今日からできる! 誰でもできる! SDGs入門[第4回]

買い物編[3] 覚えておきたい「認証」のこと

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持続可能な海産物の証「MSC認証」「ASC認証」

【具体的アクション】

  • 海産物はMSC認証、ASC認証の商品を
  • 紙製品はFSC認証の商品を
  • パーム油原料製品はRSPO認証の商品を
  • 自然由来の原料で作った製品を
  • 家電製品はなるべく最新の物に買い替えましょう

 魚などの食材を買うときは、環境に配慮したサステナブルな商品を選ぶとSDGsに貢献できます。

「みなさんは、“MSC認証”や“ASC認証”についてご存知でしょうか? どちらも地球に優しい方式で生産・管理され、持続可能だと認められた商品だけにつけられている認証です」

 世界人口の急拡大にともない、魚の需要も高まっています。しかし、世界の漁獲量は年々減少しており、このまま乱獲を続ければいずれ旬の魚が食べられなくなる可能性があります。そうならないように、乱獲を防ぎ、豊かな海の生態系を守るために定められたのが海のエコラベル「MSC認証」です。

 魚の供給不足問題を解決するもう1つの方法が養殖です。実際に養殖は世界で最も急速に伸びている食糧生産システムですが、それだけにずさんな現場運営、水質汚染、生態系のかく乱、劣悪な労働条件など、さまざまな問題が起きています。それらの問題をクリアし、適正に管理された、環境に悪影響を与えず、地域社会に配慮した養殖で育てられた水産物にのみ与えられるのが「ASC認証」です。

さまざまな目標に貢献できる

 これらの認証ラベルが付けられた水産物は「サステナブルシーフード」と呼ばれ、販売したり使用したりする小売店やレストランや社食で使用する企業も増え始めています。

「これらの認証ラベルのついた商品を選ぶことは、SDGsの目標14(海の豊かさを守ろう)を始め、2(飢餓をゼロに)、1(貧困をなくそう)、12(つくる責任、つかう責任)、13(気候変動に具体的な対策を)、16(平和と公正をすべての人に)、17(パートナーシップで目標を達成しよう)、5(ジェンダー平等を実現しよう)など、たくさんの目標に貢献できます。

 中でも重要なのは、2の『飢餓をゼロに』。近年、世界で食料問題が叫ばれていますが、実は食料の総量としては、世界人口をまかなえる量はあるんです。毎日先進国で大量のフードロスが発生しているにも関わらず、飢餓に苦しんでいる人がたくさんいるのは、食料の需要と供給の調整(管理)の問題だといわれているのです。

 サステナブルフードは食糧生産の管理・流通も公正にされているので、認証ラベル付きの海産物を食べることが巡り巡って世界の誰かの飢餓を救っていることになります。少なくとも、乱獲された海産物を食べるよりはSDGsに貢献できます。それが1の『貧困をなくそう』にもつながる可能性があるのです」

 これらの認証ラベルつきの商品の売り上げが増えると、認証を取得しようという生産者や、認証ラベルつきの商品をたくさん仕入れて販売しようという小売店も増えます。それが乱獲・密猟の減少や、生態系・環境の保全をもたらし、最終的には人の生命に直結する飢餓や貧困を減らすことになるかもしれません。

「FSC認証」の紙製品

 持続可能な認証は森林由来の製品にもあります。適正に管理された森林から伐採された木材を原料として作られた製品につけられるのが「FSC認証」です。ティッシュペーパーや印刷用紙など、日常生活でよく利用する紙の商品に付けられています。

「FSC認証マーク付きの商品を購入することは、まずSDGs目標の15(森の豊かさを守る)に貢献できます。ほかにも森林の適正な管理は気候変動や自然災害を防ぐことから13(気候変動に具体的な対策を)や11(住み続けられるまちづくりを)にも貢献できるし、自然エネルギーや産業の話にも関連するので、7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)、8(働きがいも経済成長も)、9(産業と技術革新の基盤をつくろう)にもつながります」

「RSPO認証」のパーム油

 また、これらの認証ラベル付きの商品は食材だけではありません。サステナブルなパーム油だけに与えられる「RSPO認証」という制度もあります。

 パーム油とは、パームの木から採れる油で精製される油で、ポテトチップスやパンなどの加工食品、食器・洗濯・掃除用の洗剤やシャンプー、せっけん、化粧品など多種多様な日用品の原料として使われています。このように、パーム油は私たちの日常生活とは切っても切り離せない身近な植物油です。

