節電・節水はSDGsと深い関係
「節電、節水しましょう」「電気や水の無駄使いはやめましょう」という呼びかけは、2015年に国連でSDGsが採択されるはるか前からあります。環境問題への対応として認識されてきたこの取組みは、今ではSDGs達成のためにできることとしても広まっており、そういう意味では、私たちはSDGsの一部にすでに取り組んできたと言えます。
では改めて、電気や水の消費量を抑えることはSDGsのどの目標達成に貢献するのでしょうか。まず電力に関して、一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク理事、一般社団法人環境パートナーシップ会議の副代表理事である星野智子さんは以下のように解説してくれました。
「直接的に主に関連するのは、電力はエネルギーなので、目標7の“エネルギーをみんなにそしてクリーンに”、それと電力は気候変動と密接に繋がっているので13の“気候変動に具体的な対策を”、また、消費生活全般にも関わるので、12の“つくる責任 つかう責任”です。
さらに、持続可能な街を作るためには街全体で送電線や住宅のあり方を考えなければならないので、11の“住み続けられるまちづくりを”も関連します。このように、節電はSDGsの様々な目標達成に貢献できるのです」
節電の第一歩は電気料金の明細の正しい読み方
自宅でできる節電にはさまざまなものがありますが、その前に、皆さんに取り組んでいただきたいことがあります。それは、毎月の電力消費量と料金が記載された検針票(電気使用量の明細書)の正しい読み方を知ることです。それができれば、「いつ、どのような行動をすれば節電につながるか」が、おぼろげながら見てくるからです。
何ごとも「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」。
節電の具体的ノウハウを学ぶ前に、まずは普段ご自宅で使っている電力消費量を正しく把握することから始めましょう。
具体的には、検針票のどこをチェックすればいいのでしょうか。東京電力の検針票を元に、星野さんに解説していただきましょう。
まずは基本料金プランを見るべし
「まずは“契約種別”と“契約アンペア数”を見てみましょう。ここは契約中の基本料金プランで、ほとんどのご家庭が“従量電灯B”、“従量電灯C”と記載されているでしょう。これと契約アンペア数で、基本料金が決まります」
例えば、東京電力で従量電灯Bプラン、50アンペアの場合、基本料金は1,430円となっています。従量電灯とは、24時間いつでも同じ電気料金のプラン。契約アンペアの大きさは、同時に使用できる電気の量を表しています。契約アンペア数が多くなればなるほど、電気料金は高くなります。
「同時に使用する電気機器の数が、契約アンペアを選ぶ際のポイントです。同時に多くの電気機器を使う夕食時、冷房機器を使う夏、複数の暖房機器を使う冬など、1年を通じてもっとも電気を使用になる時を想定して決めましょう」
皆さんも照明とエアコンをつけて、テレビを見ながら電子レンジでお弁当を温めている時ブレーカーが落ちて部屋が真っ暗になったというような経験はないでしょうか。このように同時に稼働させたたくさんの家電の総アンペア数が契約アンペア数を超えるとブレーカーが落ちます。
ゆえに、たくさんの家電を同時に使用する機会の多い家庭は高いアンペア数か、従量電灯Cプランを契約した方がいいのですが、逆に考えれば、なるべくたくさんの家電を同時に使用しないように心がけると、電力消費量を削減することができます。
また、東京電力の場合は、電気の使用量が多い家庭向けの「プレミアムS/Lプラン」、一人暮らしからファミリーまで幅広い層向けの「スタンダードS/Lプラン」、夜間の電気使用量が多い人向けの「夜トクプラン」、オール電化住宅に住んでいる人向けの「スマートライフプラン」、再生可能エネルギーの電気を希望する人向けの「アクアエナジー100」など、いろいろなプランがあります。
自分のライフプランや家族構成に応じたプランを選ぶと電気料金の節約になります。
「私は夫、母と3人で一軒家で暮らしているので、従量電灯Cです。まずは家族構成やライフスタイルに応じて基本料金を見直し、自分たちのサイズに合った基本料金に設定し直す。それから節電をすることで、無駄な部分を省けるのです」
ポイントは段階料金
次にチェックすべきは、料金内訳の中の“1段料金”と“2段料金”です。
基本料金のあとは、電気を使った量に応じて、料金が変動します。最初の120kWhまでが「第1段階料金」で、1kWhあたり19.88円、120k~300kWhが「第2段階料金」で1kWhあたり26.48円、300kWh~が「第3段階料金」で1kWhあたり30.57円と、使えば使うだけ料金は高くなっていきます。
「つまり、2段目の料金が大幅に増えていたり、3段目まで表示されていたりしたら、その月は電気の使いすぎということになります。だから極力1段目までで抑えるように心がけ、2段目、3段目に入らないように細かくチェックしていれば電気料金を抑えられる=電力消費量を減らせるということです」
前年同月比をチェックする
使用電力は料金と比例するので、電気代が高い月は使いすぎたとわかります。
「しかし比較対象は、単純に1カ月前というよりも、前年同月比を重視しましょう。例えば同じ8月でも、去年と比べて高かったとしたらなぜかを考える。その理由がわかれば改善の指針になるからです」
現に日本の電力消費量は月別に大きく異なり、とりわけ真夏と真冬に多くなります。つまり、前月比で増えたか減ったかを調べ一喜一憂しても、さして意味をなさないのです。
下のグラフは、星野さんにご提供いただいた、2020年と21年の月別電気使用量(料金)のグラフです(薄い青が20年、濃い青が21年)。
このように「前月比」ではなく「前年比」を見ることによって、「今年はなぜ去年より電力消費が多いのか。昨年はなぜ少なかったのか。どうすれば昨年と同じ水準に下げられるのか」などということが検証しやすくなるのです。
スマートメーターのススメ
電気使用量をより早く正確に知るという意味では、近年「スマートメーター」という通信機能を備えた新しい電力メーターが普及しつつあります。
スマートメーターには、
(1)通信機能を持つ
(2)30分ごとに電気使用量を計測できる
(3)ブレーカー機能を持つ
(4)表示がデジタル式
などの特徴やメリットがあります。
中でも最大のメリットは「電気使用量の見える化」でしょう。電力消費量の多い時間や少ない時間といった、細かい使用量の把握や、契約している電力会社によっては、インターネットで電気の使用量をグラフなどで確認できます。
また、オール電化の家では、スマート家電と連動させることで、電気機器ごとに電力の消費量を把握できるようになります。
このように、ほぼリアルタイムで電気の使用量がわかるので、そのデータを元に、最適な電気料金プランを選べるなど、省エネ・節電の計画が立てやすくなるのが大きなメリットです。
「私は『みんな電力』という、自然エネルギーや再生可能エネルギーを使っている電力会社に変えたのですが、明細や今電気をどのくらい使っているかがスマホのアプリでリアルタイムでわかるんです。さらに料金グラフで、前年同月比がひと目でわかります。この使用電力の見える化はとても便利で、節電意識の向上にもつながるし、ひとつの学習ツールとしてもとても有効だと感じています」
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