住宅価格高騰の今、注目!二世帯住宅の「正解」

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親子の年齢、ライフプランに合わせた
ローンの考え方

「二世帯住宅というのは、時の経過とともに起こってくる問題を見据えての計画が重要になります」と語るのは、ライフプランから見た住宅ローンや相続・不動産に関する相談を多く受ける、ファイナンシャルプランナーの久谷真理子さん。

 二世帯住宅にすることで、親世帯が子世帯の子育てのサポートを、子世帯が高齢になった親世帯のサポートをと、協力し合える関係が作りやすいのは大きなメリットだといいます。

 そしてもちろん、資金面でのメリットも。新築にしろリフォームにしろ、二世帯住宅は通常の住宅よりも建築資金が割高になる傾向がありますが、生活スペースや設備を共有することで生活コストの軽減も見込め、資金を出し合ったり、お互いにローンを組んだりすることでより多くの資金調達が可能となり、ランクアップした住居を手に入れることが望めます。

 二世帯で組むローンは、主に「リレーローン」「ペアローン」の2つが挙げられます。

 久谷さんに寄せられる相談でも、「リレーローン」と「ペアローン」を比べて迷うケースが多いといいます。

「『リレーローン』では、最初は親が負担してそこから子に引き継ぐというかたちが一般的です。まだ収入が低い、子育てに費用がかかるといった時期は親に頼り、親の収入が減ってきたところで子にバトンタッチするといった形式になりますので、ライフプランに合わせた計画が立てやすいといったメリットがあります。
 また、住宅ローンには借入れ時や完済時の年齢制限などのルールがありますが、リレー形式にすることにより、子の年齢を“担保”にしたローンが組めるといった利点も親世帯にはあります。
 親世帯と子世帯がそれぞれの名義で契約して同時に返済する『ペアローン』は、互いの事情に応じて組めますし、まだあまり余裕のない若い世帯の場合も長期に渡ってローンを組むことで、無理のない返済計画を立てることができます。
 いずれのケースも、それぞれが債務者であるなどの条件をみたせば、住宅ローン控除を受けられるメリットもあります」

 どのローンを組むにせよ、親世帯と子世帯の資金力、長期にわたっての収入の見通し、そして考えたくないからこそ話し合っておかないとならない“不測の事態”が起こった際の返済シミュレーションを考えておくこと。先のことを考えて計画立てをすることが重要です。

目先に惑わされない!
自分に合った金利タイプを知る

 いざローンを組み、借入れをとなった場合、「金利」の種類も重要になります。

 借入れ全期間にわたり金利が一定の「固定金利型」、定期的に金利の見直しが行われて反映される「変動金利型」、金利が変わらない期間を選択でき、その後に変動金利型などに移行できる「固定金利期間選択型」があります。

「みなさん、どうしても“今”を起点に考えてしまうので、傾向としては『固定金利型』よりも、『変動金利型』がお得に見えてしまう方が多い印象です。
 変動金利は今のところは、固定金利よりも金利が低い状態が続いていますが、景気の動向などによって左右されるため、将来上昇する可能性もあります。なので、短期で返済できる資金力がある、頭金を多くして借入額を少なくできる、いざとなったら繰り上げ返済ができるといった人に向いています。
『固定金利期間選択型』は、例えば共働きのご夫婦で、お子さんがまだ小さい間は時短勤務で収入が減るとなった場合は、収入が少ないときは固定金利で金利を固定しておいて、その後、お子さんが大きくなって余裕が出てきそうなタイミングに合わせて変動金利となるように設計を選択する方も見られます。
 また、借入時から返済時まで金利が変わらない『固定金利型』を選び、計画的に返済していきたいといった場合もあります。金利タイプにもそれぞれのメリット・デメリットがありますので、収入やライフプランによってしっかりと選びましょう」

二世帯住宅を成功させるには?
トラブルを避けるためのポイント

 みんなが幸せになるために計画する二世帯住宅。実際に計画を進めていくにあたり、久谷さんが直面した事例をもとに“成功”に導くポイントを教えてもらいました。

「結局は最初の話し合いに尽きると思います。ご相談の中でも多いのが、同居する親世帯と子世帯の間では合意のうえで計画が進んでいても、親御さんからしたら他の子どもたち、子世帯からしたら他のきょうだいたちが、後から自分たちの相続分を主張するというトラブルです」

 よくあるケースとしては、土地は親世帯の持ち物で、その上に二世帯住宅を同居する子世帯と一緒に建てるというもの。

「本来は親も財産は均等に子どもたちに分けたい気持ちはあるものの、どうしても分割は後回しになりがちで、二世帯住宅に資金を出し過ぎたり、「小規模宅地等の特例」(※)による相続税の節税を優先したり。他のきょうだいから見たら不公平感が募って相続トラブルに発展してしまうことも」
(※被相続人が居住または事業をしていた土地、または貸与していた土地の固定資産税評価額に対して、相続人が一定の条件を満たすことで最大80%の減額措置を受けられる制度。2024年3月現在)

 そんな事態を避けるためにも、二世帯住宅を計画する際にはすべてをオープンにして、関わるすべての人たちに最初から話し合いに参加してもらうことが必須だと久谷さんは語り、「二世帯住宅には、スターティングメンバーがいつまでも住めるわけではない」ということを踏まえて、親世帯が亡くなってからのことも話し合っておく重要性を解きます。

「二世帯住宅は普通の住宅よりも大きく、維持費もメンテナンス費もかかってしまいます。皆さんよく『使用していない部分を賃貸に出したい』とおっしゃいますが、そうであればそこまで見越して建てる住宅のタイプを決めておく必要があります」

 大きく分けて「完全分離型」、「部分共有型」、「完全共有型」の3種類のパターンがある二世帯住宅。世帯ごとの生活スタイルをはじめ、親世帯がいなくなった後はどうするのか、子どもたちが大きくなったらどうするのか、といった先々のことまでイメージして決めると良いとのこと。

「二世帯住宅を考えるのなら、できるだけあらゆるパターンを想像して対策を講じておくこと。例えば、介護が始まったらどうするのかといったことから、公共料金の分担はどうするのか、水回りはどこまで共有するのか…といった細かいことまで。起こり得る不安要素を予めどれだけ潰せるかがキモになります。
 二世帯住宅の場合は関わる人が多い分、色々なことが起きがちです。話し合いのタイミングに“早い”ということはありません。みんながハッピーになるために計画する二世帯住宅なので、関わる人みんなで気持ちをオープンにして、ぜひ二世帯住宅を“成功”に導いてください」

≪お話をうかがった方≫

久谷真理子さん(ファイナンシャルプランナー)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP協会CFP®認定者、住宅ローンアドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、国土交通省「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」委員。ライフプランから見た住宅ローンや相続・不動産に関する相談業務および、実行支援業務を行っている。また、各種セミナー講師をつとめるほか、雑誌やWebサイト等で情報発信している。

文◎藤本あき
画像提供◎Shutterstock

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