医師が教える、“正しい”水の飲み方

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「喉が渇いてから飲む」でOK

 人間が生きていく上で必要不可欠、また健康のためにも大切な「水」。
 それでも、忙しい日々の中では、水分補給は忘れてしまいがち。特に、室内で仕事や家事をしていると、喉の渇きが分かりづらく、気付いたら数時間水を摂っていない……という方も多いかもしれません。

 人間の体は、体重の約60%を水分が占めており、脳や、腸、腎臓、筋肉、肝臓などの臓器・組織の水分は約80%にものぼります。(※全国健康保険協会HPより)
 体の半分以上を占める水分が不足してしまうと、体に様々な症状を引き起こし、場合によっては命に係わる影響を及ぼすことも。

 具体的には、体内の水分を5%失うと脱水症状や熱中症などの症状が現れ、10%失うと筋肉のけいれん、循環不全などが起こり、20%失うと命に危険が生じます。
 かつては、「運動中に水は飲まない」のような誤った考えも広がっていましたが、今では熱中症を防ぐため、また日々の健康維持のためにも、こまめな水分補給は必須と周知されています。

 それでは、具体的にいつ・どのくらい水分を摂ればいいのでしょうか? 生活習慣病を専門とし、『「空腹」こそ最強のクスリ』などの著書でも知られる青木厚医師に話をうかがいました。

 人間は、体の水分が失われると血液の浸透圧が高くなり(血液が濃くなってしまう状態)、浸透圧を薄めて下げようという口渇中枢の働きによって、いわゆる「喉が渇いた」状態になります。

 青木医師は、必要以上に神経質にならずに「喉が乾いた」と感じたタイミングで水分補給をすればいいと説きます。
「大前提として、人間の血液の浸透圧は一定に保たれています。頸動脈がモニターの役割をしているので、普通は喉が渇いたと感じたときに、水を飲めばいいのです」

65歳以上は「意識的な水分補給」を

 しかし、高齢の方には注意が必要だとも語ります。

「若い方は、血液中の浸透圧が上がってくれば自然と口渇中枢が働くので、そんなに意識をしなくても、喉の渇きに応じて水分を摂ればいい。しかし、高齢者の方はどうしても口渇中枢の働きが弱まってきます。
 血液中の浸透圧が上がっていると察知できても、それを意識として脳に登らせる経路が弱くなってくる。要は、喉が渇いたと感じる感覚が弱くなってくるので、ご自分の水分不足に気付きにくくなるのです。
 だいたいの目安として、65歳を超えたくらいの年齢の方は、意識的に水分を摂っていく必要があります」

 厚生労働省のHPでは、起床時と入浴後に水を飲むことが推奨されていますが、水を飲む適切なタイミングと量について、青木医師は次のように語ります。

「やはり寝ている間は、『不感蒸泄』(ふかんじょうせつ・発汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失)もあって体から水分が抜けていきますから、朝起きたら水を飲むというのは合理的だと思います。
 ただ個人差がありますし、嫌なことを無理やり習慣にしても長続きしないので、基本的には飲みたいタイミングを逃さずに飲むのがよいと私は思います。
『寝る前と朝起きたら必ず飲まなきゃいけない!』と思うと、負担になってしまう方は辛いですし、やはりお年寄りになってくると夜に何度もお手洗いに起きる方も増えますから、『寝る前には必ず水分を摂りましょう』と言いにくい場合もあります」

 では、どのくらいの水を、どのように飲むのが適正なのでしょうか。厚生労働省のHPでは、1日に必要な水は「2.5リットル」と記載されています。内訳は、食事から1.0リットル、体内で作られる水が0.3リットル、そして飲み水が1.2リットル。これは、1日の水分排出量(尿・便で1.6リットル、呼吸や汗で0.9リットル)と同等になります。

「通常、腎臓がきちんと機能していれば、飲み過ぎた水分は排出してくれます。逆に飲み過ぎには注意が必要です。一気に大量の水を飲んでしまうと腎臓の利尿速度が追いつかずに、『水中毒』(※)を引き起こしてしまうこともあります。やはりこまめに少しずつ摂ることを心がけたほうがいいですね」
(※)過剰な水分摂取により、血中のナトリウム濃度が急激に低下し、低ナトリウム血症の状態となり様々な症状が表れること。主な症状としては、頭痛やめまい、下痢や頻尿などがあり、重症化すると呼吸困難や意識障害を起こす場合もある。

 実は、自分で思っているよりも水分を摂っていない人が多いそうなので、食事のときにきちんと水分を摂るだけでなく、「あとコップ2杯」、およそ400cc弱を目安に摂るように心掛けるといいとのこと。

「繰り返しますが、高齢者はどうしても脱水になりがちです。なるべく意識して水分を摂るようにしてください。ただし、カフェインは寝る前には摂らないほうが無難ですね。
 カフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、逆に脱水を促してしまう場合があります。コーヒーや紅茶を水分補給の目的で飲むのは考えものだと思います。体に水分を蓄える“水分補給”と言う観点では、ノンカフェインのお茶でもいいですね。甘い飲み物は血糖値が上がってしまうので、糖尿病がある方はご注意ください」

どうせ摂るなら“良い水”を

 水道水、純水、ミネラルウォーター、炭酸水、硬水、軟水……と、水にもいろいろな種類がありますが、どうせなら“良い水”を摂りたいもの。青木医師自身も、水にはこだわりがあると語ります。

「私は、飲み水に関しては自分の好みに合っているものを飲んでいます。そのための最も手軽な方法が、浄水器です。一般的に、水道水は浄化カートリッジを通ると、カルキ等を含まない「浄水」となります。浄水は、雑味がなくクリアな味で飲みやすく、飲用だけでなく料理に使っても味をじゃましません。そして何よりも、安全で安心なのが大きなメリットです」

【浄水カートリッジのPFOSおよびPFOA(PFASの一種)除去試験結果】
https://newsroom.lixil.com/ja/20230901_02
【天然のおいしさのカギは「セラミックフィルター」と「活性炭」】
https://www.lixil.co.jp/lineup/faucet/water-purifier/

 また、ペットボトル飲料水を購入するよりもコストパフォーマンスが優れているのも魅力の一つといえるでしょう。

「飲む量が足りていないかも、と感じる方は、まずは“いつもよりコップ2杯多く”を目安に意識して飲むことを始めてみましょう。少しずつ無理なく、習慣にすることが大切です!」

《お話をうかがった方》

『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)

青木厚さん(あおき内科・さいたま糖尿病クリニック院長)

あおき内科さいたま糖尿病クリニック院長。自治医科大学附属さいたま医療センター内分泌代謝科などを経て、2015年、青木内科・リハビリテーション科(2019年に現名称に)を開設。糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病が専門。著書に『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)がある。

文◎藤本あき
画像提供◎shutterstock

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