
前回は、インテリアコーディネートの観点から「アメリ」の世界観や魅力をご紹介しました。
ガーリーとアンティークの組み合わせ、シックな赤と差し色の緑のバランス、レトロポップなタイル使いなど、部屋づくりのヒントがたくさんあったのではないでしょうか。
今回は、いよいよ実践編! 「アメリ」の世界観を、自分のお部屋に取り入れるためのポイントについて横山朱美さんにお話を聞きました。
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アメリのベッドルームは、確かに魅力的。でも、「自分の部屋の壁を真っ赤にするのはちょっと……」という人も多いでしょう。
「そんなときは、赤を基調としたテキスタイルやタペストリーなどで壁や家具を覆い、空間の色彩を楽しんでみてはいかがでしょう。いきなり壁を真っ赤に塗るとか、赤い家具を購入するのはハードルが高いので、まずは布を使って着せ替え感覚ではじめてみるんです。イメージと違ったときは簡単に外せますし、比較的安価ですから、気軽に挑戦できると思います」と横山さん。
横山さんがおすすめする2つ目の方法は、「小さな空間」からはじめてみること。例えば、リビングの一角などに限定して模様替えする方法です。これなら費用も労力もそれほどかからず、そこから段階的に広げていくことで失敗のリスクも抑えられます。
そのなかでも一番ハードルが低いのがトイレ。「じつは、リフォームの際にお客様から『凝って仕上げたい』と言われることが多い場所もトイレなんです。自分だけのリラックス空間だからこそ、好きな色に統一してみるのもよいのではないでしょうか。トイレを開けたら、アメリの世界なんてとても素敵だと思いますよ」
もう1つ、色という観点から取り入れたいのが補色の使い方です。アメリの部屋は、赤をベースカラーとしながら、そこに補色関係にある緑や青を差し色として使うことで、ちょっと不思議な雰囲気の空間をつくり上げていました。
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「アメリの部屋は赤をベースとしていましたが、じつは赤でなくても同じような雰囲気を出すことができるんですよ」と横山さんは言います。空間のベースカラーを決めたら、その補色に近い色を差し色として足していきます。
例えば、ベースカラーを赤にしたら青や緑を差し色に、ベースカラーに紫を選んだなら黄や緑を差し色にしてみる。そんなふうにいろんなパターンを試しながら、自分の好きな組み合わせを見つけるのも楽しいのではないでしょうか。
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アメリのベッドルームのもう1つのポイントは、可愛らしいけれど甘ったるい印象になっていないため、大人の女性が見ても魅力的であること。そして、それを実現しているのがガーリーとアンティークの絶妙なバランスです。
まずは、アメリの部屋のようなガーリーさを出すにはどうしたらよいのでしょう。その答えは、「ちょっとした工夫」にあると横山さんは言います。「例えば、アメリのベッドサイドには2つのテーブルランプがあり、フリルのついたランプシェードがとても可愛らしい印象を与えています。硬質なプラスチックやガラスのランプシェードではなく、やわらかな布とフリルのランプシェードにする。そういうちょっとした工夫がガーリーな空間づくりにつながるんです」
ちょっとした工夫は、カーテンにも見られます。カーテンをまとめたら、カーテンと揃いのタッセルでとめるのが一般的ですが、それを可愛らしいリボンでとめています。たったそれだけで空間がぐっとガーリーになるのです。
では、アンティークのほうはどうでしょう。「本当は年季が入った骨董品を置きたいところですが、アンティークはなんといっても高価。まずは、量販店や通販などでイメージに近いものを探してみるのがよいでしょう。アイアンの家具をはじめ、装飾が施された額なども比較的リーズナブルなお値段で手に入りますよ」と横山さん。
家具やアイテムが手に入ったら、自分の理想のイメージに合わせて加工してみましょう。経年劣化や鉄さびを再現するエイジング塗料などを使って味わいを出すのもおすすめ。ベーシックな鏡も加工した額をあしらうだけで、味のあるおしゃれな鏡に変身します。すべてを既製品に頼るのではなく、組み合わせやアレンジで自分好みのアイテムをつくるのもインテリアの醍醐味です。
最後に、アメリのキッチンや洗面所でレトロポップな味わいを醸し出していたタイルについて見てみましょう。安価なタイルは、部屋の模様替えにもってこいのアイテム。単色のものから柄が入ったもの、きらびやかなものまで、とにかく種類が多いので、どんなコンセプトの空間にも使える優れものなのです。
「アメリの部屋のように、タイルでレトロポップな雰囲気を出したい場合は、市松模様が向いています。赤と白、黒と白など2色のタイルを交互に置いていくだけなのでとても簡単ですよ。ぜひ試してみてください」と横山さん。
今回は「アメリ」の世界観をお部屋に取り入れるためのポイントをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。「アメリ」をはじめ、国内外の映画には魅力的な部屋がたくさん登場します。ストーリーはもちろん、インテリアコーディネートの観点からも映画を楽しんでみてはいかがでしょう。
美空間プロデューサー(二級建築士・インテリアデザイナー)
オフィスデザインから始まり、JV現場事務所や工務店勤務を経てハウスメーカーのインテリアコーディネーターとして活躍。2011年に設計事務所を開設し、三井ホーム㈱と提携して、リフォームの設計からインテリアまで幅広く手掛ける。やさしい煌めきの空間づくりを目指し、1000件を超える物件を提案。近年は総合広告商社(株)AAPと提携しホテルのリノベーションなどインテリアデザイン案件を手掛けながら、専門学校の講師として後進育成にもあたる。『リフォーム&リノベーション インテリアコーディネーター名鑑』に掲載される。
文・イラスト◎菅沼遼平 画像提供◎Shutterstock.com