マンションをフルリノベして都心に住む[第3回]

フルリノベ業者の選び方とプランニング

空間
その他
関心
ライフスタイルリフォーム

「相見積もり」で業者を決める

スープ作家・有賀薫さん宅のキッチン。

 柳澤さんは、以前この住み人オンラインでもご紹介したスープ作家・有賀薫さん宅のキッチンのリノベーションを担当されました。

「有賀さんのリノベーションを受注するきっかけになったのは、出張リフォーム相談会に有賀さんがいらっしゃったことでした」

 建築家やリフォーム業者を探す際、雑誌や建築会社・リフォーム会社のホームページから、手がけた作品を見て決めるという方も少なくないようです。しかし、柳澤さんは「決め打ち」の依頼は避けた方がいいと言います。

「有賀さんのキッチンに関しても、数社の相見積もりでした。相談会にいらっしゃったことでスタートし、そこから有賀さんのお仕事やご家族のこと、生活のスタイル、有賀さんが考えている理想のキッチンなどについてヒアリングして、最初の案を出しました。それぞれの会社からいろいろなプランが出たことで、有賀さんも、ご自分の理想のキッチンの姿が見えてきたようです」

 大きな病気になったときセカンドオピニオンを受けることはよくあります。マンションのリノベーションは大病の手術や治療と同じ大仕事。ならば、セカンドオピニオンを聞いたり、複数の業者に声をかけて、納得のいく形に作り上げていきたいものです。

「リフォーム業者もさまざまです。例えば、あまり造作をいじらず、シンクなどを既製のものに取り替えるだけの業者もいます。もちろん、いまはLIXILさんの製品を見てもわかるようにスタイリッシュなものも多く、施主さんの要求と合致すればそれでスムーズにいくと思います。しかし、こだわりの強い方だと、オリジナルで作る必要があったり、予算的に見合わないときは代替案を考えたりすることもあります。そういう施主さんの気持ちを汲んでくれる業者を見つけていくことが大切です」

 柳澤さんは、有賀さんのキッチンを作るときには何度も打ち合わせを重ねたそうです。

「有賀さんの理想のダイニングキッチンの形や使い方について繰り返し話を伺い、予算の折り合いをつけながら、現実的な形にしていきました」

 古い設備をほぼ残しながら、ダイニング部分に95cm角のテーブルを設え、その中央にIHヒーターを埋め込みました。サイドに丸いシンクを備え、レディメイドではなく特別に設計した仕様です。

「ほかの業者さんは、既製の製品を元のキッチンのシンクなどの代わりに取り付ける、というような案だったようです。けれど、仕事のスープレシピ制作や、料理の撮影をするには、奥まったところにあるキッチンでは難しかったのです。このキッチンが誰にでも向いているということではなく、有賀さんの理想の形に近づけたということですね」

部屋全体の間取りまで変えられる

 施主さんからのオーダーで多い項目はどんなものでしょうか。

「やはりキッチンは多いです。それ以外には広々としたリビングが欲しい、明るい部屋にしたいなどですね。他にも、ゆったりとしたお風呂に入りたいとか、子どもが独立したのでその部屋を活用したい、など。最近多いのは、気候変動のこともあってか、省エネに関することですね」

 LIXILの製品にもある、今ある窓の内側に窓を追加するだけで省エネ性能をぐんと高められる内窓「インプラス」シリーズなども需要が高そうです。

「そうですね。窓は熱の出入りが一番多い箇所ですから、そこをきちんと対処することで光熱費はかなり変わると思います。サッシそのものを変えてもいいですし、簡単に取り付けられる製品もいいと思います」

 中古マンションを選ぶときには、一般的な3LDK、70~80㎡クラスの物件が人気だと聞きます。その広さであれば夫婦と子ども1~2人が暮らすのに十分そうです。

「それもケースバイケースですね。お子さんが2人以上いる場合、独立した部屋が欲しいとか、いろいろ条件が出てきます。あるいはお子さんがいないとか、すでに独立して夫婦二人暮らしであるとか。それぞれの家族によって必要な広さがあると思います。趣味のための部屋が欲しいという場合もありますね」

 どんな暮らし方をしたいのかを頭に描きながら、やりたいこと、必要な項目を挙げていくのがいいのかもしれません。

「それと、大切なのは予算です。住宅ローンを組むときに、リノベーションの予算をどう取るかもきちんと頭に入れておきましょう」

 住宅ローンにリノベーション費用を組み込めない場合もあります。リノベーションのためだけに別にローンを借りるとなると、住宅ローンに比べて金利が高いことも。

「予算とやりたいことのせめぎ合いで、諦めなければいけない部分も出てきます。けれど、仕様を変更してコストを抑える工夫も考えられます。予算がないからダメと諦めてしまうのではなく、プランニングの段階できちんと話をして、解決できる方向に向かえる業者を選ぶことは大切だと思います」

 次回から、築年数別に、マンションをリノベーションするときのポイントについて伺います。

≪お話を伺った方≫

柳澤和孝さん

有限会社ますいいリビングカンパニー 高崎分室主宰。フェリカ建築&デザイン専門学校卒。新築物件から戸建て、マンションのリノベーション、店舗のインテリア設計まで幅広く手掛ける。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
写真◎ますいいリビングカンパニー提供、Shutterstock

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)