今日からできる! 誰でもできる! SDGs入門[第5回]

ごみ問題編[1] プラごみを減らすには?

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2050年には魚よりも
ごみの量の方が多くなる?

【具体的アクション】

  • 使い捨てのプラスチック製品を買わない
  • プラスチック製以外の物を買う
  • スクラブ洗顔料などのように、「意外なプラスチック製品」に注意する

 ごみの総量を減らすことはCO2削減や自然環境を守ることに直結するのでSDGs目標の14(海の豊かさを守ろう)や15(陸の豊かさも守ろう)、13(気候変動に具体的な対策を)、12(つくる責任つかう責任)に関係します。

 さらに、私たちの生活にも多大なる影響を及ぼすことから、6(安全な水とトイレを世界中に)、11(住み続けられるまちづくりを)、2(飢餓をゼロに)、3(すべての人に健康と福祉を)と、SDGsを構成する生物圏、社会圏、経済圏すべての階層に関係する必須の課題です。

 中でも近年問題になっているのが、海洋へのごみの流出、とりわけ、プラスチックごみの流出です。世界の海には1分間にごみ収集車10台分(約15トン)のプラスチックごみが流れ出ており、そのほとんどは一度しか使われない使い捨てのプラスチックだと言われています(出典:The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics(2016年1月 世界経済フォーラム)

©shutterstock

「海洋ごみは年々増え続け、2050年には魚よりも多くなるという予測データもあります(※1)。海洋ごみの中でもプラスチックは厄介です。最近、問題視されているように、自然界に排出されたプラスチックは『マイクロプラスチック』となって、それ以上分解されず、自然に還りません。

 これが生物の生存を脅かしたり、水質汚染を引き起こしたりと生態系に悪影響を及ぼします。海はとても広いからごみを流しても自然の力で処理してくれると思っている人もいるかもしれませんが、もう処理しきれないほどの量になっています。まずそこを認識する必要があります」

(※1 環境省の調べによると、世界では毎年800万トンものプラスチックごみが海に流出しており、そのうち毎年2~6万トンのプラスチックごみが日本から流出していると推計されている。2016年1月世界経済フォーラムのThe New Plastics Economy Rethinking the future of plasticsによれば、現在世界の海に漂う海洋ごみの量は、総計約1億5000万トンで、現在も増え続けている。このペースで進めば、2050年には魚よりプラスチックごみの量が多い海になると予測されている)

「『私はポイ捨てなんてしないから関係ない』と思っている方も多いでしょう。しかし、わたしたちは、知らず知らずのうちに、結果としてポイ捨てしていることがあるんです」と新田さんは警鐘を鳴らします。

「以前、沖縄の離島の観光地ではない人里離れた砂浜に行くと、ものすごい量のペットボトルが流れ着いていて驚いたことがありました。ほとんどのペットボトルは日本語ではありませんでした。都内の荒川のごみ拾い活動に何度か参加しましたが、主催団体の方のお話では、驚く量のごみを集められるのに、2週間後には元の状態になってしまうそうです。

 故意にポイ捨てしていなくても、あめの包み紙が風で飛ばされた、パンやおにぎりを包んでいたプラスチックの破片がかばんからポロっと落ちた、なんてこともあるのです。これだけの人数の人が、一日にひとつポロっと落としただけでも、それらが流れつくのが、荒川であり、海。そう考えると、“自分は故意にポイ捨てはしていないから関係ない”ではなくて、そういうことも起こり得ると知ったうえで、プラスチックごみの問題を考える必要があるわけです」(新田さん)

 では、どうしたらいいのでしょうか。
 現在、私たちの身の回りはプラスチック製品であふれており、日常生活からプラスチックを完全に排除することは不可能でしょう。プラスチックはとても軽くて便利、その発明や便利さを否定しているのではありません。
 それでも、プラスチックごみを意識して減らす方法はいくつかあります。

極力使い捨てのプラスチック製品を買わない

 ごみの量を抑えるためには、まず買う量を減らすことが有効です。

「とはいえ、これまで、毎日ペットボトル飲料を飲んでいた人が、買うのをやめるのも無理でしょう。ですので、例えば、ペットボトルを毎週3本買っていたのなら2本に減らして、残り1本は紙パックの商品などに代替するという方法もあります。おしゃれなマイボトルやサーバーを利用する方法もあります」

 一人ひとりが行動を変えれば、飲料メーカーも、提供方法を工夫するかもしれません。

 NPOやNGOが消費者や家電メーカーの皆さんと話し合いを重ねて、これまでの常識を覆した例として挙げられるのが、「ノンフロン冷蔵庫」です。

「ひと昔前は、すべての冷蔵庫が当たり前のように、オゾン層を破壊するフロンガスを使っていました。しかし、今はノンフロン冷蔵庫しか売られていません。これは私たち一般消費者の地球環境破壊に対する意識が高まり、フロンガスを使った冷蔵庫は買いたくないと声を上げたからです。

 同じように、海洋プラスチックごみ問題が注目される中で、2025年までに100%リサイクルのペットボトル飲料しか販売しないと宣言をした世界的飲料メーカーもあります。私たち一人ひとりの行動が企業や世界を変えられるのです」

プラスチック製以外の物を買う

 実は同じ製品でもプラスチック製以外でも問題なく使えるという物はたくさんあります。現に、商品を包装するパックや飲料のカップ、ストローを、プラスチック製から紙製に変えるメーカーや飲食店が増えてきています。

©shutterstock

「一部の若い人たちの間では、ペットボトルの代わりに金属製のボトルやマイストローをいつも持ち歩いていて、そんなライフスタイルが“かっこいい”という風潮もあるようです。SDGsの達成はもちろん大切ですが、倫理観だけでは続きません。それよりも、楽しくて、かっこいいという価値観が醸成されることも大事だと思います」

 意外なところでは、スクラブ洗顔料や歯磨き粉、洗剤などにも、自然界で分解されない極小のマイクロプラスチックが入っている商品があります。フリース素材の服も洗濯するたびに、少量のマイクロプラスチックが出るそうです(※1)。
(※1 カナダのNPO“OceanWise”の調査によると、500gあたりのフリース生地から1回の洗濯で4万2千本から345万本もの繊維がマイクロプラスチックとして流出していることがわかった。参考リンク:https://www.aquablog.ca/2019/02/27886/

 買い物をする際、SDGsを意識して原材料を確認し、植物由来の原料のみを使用した商品を選択することも、プラスチックごみ削減に貢献できます。

≪お話をうかがった方≫

新田英理子さん

SDGsジャパン理事・事務局長。2017年4月から19年3月まで、一般社団法人SDGs市民社会ネットワークと日本NPOセンターを兼任。パートナーシップが最大限発揮されSDGsが達成されることを目指し、活動中。他に、京都精華大学評議員、科学技術(JST)STI for SDGs審査員、足立区協働・協創パートナー基金審査会審査委員長、法政大学人間環境学部非常勤講師(NPO・ボランティア論)なども務める。

文◎山下久猛 撮影◎守谷美峰

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