この夏、電気や水の使用量の大幅減をめざす![第3回]

夏の節電大作戦【1】 エアコン編[1]

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SDGsに貢献できるエアコンの使い方

 電力消費量は夏に日本全国で増大します。特にピークを迎えるのが、13時から16時。この時間帯の電力消費量を抑えると、CO2削減にも大きな効果があります。ですので、まずは13時から16時の時間帯にいかに節電できるかを考えることから始めたほうがよさそうです。

 この時間帯に電力消費量が急激に上がる理由は、エアコンなど冷房機器の使用でしょう。最近は省エネのエアコンが増えたとはいえ、多くの国民が一斉に風量を「強」にしたり、設定温度を下げたりすると電力消費量は急増します。

 しかし、冷房をかけなければ、熱中症などに罹患するリスクが高くなります。節電に努めるあまり体調を崩しては元も子もありません。健康はしっかり維持しつつ、消費電力を抑えることが肝要です。

「そのためにはまず設定温度を下げすぎたり、風量を強くしすぎたりしないこと。暑いと感じなければいいわけなので、キンキンに冷やさなくてもいいはずです。1億人が設定温度を1度上げたらものすごい消費量削減になります」

 エアコンの標準的な設定温度は、25~28℃が適正とされています。ただ体感温度は人によって違うので、極端に暑い、寒いと感じない室内温度にすることが重要です。

 外気温度31℃の時、使用時間9時間として、エアコンの設定温度を27℃から28℃にすると、年間で30.24kWhの節電、14.8kgのCO2削減、約820円の節約になります。

24時間つけっぱなしのほうが省エネってほんと?

 エアコンの使い方としては、24時間つけっ放しにするほうが省エネになるという言説が、一時期インターネットで話題になりました。本当なのでしょうか。

「確かにエアコンは電源を入れ、室温が設定温度になるまでに最も電力を消費し、それ以降はそれほど消費しないようです。とはいえエアコンの機種や機能、製造年によっても違うので、つけっ放しにするのが必ずしも節電になるとは言えないと思います」

 稼働させている間は電力を消費します。あるエアコンメーカーは、「エアコンの機種によっては、短時間ならつけっ放しのほうがいいこともあるが、長時間部屋にいない時は止めたほうがよい」と表明しています。

 つまり、冷房はつけっぱなしにせず、必要なときだけつけるように心がけることが重要です。例えば、設定温度28℃で冷房を1日1時間短縮した場合、年間で18.78kWhの節電、9.2kgのCO2削減、約510円の節約になります。

「これは個人的な話なのですが、そもそも私は冷房が好きではないので、エアコン自体をあまりつけません。寝る時は扇風機を3時間ほどタイマーでつけているくらい。その理由は、常に冷えた状態にいるといわゆる冷房病(注)になるリスクもあるし、24時間365日、暑くもなく寒くもない状態に体が慣れると、本来生物に備わっている暑さ・寒さを感じる感覚や体温調節機能が衰える危険があると思っているからです。

 記録的な暑さではないにもかかわらず、外に出てすぐに倒れてしまうのは、これに慣れきってしまっているからではないでしょうか。もちろん、熱中症にならないよう、冷房をきちんとつけるのは非常に重要なのですが、つけっ放しは体にもよくないと思います」

(注)一般社団法人 安全衛生マネジメント協会によると、冷房病とは「冷房の効いた室内に長時間いたり、室内と戸外を往復することで起こるもので、自律神経失調症の一種といわれている(正式な疾患の名称ではない)。エアコンによって体が冷えすぎたり、温度差のある室内と戸外を出入りすることによって、自律神経の働きが悪くなり、足腰の冷え、疲労感、頭痛、腹痛、神経痛などの症状がでる。対策としては、自律神経の働きをよくするために、規則正しい生活をしたり、体温調節を刺激するために血行をよくするのがよいが、冷房温度を上げたり、風が直接当たらないようにすることが大切である」

扇風機と併用する

イラスト◎photoAC

「お勧めの方法は、エアコンと扇風機を併用することです。と言っても、エアコンから出る冷気を、扇風機で人の体に当てるためではありません。エアコンの風に直接当たると、体温が急速に奪われるので逆に健康によくないのです。

 エアコンから出る冷たい空気は下の方に落ちるので、それを扇風機でかき混ぜ、部屋全体の空気を冷やすようにします。そのために、エアコンの対角線上に扇風機を置くとよいでしょう。

 こうすることでエアコンの設定温度をそれほど下げることなく、風量も自動運転のままで体感温度を下げることができます。扇風機は省エネ機器なので、エアコン単体よりも少ない電力でこれができるのです。消費電力が抑えられ、電気料金も節約でき、さらに健康にもいいので、一石三鳥なのです」

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※本記事で掲載した節約額は、資源エネルギー庁『家庭の省エネ徹底ガイド』の掲載内容に基づきます。

≪お話をうかがった方≫

星野智子さん

一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク理事、一般社団法人環境パートナーシップ会議副代表理事。1998年から地球環境に関する国内外の国際会議の運営に従事。2002年のヨハネスブルグ・サミット、「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」推進運動、2010年の生物多様性COP10の市民ネットワーク、リオ+20地球サミットNGO連絡会の立ち上げ・運営にも従事。2003年より地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)の運営に参画、多岐の市民活動に関わる。2012年SDGs策定プロセスが始まって以降、SDGsをテーマとした講演や普及活動を行っている。

文◎山下久猛 撮影◎大平晋也

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