この夏、電気や水の使用量の大幅減をめざす![第6回]

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照明の電力消費を抑える方法

 季節を問わずに長時間使う家電が照明器具です。だからこそ、照明器具を見直すことが節電につながります。

 光源には一般電球や蛍光灯などいくつか種類がありますが、消費電力が少ないのがLED電球です。一般社団法人日本照明工業会によると、白熱電球60形は54W。これに対してLED電球はわずか約8Wで、白熱電球の約1/7です。消費電力が少ないとされる蛍光灯(電球型蛍光ランプ)でも約11Wですから、LED電球にはおよびません。

 しかもLED電球は、他の電球と違って頻繁にスイッチをオン・オフしても、寿命にほとんど影響がありません。また、スイッチONですぐに明るくなります。

 さらに寿命も、白熱電球は約1,000時間、蛍光灯は約6000~13,000時間に対し、LED電球は約40,000時間と、非常に長寿命。

 54Wの白熱電球から9WのLED電球に交換すると、年間で90kWhの節電、43.9kgのCO2削減、約2,430円の節約になります。

「LED電球は電力消費量を大幅に削減でき、毎月支払う電気代も安くなります。ひと昔前はお値段も高かったのですが、最近は一般的な照明と同じくらいにまで安くなっているので、LED電球に替えない手はないですよね」

【省エネ性にすぐれるLED電球】

寿命省電力
白熱電球約1,000時間1とする
蛍光灯(電球型蛍光ランプ)約6,000~13,000時間白熱電球の約1/4
LED電球(電球型LEDランプ)約40,000時間蛍光灯の約3/4

人感センサー付きLED電球に替える

 SDGsという言葉がなかった時代から、省エネ運動の代表格としてよく言われてきたのが「照明はこまめに消そう」ということでしょう。国連広報センターが「持続可能な社会のためにナマケモノにもできるアクション・ガイド」として紹介している取り組みの中の一つとしても「照明はこまめに消すこと」と提言されています。些細なことですが、現在でも重要な取り組みであることに変わりはありません。

 54Wの白熱電球1灯の点灯時間を1日1時間短縮すると、年間で19.71kWhの節電、9.6kgのCO2削減、約530円の節約になります。
 また、12Wの蛍光ランプ1灯の点灯時間を1日1時間短縮すると、年間で4.38kWhの節電、2.1kgのCO2削減、約120円の節約になります。

 ただ、ついつい消し忘れてしまうことも少なくないでしょう。

「それを防いでくれるのが人感センサー付き照明です。人が近くにいなくなって一定の時間がすぎると自動で照明が消え、人が来るとまた自動で点灯するというものです。これなら消し忘れの心配も、こまめなオン・オフをと気にする必要もありません。ですので、我が家もリビングの照明を人感センサー付き照明に変えました」

 また、キッチンの照明は手が濡れてたり汚れたりしている時、オン・オフをするのが面倒で、つい放置することも多いのではないでしょうか。

「キッチンの照明も人感センサー型だと、手をかざすだけで照明をオン・オフできるので便利です。簡単に切り替えられるので家族もつけっ放しが減りました」

窓からの光をたくさん取り込む

 そもそも照明をなるべくつけないという方法もあります。例えば朝から夕方までは、窓から入ってくる太陽の光を部屋に取り込めれば、照明をつけなくてもすみます。そのために、光の取り入れ口である窓付近に家具が置いてあれば別の場所に移動するのが効果的。模様替えは気分転換にもなって一石二鳥でしょう。

時にはキャンドルの灯りで過ごしてみる

 夜に照明をつけない方法として、キャンドルはいかがでしょうか。キャンドルだけでは暗いかもしれませんが、間接照明と併用すれば素敵な部屋を演出できます。
「私はお風呂にゆっくり入ってリラックスしたい時はキャンドルを使っています。やさしく柔らかい明りはとっても癒やし効果がありますのでぜひ試してみてください」

テレビも見ない時は主電源を消す

 テレビもつけっ放しにせず、見ない時は消すように心がけましょう。リモコン待ち状態でも電力を消費するので、本体の主電源をオフにしましょう。
 液晶テレビの場合、1日1時間テレビ(32V型)を見る時間を減らすと、年間で16.79kWhの節電、8.2kgのCO2削減、約450円の節約になります。

