今日からできる! 誰でもできる! SDGs入門[第2回]

買い物編[1] 「格安」の理由を想像する

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消費のキーワードは「エシカル」

 個人で今日から取り組めるSDGsとしてまず挙げられるのが、消費活動の起点でもある毎日の買い物。その際の有効な考え方のひとつが「エシカル」です。近年、しばしばメディアにも登場するので聞いたことがあるという方もいらっしゃるでしょう。

 エシカルとは「倫理的な」という意味の英単語です。一般社団法人日本エシカル協会によると、“根底には「法的な縛りはないけれども、多くの人たちが正しいと思うことで、人間が本来持つ良心から発生した社会的な規範」があり、特に「人や地球環境、社会、地域に配慮した考え方や行動」のことを指す”と定義されています。

 よりわかりやすく説明すると、おいしさに加えて幸せが広がる買い物がエシカル消費です。例えば、頑張った自分へのご褒美としてケーキを買う時に、国産の食材しか使っていないお店、プラスチック製の包装やスプーンを使わないお店、スタッフとして障害をもつ人を雇用しているお店で買うなど、ごく身近な買い物でもエシカル消費は可能なのです。

 国産の食材は外国産に比べ輸送距離が短いので輸送コストとエネルギーの節約ができますし、国内の産業を支援することにもつながります。プラスチック製の物を使わなければ、今、世界的に問題になっているプラスチックごみの削減に寄与できます。障害を持つ人など多様な人が働いているお店を選んで買い物をすれば、多様な人の働き方を支援することになり、「地球上の誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念にも貢献しています。
 エシカル消費は、17目標のいろいろな目標と関連性があるのです。

「安さ」の裏側を想像してみる

「商品を選ぶ時、『遠く離れた国の児童労働や劣悪な労働環境から生み出された物ではないのかな』と考慮し、そうではない商品を購入するといった消費行動も、エシカル消費です。例えば、あるお店でTシャツが300円で売られているとします。でも300円は安すぎるのではないでしょうか。

 買う側からすれば激安だし、1回着たら捨ててもいいと思って気軽に購入できるかもしれないけれど、その時、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいのです。綿花生産や裁縫工場の現場はどうなっているのだろう、どのような人たちがどのような環境や労働条件で働いているのだろう、そこに強制労働はないのだろうか、と。それがエシカル消費の第一歩なのではないでしょうか」

 実際に、バングラデシュでは2013年に、グローバル企業によって安く衣類を販売するために劣悪な労働環境で働かされていた女性従業員が、ビルの倒壊により1000人以上死亡する痛ましい事故が起きています。

 また、途上国などの綿花生産の現場でも、綿花を安価に効率よく安定的に採取するために児童が安い賃金で長時間働かされており、農薬を大量に散布することで健康を害している現状が国際NGOなどの調査でわかっています。

「生産国から遠く離れた国に暮らす私たちは、そのような悲惨な現状から目をそらすことができます。オーガニックコットンのTシャツが高い理由は、働く人たちの健康にも配慮して作られ、彼らに正当な報酬を支払っているから。そのコストが価格に反映されているのです。そのような従業員のことまで考えて作られているフェアトレード認証ラベルのついた商品を買うことが、エシカル消費につながるのではないでしょうか」

フェアトレード商品を購入する

 フェアトレードとは、途上国から原料や製品を適正な価格で継続的に購入して、自国で適正な流通・価格で販売することによって、途上国の労働者の生活改善や自立、環境保護を目指す公平・公正な貿易のことです。

 フェアトレードの代表的な商品としては、コーヒーや紅茶、ナッツ、ジュースなどの飲食品、Tシャツなどの衣類、化粧品などがあります。
(フェアトレード商品に興味のある人は、国際フェアトレード認証製品サイトをご覧ください。https://www.fairtrade-jp.org/products/

©shutterstock

 購入しようとしている商品が違法な労働環境や条件の元で作られている商品じゃないかをチェックし、値段だけで選ぶのではなく、少し割高でもフェアトレード商品を購入するなどのエシカル消費をすることが、遠く離れた国で暮らす人だけでなく、私たちの人権や貧困をなくすことにもつながっているのです。

「このエシカル消費は、SDGsの中の1(貧困をなくそう)、3(すべての人に健康と福祉を)、8(働きがいも経済成長も)、10(人や国の不平等をなくそう)、12(つくる責任、つかう責任)、16(平和と公正をすべての人に)など、たくさんの目標達成に貢献できます。社会全体としては、“こうしなければダメ”ではなくて、選択肢を複数提案することが大事です。そして私たちは数ある選択肢の中から、よりよいものを自分で考えて選び取る力を身に着けるべきだと思っています」

≪お話をうかがった方≫

新田英理子さん

SDGsジャパン理事・事務局長。2017年4月から19年3月まで、一般社団法人SDGs市民社会ネットワークと日本NPOセンターを兼任。パートナーシップが最大限発揮されSDGsが達成されることを目指し、活動中。他に、京都精華大学評議員、科学技術(JST)STI for SDGs審査員、足立区協働・協創パートナー基金審査会審査委員長、法政大学人間環境学部非常勤講師(NPO・ボランティア論)なども務める。

文◎山下久猛 撮影◎守谷美峰

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