連載 映画に学ぶインテリアコーディネート[8] パディントン後編

住まいを「英国風」にする、ステッカー&立体アートの選び方

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ウォールステッカーで、壁をキャンバスに

 ブラウン家のインテリアコーディネートでは、個性や美意識を表現するアート空間として「壁面」が重要な役割を果たしていました。そこで、今回は壁面を中心に、「パディントン」のコーディネートを実践していきましょう。

「パディントン」で特に印象的なのが、ブラウン家のエントランスに描かれた「桜」のウォールアート。桜の絵があることで華やかで素敵な空間になっていましたが、自室の壁一面に「絵を描く」のはハードルが高いでしょう。「そんなときに活躍するのがウォールステッカーです」と横山さん。

 ウォールステッカーはクロスの上から貼れ、剥がした跡も残りにくいので、賃貸マンションでも気軽に取り入れることができます。絵柄の種類も豊富で、さまざまな絵柄を組み合わせることで、自分だけのアレンジを楽しめるのも魅力の1つです。

「自然を感じられるようなものを取り入れ、季節ごとに張り替えを楽しんでみてもよいかもしれませんね。また、長男ジョナサンの部屋には『宇宙』の写真が壁一面に貼られていましたが、そんなふうに自分で撮影した画像を壁紙にすることもできるので、お気に入りの風景やペットの写真を使ってオリジナルの壁紙をつくってみるのもお勧めですよ」

立体アートで、壁面を飾ろう

 もう1つ、横山さんがお勧めするのが「額アート」です。「中身のない額縁の中に好きなものをアートのようにあしらうことで、壁面をにぎやかに飾ることができます。特にお勧めなのが、造花やドライフラワー。立体的な動きが出る分、にぎやかな印象をつくることができますよ。

 ドライフラワーを飾るときは画鋲で留めたり、粘着性の弱いテープを使ったフックなどを使うとよいでしょう。もちろん造花やドライフラワーだけでなく、趣味の写真や絵を組み合わせて額の中に飾っても雰囲気が出ます」

 また、小さな棚を壁に設置し、その上に小物を置くのもよい方法と横山さん。魅せる場所を1つ用意するだけでも、お洒落な雰囲気がつくれるそうです。「棚の上に置く小物は、センスの見せどころ。小さな絵本や抽象的なオブジェなど、気に入ったアイテムを置いてみましょう」

壁紙をツートーンでコーディネート

「パディントン」を参考に、壁紙にも凝ってみてはいかがでしょう。ブラウン家の玄関から続く廊下の壁は、モールドを境に上下2種類の壁紙を使った、2トーンコーディネートになっていました。「部屋の壁面すべてを張り替えるのは大変なので、まずはトイレなどの小さな空間で実践してみることをお勧めします。

 上下の壁紙の組み合わせを変えることで、さまざまなテイストを表現できます。例えば、白と黒の組み合わせならシックでシンプルなテイストになりますし、チェックやドットを使えばモダンな雰囲気を出すことができます。

 柄同士にすると喧嘩しがちなので、バランスに気をつけながら、自分らしい組み合わせを探してみるのも楽しいですよ」

個性的なアイテムで遊びをプラス

 壁をにぎやかに飾ったら、家具やアイテムにもこだわってみましょう。「ブラウン家の家族それぞれの部屋にはユーモア溢れる素敵なアイテムがたくさんありましたね。部屋の中に好きなものを置くだけでも気分は上がるものです」と横山さん。

「パディントン」のインテリアコーディネートのポイントの1つは、「生活に必要ないもの」「特に用途がないもの」をふんだんに取り入れることで、その部屋の主の個性を際立たせていることだと横山さんは言います。

「余計なものは置かないシンプルな空間も素敵ですが、余計なものが空間を特別なものにしてくれることもあります。『生活には必要ないけれど好きなもの』をどんどん取り入れて、自分だけの特別な空間をつくる。そんなコーディネートにぜひ挑戦してみてください」

 今回は、「パディントン」の世界観をお部屋に取り入れるためのポイントをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。インテリアコーディネートのポイントをヒントに、毎日が楽しくなる空間づくりを目指してみてください。

お話を伺った人

横山朱美さん

美空間プロデューサー(二級建築士・インテリアデザイナー)
オフィスデザインから始まり、JV現場事務所や工務店勤務を経てハウスメーカーのインテリアコーディネーターとして活躍。2011年に設計事務所を開設し、三井ホーム㈱と提携して、リフォームの設計からインテリアまで幅広く手掛ける。やさしい煌めきの空間づくりを目指し、1000件を超える物件を提案。近年は総合広告商社㈱AAPと提携しホテルのリノベーションなどインテリアデザイン案件を手掛けながら、専門学校の講師として後進育成にもあたる。『リフォーム&リノベーション インテリアコーディネーター名鑑』に掲載される。

文・イラスト◎菅沼遼平 画像提供◎Shutterstock.com

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