簡単に節電できる節電タップ

写真◎PIXTA

 電源コードがコンセントに刺さっている場合は待機電力を使うので、コードを抜くとさらに節電量を増やせます。
 とはいえ、日常生活の中でいちいちコードを抜くのは面倒ですし、現実的ではありません。

「そんな時に便利なのが、コンセントごとに電源のオン・オフスイッチがついている節電タップ。これならいちいち電源コードを抜かなくてもスイッチでオン・オフができます。私は、テレビ以外の家電の電源コードもこれにつないで、こまめに電源を切るようにしています」

 また、映像モードが選択できるテレビは、標準モードや、リビングモードなどに設定しましょう。画面を明るくくっきりと見せる「ダイナミックモード」などは、消費電力が大きくなります。テレビ(32V型)の輝度を最適(最大→中間)にした場合、年間で27.10kWhの節電、13.2kgのCO2削減、約730円の節約になります。

パソコンの節電方法

 テレワーク、リモートワークの普及により、自宅でパソコンを使う時間が増えた人も多いのではないでしょうか。そうなるとパソコンの節電も重要です。

 パソコンを新たに購入、または買い換える際は、「国際エネルギースターロゴ」がついたものがお勧めです。待機している状態が一定の時間を経過すると、省エネモードに自動的に切り替わる機能を持っているので効果的に節電ができます。

 テレビと同じく、使わない時は電源を切りましょう。
 利用時間を1日1時間短縮すると、デスクトップ型で年間で31.57kWhの節電、15.4kgのCO2削減、約850円の節約に、ノート型で5.48kWhの節電、2.7kgのCO2削減、約150円の節約になります。

 また、電源オプションを「モニタの電源をOFF」から「システムスタンバイ」にした場合、デスクトップ型で年間で12.57kWhの節電、6.1kgのCO2削減、約340円の節約に、ノート型で1.50kWhの節電、0.7kgのCO2削減、約40円の節約になります。

冷蔵庫の節電方法

 冷蔵庫も消費電力の多い筆頭家電の一つ。まず冷蔵庫の中の温度が上がると冷やそうとして多くの電力を使います。それを防ぐためには、扉を開けてる時間を極力短くすることが基本。「開けたらすぐ閉める」を習慣にしましょう。
 便利グッズとしては、冷蔵庫用カーテンをつけると冷気を逃さないので節電になります。

 冷蔵庫を開けている時間を20秒間から10秒間にすると、年間で6.10kWhの節電、3.0kgのCO2削減、約160円の節約になります。

 また、温かいものをそのまま冷蔵庫に入れると庫内の温度が上がり、冷やすのに余分な電力が消費されます。温かいものは冷ましてから庫内に入れるようにしましょう。

 多くの冷蔵庫は庫内を冷やす強度が設定できるようになっています。「強」よりも「中」や「弱」にした方が、消費電力を減らすことができます。食品の傷みに注意しつつ調整しましょう。設定温度を「強」から「中」にした場合、年間で61.72kWhの節電、30.1kgのCO2削減、約1,670円の節約になります。

「食材を詰め込みすぎると冷却効果が落ち、消費電力も多く使うので、私は普段から買い物の量を少なくして、冷蔵庫の中にあまり食材を入れないようにしています。節電にもなるし、中に何が入っているかがわかると、食べきりやすくなります。逆に詰め込み過ぎてどんな食材が入っているのか見えないと、奥の方にずっと隠れたまま賞味期限を大幅に過ぎて無駄になりがちです。フードロスの削減という意味でもお勧めです」

 冷蔵庫に入れる食材を最大容量の半分にすると、年間で43.84kWhの節電、21.4kgのCO2削減、約1,180円の節約になります。

 冷蔵庫の設置場所にも要注意。
「冷蔵庫は上面や側面から放熱しているので、上に物を置かず、大きな紙なども貼らず、壁との隙間を開けて、熱を逃がすようにします」

 冷蔵庫の片側が壁に接している場合は、上と両側が壁に接している場合に比べて、年間で45.08kWhの節電、22.0kgのCO2削減、約1,220円の節約になります。

