭菜園

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同じプラスチックでも買い方を変える

【具体的アクション】

  • 紙から電子データに
  • 6Rでごみを減らす
  • ごみの分別を徹底する
  • 自炊を増やす
  • 家庭菜園をしてみる

 前回、プラスチックごみの脅威について新田さんに解説してもらいましたが、どうしてもプラスチック製品を買わなければならないこともあるでしょう。
 そのようなときはどうしたらいいのでしょうか。新田さんはこう話します。

「同じプラスチックでも、環境に配慮した素材に変えるといいでしょう。最近は、植物由来のプラスチックやビニール袋、生分解性プラスチックで作られた弁当箱なども増えています。プラスチックの使用量が少なく、燃焼時のCO2排出量が少ない容器を使ったカップラーメンなどを選ぶ方法もありますよ」

 また、洗濯用や食器洗い用洗剤、シャンプー、ボディソープなども、2回目以降は詰替え用を買ったり、より薄くて軽いペットボトルを選んだりすれば、プラスチックごみを減らせます。

「SDGsへの貢献を謳っている企業が作った製品を買えば、SDGs達成に貢献する製品が市場に増え、好循環になりますね。自分一人だけが気を付けてもSDGs達成は遠すぎる、と言う人もいますが、世界人口は今や78億人(世界人口白書2021より)。私たち一人ひとりがそういう商品やお店を週に1回だけでも選ぶだけで、プラスチックごみを大量に減らせるのではないでしょうか。

 そして、そういう身近なところを入り口として、もう少し知ってみよう、調べてみようと興味をもってもらえたら、さらにプラスチックごみは減らせます。だから実はひとりひとりの力はとても大きく、その取り組みには大きな意味があるのです」

紙から電子に

 CO2削減や森林破壊の防止のためには、紙のごみを減らすことも重要です。資料類も全ページ印刷する必要があるのか、検証してみるといいでしょう。もしかしたら、必要な箇所だけノートにメモをしたり、デジタル付箋を使ったりするのでも十分かもしれません。

 また、今は1人1台パソコンやタブレット所有を目指そうとしている時代です。会合や会議の資料なども、デジタルデータで配布することが有効なのではないでしょうか。

 プライベートでもカードなどの請求書や明細はオンラインに切り替えれば紙ごみを削減できます。近年、オンライン化の推進のために、紙の明細の送付を有料化する企業も増えているので、オンライン明細の方がお得でもあります。各種支払いもオンライン上で済ませれば自宅にいながらにしてできるので楽です。

6Rでごみを減らす

 以前から、ごみを減らすために、リデュース(Reduce:ごみの発生を抑える)、リユース(Reuse:使えるものは繰り返し使う)、リサイクル(Recycle:資源として再利用する)の頭文字を取って“3R”という取り組みが推奨されていました。

 今ではそれに、リペア(Repair:物を修理して使う)とリフューズ(Refuse:あげると言われてもごみになるものは断る)を加えた“5R”や、さらにリフィル(Refill:中身だけ買う詰め替え)を足して“6R”と言われたりもしています。
 前回から見てきたプラスチックごみを減らすさまざまなアイデアも、この“6R”の視点で考え出されたものです。

©PIXTA

「中古品を買ったり、不要になった物を売ったりするだけでも、十分SDGsに貢献できます。今はフリマアプリが流行し、誰でもスマホで気軽に中古品を売ったり買ったりできる時代なので、積極的に利用しましょう。欲しいものが安く買えるし、不用品は売ればお金にもなるので経済的にもメリットは大きいですよ。

 中でもおすすめなのが、ご近所同士で売り買いできるサイトの利用。輸送コストも抑えられますからね。お買い物自体にはストレス発散の側面もあるといわれていますので、断捨離の視点や、人に譲って使い続けてもらう楽しさ、自分も使い続ける喜びなど、総合的に調整することも念頭においてはいかがでしょうか」

ごみの分別を徹底する

 ごみを出す時は細かく分別することも重要です。自治体によって燃えるごみ、燃えないごみ、プラスチックごみ、資源ごみと、細かく分かれていますが、分別をより徹底することで、CO2の排出量の削減やリサイクルにつながると新田さんは言います。

「家庭だけではなく、職場や学校で出すごみも含めて、一度、自分の出しているごみを3日間だけ、プラスチックと紙に完全に分けてみてはいかがでしょうか。それだけで、いかに無意識にプラスチック製品を買っているかがわかります。また、自炊した日が多い週と、お弁当などを買った日が多い週とでは、プラスチックのごみの量が全然違うことに気づくでしょう。自炊を増やすこともプラスチックごみ削減には有効です。

©photoAC

 自炊を増やすことに関連して、ベランダや庭を利用する家庭菜園もSDGs達成に貢献できます。ハーブやミニトマトなどの初心者でも比較的育ちやすい野菜を選べば、買い物の量を減らすこともできるし、お財布にもやさしいかもしれません」

 また、ゴーヤなどツル性の植物を育てると、グリーンカーテンとなり、直射日光をさえぎることができるので、夏は部屋の冷房の温度を下げすぎずにすむかもしれません。さらに緑が身近にあることで心が安らいだり、育てる楽しみができるというメリットもあるかもしれませんね。

隣近所の人と挨拶する

 これまでご紹介してきた方法だけではなく、SDGsの目標達成のために貢献できる取り組みはまだまだあります。中には予想外の取り組みも。新田さんは隣近所や同僚に挨拶するだけでもSDGsにつながると言います。

「人と人が仲良くなるための第一歩は挨拶です。挨拶によって隣近所の人と仲良くなると困った時に助け合うことができます。これだけでSDGsなのですが、特に大災害発生時は、近くに知り合いがどれだけいるかが生き残るための重要なファクターなので、とても役立ちます。

 これはSDGsの11(住み続けられるまちづくりを)の中の『災害に強い強靭な街を作る』とか『被災者を減らす』というターゲットに深く関連します。だから大げさに聞こえるかもしれませんが、実はご近所さん同士でバーベキューをしたり遊びに行ったりすることもSDGsなんです」

 また、SDGsに関連する活動をすれば仮想コインを獲得でき、貯まったコインでエシカル商品等と交換できるアプリなども登場しています。こういうアプリを上手に使えば、楽しみながらSDGsの取り組みを継続できるのではないでしょうか。

 SDGs達成への取り組みは義務感だけでは続きません。楽しみながら取り組むことがポイントです。

「加えて、その行動がSDGsのどの目標につながっているのかを考えることも必要です。それが明確にわかればモチベーションもアップします。そして、今やってるちょっといいことや楽しいことがSDGsにつながっていると思えれば、それならもう1つやってみようと思えるのではないでしょうか。そうやって少しずつ広げてもらえればうれしいですね」

≪お話をうかがった方≫

新田英理子さん

SDGsジャパン理事・事務局長。2017年4月から19年3月まで、一般社団法人SDGs市民社会ネットワークと日本NPOセンターを兼任。パートナーシップが最大限発揮されSDGsが達成されることを目指し、活動中。他に、京都精華大学評議員、科学技術(JST)STI for SDGs審査員、足立区協働・協創パートナー基金審査会審査委員長、法政大学人間環境学部非常勤講師(NPO・ボランティア論)なども務める。

文◎山下久猛 撮影◎守谷美峰

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