連載 映画に学ぶインテリアコーディネート④ Sex and the City〈後編〉

フットベンチ1つで「余裕」を感じる大人の部屋に

空間
リビング・寝室・居室
関心
ライフスタイルインテリアデザインリフォーム

 前回は、インテリアコーディネートの観点から「Sex and the City」の主人公キャリーの部屋の魅力をご紹介しました。ウォークスルークローゼットを生かした見せる収納、絵やオットマンが醸し出す大人の余裕、ミラーが演出するきらびやかな雰囲気……、上質な大人の部屋をかなえるヒントがたくさんありましたね。
 今回は、いよいよ実践編です。「Sex and the City」の世界観を、自分のお部屋に取り入れるためのポイントについて横山朱美さんにお話を聞きました。

絵をたくさん飾るときの黄金ルール

 まずは、比較的簡単に取り入れられる壁の装飾から見ていきましょう。
 連載第1回でもご紹介しましたが、鮮やかなブルーの壁とクラシックな家具の組み合わせもさることながら、ベッドルームの壁に飾られた絵も大人の余裕を感じさせるアイテムでした。

 でも、いざ挑戦しようと思うと、「どんな絵を飾ったらいいのかな?」「どう配置すれば素敵に見えるの?」と悩むところです。

「額に入れる絵で悩んでしまう方が多いのですが、額の中に入れるものは必ずしも絵である必要はありません。家族や風景の写真を入れると温かみや季節感が出ますし、立体感が出るドライフラワーを額の中にあしらうのもお勧めです。

 壁にどんなふうに貼ったらいいか迷うときは、最初に額全体のアウトラインを決めましょう。例えば、15個なら15個の額で四角形をつくろうとか、円形をつくってみようと先にアウトラインを決めるんです。

 パズルのように枠が先に決まっていれば、あとは当てはまるように配置するだけなので簡単です。いろいろな形や素材の額を使うと動きが出ますよ」と横山さん。

フットベンチで、ベッドルームをクラスアップ

 もう1つ、大人の女性ならではの余裕や優雅さを生み出していたのが、キャリーのベッドの足元にさりげなく置かれたフットベンチです。

「日本ではホテルなどに置かれているのを目にしたことがありますよね。フットベンチは荷物を置いたり、着替えの際などにちょっと腰かけたりといった使われ方をします。

 不可欠なアイテムでないからこそ、置いてあるだけで余裕を感じさせたり、優雅な印象を与えたりするのです。動線の邪魔になる、スペース的な余裕がないなどの場合は、コンパクトなものや収納機能がついたタイプを試してみるとよいかもしれません。フットベンチを上手に取り入れて、お部屋のクラスアップをしてみてはいかがでしょう」と横山さんは言います。

ミラー素材で、部屋を明るくゴージャスに

 キャリーのベッドルームには全面ミラー張りのドレッサーが存在感を放っていましたが、ミラー素材を部屋にうまく取り入れるのもポイントの1つ。ミラー素材を取り入れることで、部屋を広く明るく見せたり、ゴージャスな雰囲気を出すことができます。

「そうは言っても、全面ミラー張りは派手すぎるかも……」という方は、「例えば、支柱や一面のみがミラー加工されたものを置くだけできらびやかな印象をつくれますよ」と横山さん。

「また、ミラーには空間を広く見せる効果があるので、ベーシックな鏡でもある程度の大きさがあれば、置くだけで見た目の広がりに差が出ます。特に日本は物理的に狭い部屋が多いので、活躍の機会は多いと思います。豪華な印象をつくりたいときは、クリスタルや光沢のあるフレームをあしらってみましょう」

ラグで部屋の模様替えを楽しもう

 そして、最後のポイントとなるのがラグ使いです。キャリーの部屋は、シンプルな単色の床の場合は柄物のラグで華やかに、逆に目を引く柄物のソファがある場合は無地のラグでシンプルにと、ラグをうまく活用することで部屋全体の調和をとっていました。

「キャリーの部屋をお手本に、ラグで部屋の模様替えを楽しんでみてはいかがでしょう。シンプルな単色の床には、柄物のラグがうってつけ。小さなラグを敷くだけでも、部屋の雰囲気をガラリと変えることができます。

 また、キャリーの部屋のようにクラシックな家具とボタニカルな柄を合わせると、フェミニンな大人の印象になりますよ。1つの空間で柄ばかりを重ねてしまうと、印象がうるさくなってしまいがちなので、柄のバランスに気をつけてコーディネートしていきましょう」

 今回は「Sex and the City」の世界観をお部屋に取り入れるためのポイントをご紹介しました。キャリーの部屋のようにしたいと言っても、高級なクラシック家具を揃えるのはなかなか大変。まずは、壁の装飾やオットマン、ミラー素材など気軽に取り入れられるものからスタートしてみてはいかがでしょう。今回ご紹介したインテリアコーディネートのポイントをヒントに、ぜひ上質な大人の空間づくりを目指してみてください。

お話を伺った人

横山朱美さん

美空間プロデューサー(二級建築士・インテリアデザイナー)
オフィスデザインから始まり、JV現場事務所や工務店勤務を経てハウスメーカーのインテリアコーディネーターとして活躍。2011年に設計事務所を開設し、三井ホーム㈱と提携して、リフォームの設計からインテリアまで幅広く手掛ける。やさしい煌めきの空間づくりを目指し、1000件を超える物件を提案。近年は総合広告商社(株)AAPと提携しホテルのリノベーションなどインテリアデザイン案件を手掛けながら、専門学校の講師として後進育成にもあたる。『リフォーム&リノベーション インテリアコーディネーター名鑑』に掲載される。

文・イラスト◎菅沼遼平 画像提供◎Shutterstock.com

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)