日本人なら知っておきたい 「神棚」7つの基礎知識 [第1回]

神棚をまつる場所にはルールがあるの?

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神棚とはなにか

 家の中で、おもに神道の神様をまつるためのお宮(と棚板)のことを指します。神棚には神社のお札をまつり、神具をおそなえします。わかりやすく言うと「家庭内ミニチュア神社」です。

 どんなに小さくても「神社」ですから、そこは神様が鎮座される場所。目に見えず声を聞くことも触れることもできない神様の存在を感じやすいようにと、形にしたもののひとつなのです。

 また、神棚とは神様と自分の心とをつなぐ「通信装置」だと考えてもいいでしょう。神棚を通して祈り、語り合うことで神様とつながりやすくなる。同時に、神様を「大切にする心」をいつも忘れず、尊び敬う心を日々育んでくれるものでもあります。

 人間関係と同じで、たまに来てお願いごとをするだけの人より、毎日おまいりしてくれる人を神さまは応援します。神社に毎日通うのは大変ですが、家にある神棚になら毎日おまいりできて、どんどん神さまとのご縁が深まります。

 神さまとのご縁が深まると、神棚はよい気を発し、家運が上がり、災厄を阻んでくれます。神棚こそが、実は最強のパワースポットといえるのです。まずはお札を置くだけでも違ってくるでしょう。

なぜ神棚をおまつりするのか

 家内安全、商売繁盛……神棚をおまつりする目的は、人それぞれでしょう。しかしどんな理由からにせよ、神棚が日々の生活の「心のよりどころ」となることは変わりません。

 では、なぜ家の中に神棚をおまつりするのでしょう? 昔の日本の家では、台所や井戸、玄関や大黒柱など、家の要であり生活に欠かせない場所に各所を守護する神様をおまつりしました。そうした大切な場所に神様の存在を意識したからで、神棚をまつることも同じ。守護の神様の存在を神棚という目に見える形にして、いつもそばにいてくださるということを忘れないためです。

 また、神道の最高神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)が太陽の神様であるように、日本の神様は自然の象徴であることが多く、神棚は国や土地の神々をまつるとともに自然への感謝を表す場所にもなります。

 神道に教義経典はありませんが、「浄明正直(じょうみょうしょうちょく=清く明るく正しく直る)」を心がけて生きることが大切だと言われています。神棚に向かって、朝は「今日1日を清く明るく生き抜きます」、夜は「1日の無事を感謝します」とおまいりする。起きては希望を唱え感謝して眠る生活をすることは、いまをよりよく生きる一歩であり、神棚をおまつりする意味はここにあるといえます。

神棚をまつるために知っておきたい
7つの基礎知識

[1]神棚の起源
  ――伊勢参詣「おかげまいり」ブームがはじまり!?

 神棚は古くは「古事記」に登場するとされています。神宮(注:伊勢神宮の正式名称)におまつりされている天照御大神が、父であり日本を生んだと言われる神様・伊邪那岐命(いざなぎのみこと)から賜った神聖な宝物を、棚におまつりし崇めたという神話です。

 一般家庭にまで普及したのは中世、さらに、現在のように個々の家でまつられるようになったのは江戸時代と考えられています。

 江戸時代には一般民衆のあいだでも、ご利益を求めての伊勢参詣「おかげまいり」が一大ブームとなりました。伊勢には、「おかげまいり」に全国から訪れた参詣者のガイドを務める神宮の布教グループ「御師(おし)」がいて、参詣者に神宮のお札を配りました。そのお札を納めるために御師が神棚を発案したのではないか、といわれています。

[2]神棚をまつる方角
  ――太陽が昇る東か、光が降り注ぐ南に

 神棚はお札が東か南、もしくは東南のいずれかを向くようにおまつりします。

 太陽が昇る東と、陽射しがいちばん強く降り注ぐ南は、太陽の神様である天照御大神の御威光を強く感じることができる向きだといわれています。祭礼などでも重要な方角とされ、多くの神社が東向きか南向きに建てられています。神棚の場合も、太陽の光が注ぐ位置におまつりするのがいいという考えからです。

 しかし、地理的状況や由緒などから、北や西向きに建てられている神社もありますし、神棚も絶対に北や西向きにしてはいけないというわけではありません。なるべく理想に近い環境で清浄な、その家で最適だと思われる場所に設置すればいいでしょう。方角にこだわるより、毎日のおまいりを欠かさず、きちんとおまつりする心がけが大切です。

[3]神棚をまつる場所
  ――清浄で、神様が落ち着いてくつろげる場所に

 神さまは穢れを嫌います。日常的に人が上を通る場所や、見下ろせる場所におまつりすることはタブーです。玄関やドアの上など人が頻繁に出入りする場所、トイレの近くなども適しません。

 大人の目線より高い、家族が集まりやすい、毎日おまいりしやすい、この三点を原則に、きれいで明るく神様が落ち着いてくつろげるような場所を選びましょう。

 マンションや戸建て住宅の一階におまつりする場合は、神棚上部に雲板をつけるか、天井に「雲」「天」「空」と書いた紙を貼ります。インテリアを邪魔するようなら、空の絵や写真で代用しても素敵ですね。

 ただし、これらは必ず必要なわけではありません。最初に「誰かが上を歩くことがあるかもしれませんが、お許しください」とお詫びしておくなど、誠意を持って神様に事情をお伝えすることが大切です。

 また、住宅事情などにより神棚が設置できない場合は、上記のような条件を備えた場所に奉書や半紙などをあて、その上にお札を貼るか、タンスなどの上を清潔にしておまつりしてもいいでしょう。

 いちばん重要なのは大切におまつりする心がけです。諸条件を満たすことができなくても、毎日のおまいりを欠かさず行なうよう心がけていれば、失礼にはなりません。

(次回へ続く)

●本稿は以下書籍の一部を再編集したものです

『心がやすらぐ神棚スタイル』阿部慎也監修、長崎祐子+神棚生活研究会著、プレジデント社
日々清々しく生きるための“神棚生活"スタート・ブック。日本人なら知っておきたい基本知識や作法からしあわせを引き寄せる神様との向き合い方まで。究極の自宅内パワースポット“私だけの神棚”入門書。

画像提供◎PIXTA

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