
もうすぐやってくる梅雨の季節の悩みといえば「カビ」。掃除しても掃除しても、すぐにまた生えてくる……そんな悩みを解決するため、カビの専門家として知られる千葉大学真菌医学研究センターの矢口貴志准教授に、梅雨前に済ませたいカビ対策のポイントについて伺いました。
学生が研究のために培養しているカビ。住居内に生息するものだそうです
そもそも、なぜカビは生えるのでしょうか。矢口先生は、カビが生えるのは「酸素、温度、湿度、栄養源」が足りているからだと言います。
「カビは好気性なので、繁殖するには酸素が必要です。そして、温度が20〜30℃、湿度が60%以上の環境だとカビが生えやすいです。また、人の皮脂や髪の毛、湯垢、石鹸カスなど、有機物質はなんでもカビの栄養源になります」
矢口先生によると、住まいに生えるカビには、「水分」を好むカビと「ホコリ」を好むカビの2種類がいるそうです。
「水分を好むカビの多くは黒く、ジメッとしていて、浴室や台所といった水回りに多い。一方、家具の裏や押入れのすみっこなど、ホコリがたまりやすい場所にもカビは発生しています。
室内の空気中には、1立方メートルあたり100数個から1,000個ものカビが浮遊しており、私たちは1日に約1万個ものカビを吸っているといわれています。たとえ目に見えなくても、家の至るところにカビが存在しているのです」
とはいえ、健康な人であれば、このくらいの数のカビを吸っても何ら影響はないそうです。
では、カビが生えるとどんなリスクがあるのでしょうか。
柱や床、家具などの劣化だけでなく、「カビを吸うことによって、呼吸器系のアレルギーなどの病気も起こりうる」と話します。
「アレルギーとは、細胞の表面で炎症が起きている状態を差します。どのくらい吸うとアレルギーになるかには個人差があり、具体的な指標はありません。花粉症と同じように、同じ量を吸っていても、アレルギーを起こす人と起こさない人がいます」
また、免疫の低下した患者ではアレルギー症状が悪化すると、気管支や肺などの細胞の中にカビが入ってしまい、感染症を引き起こす可能性があると言います。
これらの危険から身を守るには、家の中のカビを減らすことが重要だそうです。
「生活空間の中でカビを完全になくすことはできませんが、減らすことはできます。たとえアレルギーや感染症にかからなくても、カビを吸っていいことはありません。健康的な生活を送るためにも、カビが生えにくい環境を整えていきましょう」
湿度の高い梅雨時は、カビにとって格好の季節。矢口先生は、梅雨時にカビが増殖するのを防ぐためにも、梅雨前にカビ対策をしておくことを推奨しています。
「カビが生える条件がそろうと、カビはどんどん増殖していきます。だからこそ、梅雨前にきちんと対策をしておきましょう。できるだけカビが生えない環境をつくっておけば、梅雨時になってもカビがそれほど増えずにすみます」
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次回は、具体的なカビ対策について場所別に解説します。
→ 第2回に続く
1961年生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。明治製菓株式会社を経て現千葉大学真菌医学研究センター准教授に就任。生活環境のカビ、特に病原性のカビを専門に研究している。
文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
画像提供◎Shutterstock