マンションをフルリノベして都心に住む[第4回]

築浅マンションをリノベーションするポイントは?

空間
その他
関心
ライフスタイルリフォーム

意外にリノベしやすい「築浅物件」

 築年数が浅いマンションは、設計がタイトでリノベーションがしにくいのではないかというイメージがあります。

「実は、新しい建物は、むしろリノベーションやリフォームをすることを前提に作られているような印象があるんです」という柳澤さん。

「一般的にマンションの部屋というのはRC構造の駆体で作った空間ですが、古い物件だと隣の家と隔てる壁が薄かったり、天井や床がむき出しの駆体の上に部材をぴったり貼ってあったりします。一方新しい物件は、隣の家との間にある壁も防音性能が高く、床がかさ上げしてあったり、天井も空間があるんです。従って、あまり大幅な手を入れる必要がないので、コストが抑えられます。もちろん、その分築年数のこともあって物件そのものの価格は高価になる傾向はあります」

築浅のマンションは省エネ性能も十分

 最近注目を浴びている省エネ性能はどうでしょう。

「そもそも、戸建てと比べて、RC構造の集合住宅は案外省エネ性能が高いのです。これは、古いマンションでも新しいマンションでもあまり変わりません。

 コンクリートには、蓄熱効果や断熱効果があります。さらに、集合住宅だと部屋の上下左右にも部屋があり、各部屋で夏はエアコンを入れ、冬は暖房を入れていますから、その熱がじんわりとですが自分の部屋にも伝わってくるというメリットもあるんです。古いマンションでも、10年前の新築戸建てよりはるかに省エネ性能が高い、などというケースもあります。

 熱の出入りが最も高い窓に関しても、集合住宅なら窓があるのは基本的に1面だけですし、築年数の浅いマンションならペアガラスなどの断熱性能の高いものが使われていることが多いので、その場合、変える必要はないと思います」

 窓に関しては、購入時やリノベーションのプランニング時に確認をして、建築家に相談をするのが良さそうです。

全面的に間取りを変えるフルリノベ

 構造的な部分にコストがかからない分、予算次第で部屋を大きく改修することにお金をかけることもできます。

「図のマンションは、部屋が細かく分かれていて、家全体がやや暗かったのです。『明るい室内』『仕事や勉強ができる広いリビング』『壁面に大きな本棚』というご要望を取り入れ、ほとんどの壁と天井を取り払いました。家族の人数や年齢によって、住まいに求められる要件は大きく変わってきます。

 漆喰壁の下地処理や、アクセントとして用いたポーターズペイントの壁塗装は、施主さん自身によるセルフビルドです。コストを抑えると同時に、愛着のもてる空間になりました」

水回りの移設も楽ちん

 物件によっては水回りの配管が変更できないケースもあります。

「かさ上げした床は、さまざまなものを隠すために有用なんです。例えば電気やインターネットの配線、さらには水回りの配管など。張り替える床材の下に空間があれば、取り回しを楽に変更できるんです」

 また、かさ上げをしていることで防音性能も上がるそうです。

「古いマンションですと、下の階へ物音が響かないか気になる場合があります。けれどかさ上げをしてあれば、そういったことは気になりません。フローリング材の下に吸音材を敷くという手もあります」

天井高を増やす

 天井と駆体の間の空間を、天井材を張り直すことで小さくすることも、築浅物件では容易な場合が多いそうです。

「通常、マンションの床面から天井までの高さは240cmくらいが一般的です。築浅の物件は天井の構造材と天井に貼った部材の間に、多ければ30cm、場合によっては40cmくらいの空間があることも珍しくありません。そこで、その空間を縮めてしまうことによって、室内の天井高を増やすことができます」

 戸建てに比べるとマンションはどうしても天井が低いイメージがあります。このような部屋なら、少しくらい面積は狭くても、ゆったり寛げそうな気がします。

 次回は、築年数が経っている、古いマンションのリノベーションのポイントについて伺います。

≪お話を伺った方≫

柳澤和孝さん

有限会社ますいいリビングカンパニー 高崎分室主宰。フェリカ建築&デザイン専門学校卒。新築物件から戸建て、マンションのリノベーション、店舗のインテリア設計まで幅広く手掛ける。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
写真◎ますいいリビングカンパニー提供、Shutterstock

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)