では具体的に、国から支給される「公的年金」はどれぐらい支給されるのでしょうか。
厚生労働省が発表している2023年度の年金額改定によれば、モデル夫婦2人分の年金額は月額22万4482円となっています。この金額が生涯、つまり死ぬまで支給されます。65歳から90歳までで計算すると、支給累計額は約6734万円となり、定年まで勤め人として働いた場合、何もしなくてもこのくらいの金額は受け取ることができます。先ほどの「1億円」のうち、6~7割はカバーされる計算です。
生活の基礎となる部分については公的年金、場合によっては企業年金で大部分をまかなえると考えてもいいでしょう。これに加えて、預金や運用資産、投資信託といったものがプラスされます。
しかし、ここまでお話してきたのは、あくまで平均的な数値です。実際に自分の場合はどうなのかということを明確にしなければなりません。つまり“自分のお金の見える化”が大事だということです。
公的年金の支給額を確認するためには、50歳以上であれば毎年送られてくる「ねんきん定期便」、年齢を問わず将来の受け取り見込みが手軽にシミュレーションできる「公的年金シミュレーター」が便利です。
“見える化”の最大の効用は不安がやわらぐことです。世間には、老後不安を商材にして、質の悪い金融商品を売りつけようとする金融機関もあります。不安のために焦って判断をしないためにも、将来にわたる自分と家族の生活に関する収支を把握することが大切なのです。
また、公的年金については、「年金なんて将来あてになりませんよ」と、多くの人がネガティブなイメージを持っているようです。
しかし、「終身で支給」「物価連動で支給額が決まる」「国の年金積立金は十分ある」など、実は日本の年金システムは世界的にも優れています。厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2019年版)によれば、年金だけで生活している世帯は48.4%にのぼります。約半分の世帯が、公的年金だけで暮らせているということで、安心できる制度だということがよくわかります。