まとめ洗いで節電

 洗濯も、少量の洗濯物を毎日洗うより、洗濯機の最大容量に合わせて洗濯物をまとめて洗う回数を少なくした方が節電になります。例えば、洗濯・脱水容量6kgの洗濯槽で、毎回4割(約2.4kg)の洗濯物を洗うよりも、毎回8割(約4.8kg)を洗うようにして回数を半分にしたほうが、年間で電気5.88kWhの節電、CO2量2.9kgの削減、約160円の節約になります。

洗濯乾燥機も消費電力が多い

 洗濯乾燥機やドライヤーを使わずに、衣服や髪の毛を自然乾燥させることも節約になります。国連広報センターが紹介している「持続可能な社会のためにナマケモノにもできるアクション・ガイド」の中でも紹介されています。

 洗濯乾燥機を使用する場合は、まとめて乾燥させれば節電になります。例えば、定格容量5kgの乾燥機に8割の洗濯物を入れて2日に1回使用した場合は、4割ずつに分けて毎日使用した場合よりも、年間で電気41.98kWhの節電、CO2に換算すると20.5kgもの削減になり、約1,130円の節約になります。

 さらに自然乾燥を併用するのもお勧めです。自然乾燥8時間後、未乾燥のものを補助乾燥する場合は、乾燥機のみで乾燥させる場合と比べ、年間で394.57kWhの節電、CO2は192.6kgの削減、約10,650円の節約になります。

「温風はすごく電力を消費するので、私は洗濯物は自然乾燥しています。軽い運動にもなるし、陽の光を浴びるとビタミンDが生成されて健康にもいいですしね。乾燥という意味では、お風呂上がりに髪を乾かす時、ドライヤーは使わず、夏は扇風機の前で涼むついでに乾かしています。またドライヤーを使う場合も冷風モードにしています。その方が電気の使用量も少なくてすみます」

掃除はほうきで省エネ

 掃除も頻繁に行うので、少しの工夫で高い節電効果が見込める家事の一つ。毎日のごみやほこりなら掃除機をかけるまでもなく、昔ながらのほうきとちりとりを使えば、使う電力はゼロになります。

「私はフローリングの掃除は掃除機を使わずにモップにクリーニングシートを付けて拭いています。電気を使う掃除は週に1回程度ですね」

 また、掃除機をかける際も部屋を片付けてからやると省エネ効果は増します。例えば1日1分短縮した場合、年間で5.45kWhの節電、2.7kgのCO2削減、約150円の節約になります。

エコクッキングで節電

 近年急速に普及してきたオール電化。調理用加熱器がガステーブルコンロではなく、IHクッキングヒーターという方も多いのではないでしょうか。料理も毎日のことなので、IHを使っているご家庭は料理の際にひと工夫することでSDGsに貢献できます。

「“エコクッキング”という言葉を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。環境負荷の少ない調理方法のことで、電気の使用量を下げることもその一つです。例えば煮込み料理を作る時、保温鍋を使えば、最初の5分、沸騰する短い間加熱するだけで、あとは30分ほど放置すれば料理が完成します。この方法なら料理が完成するまでずっと加熱し続ける通常の調理方法よりも節電になるので、私もよく保温鍋を使っています。

 また、調理方法では、たっぷりのお湯で茹でたり煮込んだりするよりも、蒸した方が使用する水や電力が少なくてすみます。さらに、食材は煮込みすぎない方がビタミンが壊れず健康にいいので、蒸し料理をお勧めします」

 一つひとつは小さなことですが、積もり積もれば多くの消費電力の削減につながります。SDGsの目標達成に貢献できるのはもちろん、節電は電気代を安くすることにもなるので家計も助かります。この夏、改めて簡単にできることから節電に取り組んでみませんか?

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※本記事で掲載した節約額は、資源エネルギー庁『家庭の省エネ徹底ガイド』の掲載内容に基づきます。

≪お話をうかがった方≫

星野智子さん

一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク理事、一般社団法人環境パートナーシップ会議副代表理事。1998年から地球環境に関する国内外の国際会議の運営に従事。2002年のヨハネスブルグ・サミット、「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」推進運動、2010年の生物多様性COP10の市民ネットワーク、リオ+20地球サミットNGO連絡会の立ち上げ・運営にも従事。2003年より地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)の運営に参画、多岐の市民活動に関わる。2012年SDGs策定プロセスが始まって以降、SDGsをテーマとした講演や普及活動を行っている。

文◎山下久猛 撮影◎大平晋也

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