 それだけにパーム油の需要は世界中で増え続けているので、大企業がパームのプランテーションを作るためにインドネシアなどの熱帯雨林の広大なジャングルを伐採するなど、自然破壊が問題となっています(※1)
(※1 WWFによると、パーム農園の拡大により、インドネシアのスマトラ島の森林は30年前よりも半分以下に減少し、低地の森はほぼなくなっている。ボルネオ島も面積の約1/3にあたる森がすでに失われている)

©photoAC

 この大規模な森林伐採により、オランウータンなどの野生動物が減少し、生物多様性が失われました。さらに元々森林に住んでいた先住民族が住む場所を追われ、劣悪な労働環境と不法に安い賃金で長時間労働させられているケースも増えています。

 それらを防ぐために、自然環境に悪影響を与えずきちんと管理され、適正な賃金と労働環境で人々が働いていることを確認したパーム農園から採れたパーム油で作られた製品であることを証明しているのが「RSPO認証」パーム油なのです。

「同じ洗剤を買うのでも、RSPO認証の商品を買うことで、FSC認証マーク付きの商品と同じSDGsの目標に対して貢献ができます。そして、これらの認証ラベルのついた商品を買う人が増えることが、認証を取ろうとか認証付きの商品を売ろうという企業を増やし、結果としてSDGsのさまざまな目標に貢献することにつながるのです」

 日本はパーム油の国内使用量の100%を輸入に頼っています。だからこそRSPO認証の商品を積極的に購入したいですね。

「ただし、『“認証付き”の商品を買いさえすればよい』ということではなく、『なぜ、“認証付き”商品が必要になってしまったのか』という根本原因にも思いを巡らせることを忘れないことも大切だと思います」

SDGsウエディングケーキ

 これまでご紹介してきたように、1つの製品を買うだけでもたくさんのSDGsの目標に貢献できます。

「SDGsの17の目標はそれぞれが独立している平面的なものではなく、お互いに関連し合う立体的なものだからです。それを端的に表しているのが、“SDGsウエディングケーキモデル”です」

 SDGsウエディングケーキモデルとは、SDGsランキング1位のスウェーデンにあるレジリエンス研究所の所長が考案した“SDGsの概念”を表す構造モデルです。
 SDGsの17の目標は「環境(15、14、6、13)」「社会(1、2、3、4、5、7、11、16)」「経済(8、9、10、12)」と、大きく3つの階層から構成されています。これをウエディングケーキの形になぞらえたものです。

「この概念図によって、SDGsはこの3つの階層の目標が密接に関わっていることがわかります。気候変動が抑えられ、安全な飲み水やトイレが提供され、生物多様性が保たれていなければ、社会や経済を発展させることは困難です。だからそれぞれ独立した問題として考えるのではなく、この3つのバランスをもう一度取り戻すことが何よりも重要で、それがSDGsの本質なのです」

いきなり変えなくても大丈夫

 もちろん、現在世界が抱える問題をこのままにしておいていいと考えている人はほとんどいないでしょう。とはいえ、すべての買い物をこれまで紹介してきた方法に変えるのは難しいという人が多いのではないでしょうか。

「いきなり全部変える必要はありません。取りあえずは現在の過剰な部分と、SDGsの課題や目標、目的をよりよく知っていただくことが一番。そうすれば週に1、2回は地産地消にしようとか、サステナブルな認証付きの商品を買おうなど、無理のない範囲で少しずつ変えていけると思います。今はできるところから始めるので良いと思います」

≪お話をうかがった方≫

新田英理子さん

SDGsジャパン理事・事務局長。2017年4月から19年3月まで、一般社団法人SDGs市民社会ネットワークと日本NPOセンターを兼任。パートナーシップが最大限発揮されSDGsが達成されることを目指し、活動中。他に、京都精華大学評議員、科学技術(JST)STI for SDGs審査員、足立区協働・協創パートナー基金審査会審査委員長、法政大学人間環境学部非常勤講師(NPO・ボランティア論)なども務める。

文◎山下久猛 撮影◎守谷美峰

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