マンションをフルリノベして都心に住む[第2回]

リノベーションに適した中古マンションの選び方

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中古マンションのメリットとデメリット

 新築マンションとは、竣工して1年未満で、一度も誰かが入居したことがない物件のことを言います。1年以降であると、未入居でも「新古マンション」と呼ばれ、実際に誰かが入居すれば竣工1年未満でも「中古マンション」と呼びます。

 新築マンションを購入する場合は、間取り図を見たりモデルルームを見学したりして決定することが多いと思います。人気の物件なら申し込んでも抽選になり、なかなか思った物件が買えないということもあるようです。

「中古マンションの場合、すでに物件が存在しますから、実物を見て決められるのが最大のメリットではないでしょうか」と柳澤さんは言います。

「マンションを購入するときは、公共交通機関や商圏、学校へのアクセスなどをチェックすることはもちろんですが、肝心な住人のみなさんとの関係性は、住んでみなければわかりません」

 例えば、共用部分やゴミ捨て場などはきちんと管理されているか、管理組合の様子はどうか、さらにはタバコの副流煙が周囲の部屋から入ってこないかなどは、新築の場合、あらかじめ確認をしておきたいと思っても不可能です。

「その点、中古物件なら、どんな方が住んでいるか、たばこの臭いが部屋の中に入ってこないか、駐車場や駐輪場の車や自転車の並べ方、ゴミ集積場の管理具合などで、そのマンションの住み心地をうかがい知ることができます」

 そのほかにもリノベーションを前提にするなら確認すべきポイントがあります。

「間取りを変更することができるかは必ず確認しましょう。さらに、水回りの移動ができるか。また、長く住むことを考えるなら、バリアフリー化ができるかも重要です。古い建物の場合、構造物が張り出していて玄関などに高低差がある物件も少なくありません。そして、一番気にしたいのは耐震性の問題です」

古いマンションは
メンテナンス履歴をチェック

 中古マンションは、大きく4つに分けて考えるといいと言われています。

 まずは、新古マンションや築数年くらいの、極めて築年数が浅いマンションです。

「こうした物件は、駆体が傷んでいることはまずありません。設備も最新のものが多く、設備的な問題でのリフォームやリノベーションの必要がないものがほとんどです。ただその分、価格も高くなります。

 また新しい物件は、不動産業者さんに前の持ち主はどんな方だったのか、手放す理由は何か、などを尋ねるといいでしょう」

 家庭の事情で手放すことはあるでしょう。けれど、築浅の物件を手放すというのは一般的には考えにくいので、住みにくい理由や、何かトラブルがある可能性も考えられます。きちんと答えられない業者は避けた方がいいでしょう。

 2つめは、築年数が比較的浅いもの。2012年以降に建てられたものです。

「2011年に起きた東日本大震災では、多くの建造物に被害が出ました。そこで、建物の耐震に加え、免震構造を取り入れる建築物も増えてきました。もちろんそれまでのマンションでも免震構造を取り入れている物件はありましたが、不動産を購入する方が、それまで重視していた間取りや広さに加え、この免震・耐震構造を気にするようになったと言われています。それに呼応するように、耐震・免震のグレードも上がったと言えるでしょう」

 3つめは、2007年以降に建てられたもの。

「記憶に新しい方も少なくないでしょうが、2005年の年末に、マンションの耐震偽装問題が大きく報じられました。それ以前にも何度か耐震偽装事件はありましたが、この事件は社会的なインパクトも大きく、偽装されたデータによって建てられたマンションにはひびが入ったり傾いたりしていました。その結果、2007年に建築基準法が改正され、基準値を満たしているかどうかの確認手続きが厳格化されました。

 また、エレベーターが付いているマンションも多いですが、高層階に住みたいとなれば、エレベーターは必須。ですから、そうした面でも安心感は高いと言えます」

 そして最後は、それよりも前に建てられたマンションです。

「古いマンションは価格も安く、フルリノベーションをする素材としてはとても魅力的です。しかし、いくつか注意すべきポイントがあります。まずは、耐震工事がなされているかどうか。建築基準法の耐震基準は1981年に大きく改正され、それ以前を旧基準、それ以降を新基準と呼んでいます。旧基準では震度5弱程度の地震を想定、新基準では震度6を超える地震でも倒壊しない、という考え方で設定されています」

 ただし、現在では古い建物でも耐震化の工事が施され、外装のリフォームなど、さまざまなメンテナンスが入っていることがあります。そうした基本的な性能やメンテナンス、耐震化工事の有無をきちんと確認しましょう。

「そして、3つめの区分けでも触れましたが、エレベーターの有無は案外重要なポイントです。若いご家族ならいいでしょうが、ある程度年齢を重ねた方は、3階、4階の部屋でも上がるのは大変です」

 さらには、古いマンションの場合、インターネットが普及する前の物件がほとんどです。また、現代に比べて、電力の容量なども少ないことがあります。

「電気の容量を増やせないと、各部屋にエアコンを設置することなどが難しくなります。そうしたこともしっかり確認しましょう」

 リフォームで広い部屋にした場合、できれば200Vの電源が引けた方が、使えるエアコンや洗濯機の幅が広がります。自分がどういう暮らし方をするかを考えながら、そのポイントを押さえて部屋を選んでいきましょう。

 次回は、リノベーションのプランニングから設計・施工・完成までの流れと、ポイントについて伺います。

≪お話を伺った方≫

柳澤和孝さん

有限会社ますいいリビングカンパニー 高崎分室主宰。フェリカ建築&デザイン専門学校卒。新築物件から戸建て、マンションのリノベーション、店舗のインテリア設計まで幅広く手掛ける。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
写真◎ますいいリビングカンパニー提供、Shutterstock

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