SDGsで自由研究![第3回]

環境保全編……わが家の「フードロス」問題

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電気を使わずにできることを考えてみる

「生活の中で、どうしても電気を使わなくてはできないことと、そうではないことがあります。例えば掃除は、機械を使わなくても、ほうきとちりとり、はたきと雑巾、モップなどでできます。洗濯も靴下やタオルなどちょっとした物を洗う程度なら大量の水と電力を使用する洗濯機を使わなくても、洗濯板を使えば少量の水で洗えます。

 このように、エネルギーを使わなくてもできることを探して実践してみるという研究もおすすめです。さらに、身の回りで電気を使って動いているものを調べて、もし電気がなかったらどうなるだろうとか、電力がなくても動かしたり、使える方法をみんなで考えるのもいいでしょう。停電の時などに役に立つかもしれません」

 当サイトでも「この夏、電気や水の使用量の大幅減をめざす!」 で、さまざまな節電・節水の方法を紹介しています。参考にしてみてください。

一般家庭の「食品ロス」はどのくらい?

 一度は食材を購入して冷蔵庫の中に入れはしたけれど、使うタイミングを逸して、結局捨ててしまった経験は、だれしもあるのではないでしょうか。
 このような「家庭内フードロス」も自由研究のいいテーマになると、下村さんは言います。

「『家庭内フードロスをなくす研究』です。まず冷蔵庫の中身を全部出して、写真を撮影するとともに、リストを作ります。そのうち、消費期限切れの物をピックアップし、放っておけば、どれだけ自宅でフードロスが生じる可能性があるかを調べるのです。そして、この無駄をなくすための対策を考えます。買い物の仕方、調理の仕方、食べ方などを親子で話し合ってまとめるのもいいでしょう。ただし、消費期限はあくまでも目安です。直ちに食べられないという意味ではないことも一緒に学びましょう」

 当然、家庭外のフードロスも良い題材になりえます。

「飲食店や宿泊施設、スーパーから出る大量の残飯や余った食材、売れ残った商品は社会的なフードロスとして問題になっています。高校生であれば、飲食店でのアルバイトの機会があるかもしれません。そこで日々どれだけの廃棄が発生しているかを、現場で働く社員に聞き込み、対策を考えます。解決法を考えるため、フードロス対策に積極的に取り組んでいる飲食店やホテルを取材し、実践内容や成功例をレポートにするのもいいでしょう」

代替できるものを探す

 世界的な問題になっている海洋汚染。その原因の一つとされるプラスチック製品も身近なものなので、自由研究にはうってつけでしょう。

「毎日の生活で出るごみの量を測定してみるんです。例えば10リットルのごみ袋にプラスチックごみだけを入れて、10日間で何袋出るかを記録します。その上で、無駄なプラスチック製品を買わない方法を考え、次の10日間で実践します。その結果、どれくらいごみを削減できたかを記録するんです。

 こうすることで、意識していなかった時と意識した時とで、どのくらいプラスチックごみを減らせたのかがひと目でわかります。取り組みやすく見た目でわかりやすいので自由研究にはぴったりでしょう」

 今持っている物で調べる方法もあります。

「ランドセルや通学かばんの中に入っている物を全部出して、プラスチック製の物とそうではない物とを分別します。そうすると、ほとんどの物に合成樹脂が使われていることに気づくでしょう。

 そして、この中で『別の材質でもいい物は何だろう』『ほかの素材に置き換えるとしたら何にするべきか』『それによって環境に対してどんな利点が生まれるか』と考えます。そうすると例えば『ペットボトルじゃなくて金属製の水筒でもいい』『そうするとごみを減らせて、SDGs目標の14(海の豊かさを守ろう)や15(陸の豊かさも守ろう)、13(気候変動に具体的な対策を)、12(つくる責任つかう責任)に貢献できる』ということに思い至ります。

 でも水筒にすると、外出中に中身がなくなった時困ると思うでしょう。でも最近は、町なかで水を入れてくれるところが増えています。そういう場所を利用すれば水筒で問題ないことがわかります。このような新しい気づきや提案を研究のまとめに入れると、ぐっと良くなるでしょう」

実感があるから行動を変えられる

「ごみ問題をテーマにしたいなら、実際にやってみるのもお勧めです。町や川原、海岸などで清掃を行い、その中でどんなプラスチック製品が多いのかを考えるんです。お菓子の袋なのか、洗剤の容器なのか。なぜこんなところにあるのか。そして、どこかで止めるにはどうすればいいかまで考えてまとめると立派な自由研究として成立します。

 このように、まず身近なものから考えて、普段の消費行動を変えた場合、どんな問題に対して良い影響を与えるのかという視点で周りを見渡すと、解決法がわかって、結果的に自分の普段の消費行動が変わるきっかけになります。自由研究にはそんな効果もあるんです」

SDGsを動画で学ぶ :「内田篤人のSDGsスクール!」

www.youtube.com/channel/UCyLpj6fbC4Q8sXYu8o_2x3Q/featured

LIXIL SDGsアンバサダーの内田篤人さんと一緒に、SDGsというテーマを分かりやすく学び、 楽しい実験や体験を通じて、皆さんと一緒に知識を身につけていただくYouTube番組です。

≪お話をうかがった方≫

下村委津子(しもむら しづこ)さん

NPO法人環境市民副代表理事。1997年、フリーランスアナウンサーとして担当していたラジオ番組で、COP3(地球温暖化防止京都会議)について毎日報道していたのをきっかけに環境活動に目覚め、NPO法人環境市民に加入。以後「日本の環境首都コンテスト」を10年間実施、環境教育やグリーンコンシューマー活動などを展開。2017年、副代表理事に就任。現在はメディアと環境NGOの双方を知る者として、より正確な情報と真意をわかりやすく多くの人に伝えられる役割を担いたいとの思いで、持続可能な生産と消費の実現を目指して活動中。そのほかNPO法人持続可能な開発のための教育推進会議 (ESD-J)、一般社団法人市民エネルギー京都理事、NPO法人FEE Japan(国際環境教育基金)理事、NPO法人アントレプレナーシップ開発センター理事、京都市廃棄物減量等推進審議会審議員、龍谷大学政策学部非常勤講師なども務めている。

文◎山下久猛
撮影◎山田紗基子
撮影協力◎京都ペレット町家ヒノコ
写真提供◎photoAC/Shutterstock/PIXTA

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