マンションをフルリノベして都心に住む[第1回]

あえて中古マンションを買うという選択

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住宅の価格は高値傾向

 全国的に、マンションの相場が高騰しています。都心では、一戸建てはおろか、新築のマンションもだんだん手が届かない価格になってきています。

 そんな中で注目されているのが、中古マンションの購入です。リフォーム済みのマンションもかなりの人気です。

 バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災の影響などで下落していた土地の価格が、震災の復興が進み、景気の回復傾向が見られ、首都圏では東京オリンピックなどの影響もあって地価はどんどん上昇してきたと言われています。さらには、新型コロナウイルスの蔓延によって、経済活動が停滞し、だぶついた資本が不動産に流れ込んでいるという話もあります。新築マンションの価格もずっと高止まり傾向が続いています。

「地価の高騰ともうひとつ、建築資材など、あらゆるものが高騰していることも挙げられます」と話すのは、建築家で、マンションや戸建てのリノベーションなどを得意とするますいいリビングカンパニーの柳澤和孝さんです。

「世界的なコロナの蔓延に端を発し、アメリカが一時金利を下げたことなどで木材不足『ウッドショック』が起こりました。その後、アメリカの金利上昇による円安などで、石膏ボードから釘やビスに至るまで、あらゆる建築資材が値上がりしています。実感としては、この数年で15%くらいは上がったのではないかと思います。

 私はいま、群馬県を拠点に仕事をしていますが、こちらでも都市部は地価が上がり、かつてのような50坪、100坪という敷地面積にゆったりと家を建てるケースは少なくなってきました。30坪くらいの土地で家を建てるケースが増えてきたと思います」

 そういう状況の中で、中古物件の人気が上がってきている、ということでしょうか。かつては、結婚をして、子どもを産み育てていくライフプランの中で、どこかで新築のマンションや一戸建てを購入するという選択肢があったと思います。

「そうですね。コロナ禍前から地価はどんどん上がり、立地条件のいい場所に何千万円もかけて新築の物件を買うのが、庶民的な予算組みでは難しくなってきたのだと思います。ですから、中古物件を買ったり、あるいはご両親などから家やマンションを引き継いでリフォームをして住む、というケースも増えています。更地にして建て直すよりは、はるかにコストも抑えられますから」

都心に住むならマンションが有利

「コロナ禍のもとで、みなさんの生活のスタイルも大きく変わったのではないでしょうか。リモートワークが増えたり、あるいは通勤電車をなるべく避けるような生活スタイルになったり」

 家を買う方も、大きく2つに分かれたと言われます。
 ひとつは、郊外に住んで、少し広めの家、自然の多い環境でのびのびと暮らしたいという方。お子さんの遊び場に困らないし、さまざまな買い物もいまはネットで済ませられます。大きなショッピングセンターや郊外型のアウトレットモールなども充実しています。

 もうひとつは、やはり都心に住みたいという方。夜遅くまで飲食店が開いていたり、買い物もすぐに行ける便利さは捨てがたいものがあります。

「都心に住むことの良さは、公共インフラが充実していることなど、たくさんあります。特に、通勤時間が短く済むのは何事にも代えがたいものかもしれませんね。それだけ自分の時間が増えるということでもあります」

「リノベ済み」より「買ってリノベ」

 そんな中で注目されているのが、都心に増えてきたリノベ済みのマンションです。

「駆体がしっかりしていれば、マンションは年月が経っていても十分住むことができます。最近は、築年数の経ったマンションでも、外装などのリフォームをしている物件もあります。壁紙の張り替えや、キッチンなどの設備をリフォームしたマンションは、かなり新築に近い感覚で住むことができると思います」

 リフォーム済みのマンションのみを扱った販売店も最近ではよく見かけます。Webサイトの写真を見ると、壁、床、バスルーム、トイレ、キッチンなどをリフォームして、一見新築のように見える物件も少なくないようです。

「もちろん、内覧をして気に入れば、そうした物件を購入するのもいいでしょう。けれど、どうせなら、お手頃な価格の中古マンションを手に入れて、自らフルリノベーションをするのはいかがでしょう」

 リノベ済みの物件を買う場合、自分たちの暮らし方をその家に合わせることになります。しかし物件を手に入れてから自分でリノベーションをすれば、壁材や床材はもちろん、間取りまで変えることができます。

「新築でも、分譲マンションは間取りも設備もすでに決まっています。けれど、自分でリノベーションをするならば、マンションでも注文住宅と同じようにオーダーすることができるのです」

 中古マンションを購入してリノベーションをすることは、アメリカやヨーロッパではごく一般的な「都会の住み方」です。そろそろマイホームの購入を考えている方は、ぜひ選択肢の中に入れてみてはいかがでしょう。

 次回は、リノベーションを前提とした中古マンションの選び方について伺います。

≪お話を伺った方≫

柳澤和孝さん

有限会社ますいいリビングカンパニー 高崎分室主宰。フェリカ建築&デザイン専門学校卒。新築物件から戸建て、マンションのリノベーション、店舗のインテリア設計まで幅広く手掛ける。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
写真◎ますいいリビングカンパニー提供、Shutterstock

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