コロナ禍で高まるDIY需要
「最近、DIYの問い合わせが増えています。中でも多いのが、コロナ禍で自宅にいる時間が長くなり、これまで気にならなかった壁紙の汚れや襖の破れを直したくなった、というケース。また、在宅ワークが一般化したため、『もっと快適に仕事ができる場所がほしい』とか、『仕事の合間にちょっとゴロッとできる和の空間がほしい』という声も聞こえるようになりました」
宮崎恭輔さんは最近のDIYの需要を、こう分析します。
ウェブメディア『makit!』を運営する、株式会社大都の宮崎恭輔さん。
「私が運営するウェブサイト『makit!』では、DIYツールを紹介しているのですが、ここへのアクセス数が急増しています。特に緊急事態宣言が発令された4月上旬からの3か月で、アクセス数は倍以上になりました。アクセス解析すると、男女比は半々で、25歳~45歳が中心。最近は少しずつですが、50歳以上の方々への認知も広がっていると感じています」
宮崎さんによると、コロナ禍で「自宅にワークスペースを設けたい」という声が増えたそうです。
この実需に応えるべく、宮崎さんたちは、和室の押入れをワークデスクにアレンジする方法や、どこでもワークスペースにできる折りたたみデスクの販売、スマホから参加できるオンラインのワークショップなども積極的に行っています。
「仕事場に限らず、自分たちの暮らしをより過ごしやすくすることは、アイデアや工夫次第で簡単に実現できます。DIYをもっと身近に、暮らしをつくる楽しさを伝えていきたいと、私たちは考えています」
こう語る宮崎さんは、「和室の壁や障子を修繕したいと思った時に、あえて業者に頼まず、自分で直したらみたらどうでしょうか?」とも提案しています。
和室の壁DIYの様子。宮崎さんらは、例えば土壁を黄色に仕上げるという柔軟なアイデアをウェブで紹介している。写真提供:Makit!
不定期で開催する、DIYワークショップの様子。「最近は、自宅DIYを紹介するインスタグラマーも増えています。オンラインワークショップも一瞬で予約が埋まる状況です」と宮崎さん。写真提供:Makit!
DIYは暮らしのエンターテインメント
アイデア次第で和風を醸しだせる。手作りの灯りもそのひとつ。
とはいえ、「工作は苦手だし、プロに頼んだほうが安心……」と思う方も多いでしょうが、宮崎さんはこう語っています。
「よく聞かれるDIYのメリットは、低予算でできることですが、それ以上に、自分で手をかけることで家に愛着が湧いてきます。DIYワークショップに参加された初心者の方でも、襖の張り替えも実際にやってみると『そんなに難しくない』と一様におっしゃいます。プロでないと難しいと思われがちな壁の塗り替えでも、メーカーの商品開発も進み、素人でも簡単に使える塗料が数多く出ているんですよ」
なるほど、そう聞くと、「自分の家を、自分で作ってみるのも良いものなのかも」と思えてきます。
さらに宮崎さんは、「DIYの醍醐味は、壁や襖を修理するだけでなく、オリジナリティのあるアイデアを活かせる部分にある」と言います。
「DIYは『暮らしづくりのエンターテイメント』です。和室にマッチする照明に変えてみようとか、こんな壁紙にしてみると落ち着くとか、固定概念にとらわれず、日本の暮らしを楽しんで欲しいです。暮らしに関心を持つ人が増えると、総体として、日本の住環境ももっともっと充実していくのではないかと思うんです。世代を超えて多くの方に、住まいづくりを楽しめる手法として、DIYがひとつの文化になれば嬉しいですね」
畳とともに、障子があれば「和」の雰囲気がでる。扱いやすい障子貼りセットもあり、コツさえつかめば短時間でキレイに仕上げられる。写真提供:Makit!
砂壁に壁紙を貼ることもできる。壁紙、のり、定規、カッター、ヘラ、ブラシといった道具もホームセンターで一式そろえられる。写真提供:Makit!
(第2回へ続く)
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