「おうちパン」に挑戦! 第5回

憧れのパン・ド・カンパーニュを土鍋で!

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 フランスの「パン・ド・カンパーニュ」は「田舎風パン」という意味です。でも、実は田舎でつくられたものではなく、パリ生まれだといわれています。パリ郊外で昔からつくられていたパンを元に、粉・水・塩・イーストだけでできる素朴なパンを焼くようになったそうです。

 このパンは「リーン系」といわれます。
 油脂や玉子、牛乳などを使ったコクのあるパンをリッチ系と呼び、その反対にシンプルな材料で作ったものをリーン(薄い・簡素な)系と呼ぶのです。フランスパンと呼んで思いうかべるバゲットなども、典型的なリーン系のパンです。

 さて、このカンパーニュ、基本は「強力粉」または「準強力粉」を使います。今回のシリーズでは準強力粉の「リスドォル」を使っていますから、ここでもそれを使いましょう。国産の「ハルユタカ」などもいいと思います。

 ただし、それだけだと、思い描くカンパーニュよりも軽く仕上がります。実際フランスでは、全粒粉を加えることが多いので、これに倣いリスドォルに全粒粉を一部混ぜて使います。

 このほか、ライ麦を混ぜるレシピもあります。何度か作ってみて慣れてきたらいろいろトライしてみましょう。中にドライフルーツやナッツなどを入れるのも面白いと思います。

モルトパウダーとは?

 小麦・水・塩・イーストのみでつくるリーンなパンといいましたが、今回は「モルトパウダー」を使います。
 モルトとは麦芽のこと。パンを発酵させるときに、リーン系のパンは小麦のデンプンが分解されるまで、イーストの食べものがありません。そこで、イーストの働きをよくするために少しの砂糖を加えたりしますが、砂糖を加えると「リーン系」とはいいにくくなります。

 そこで、砂糖の代わりにモルトパウダー(麦芽糖を粉にしたもの)やモルトシロップ(麦芽糖のシロップ)を加えるのです。
 麦由来の材料ですから、これなら立派なリーン系のパンになります。

 モルトを加えた生地は、砂糖を加えたものより、焼き上がりの香りがよくなります。
 また、焼いたときの色も深くなり、生地そのものの扱いもよくなります。

土鍋を使って焼き上げる

 パン・ド・カンパーニュは、発酵の時に「バヌトン」と呼ぶ専用のカゴを使います。仕上げの発酵時に生地の重みでパンが潰れてしまうのを避けるのが主な目的です。カゴの目が模様として生地に付くのも魅力です。

 けれど、バヌトンを用意しなくてもカンパーニュは焼けます。「土鍋」を使えばいいのです。小さめの土鍋は100円ショップでも買えますし、冬ならば湯豆腐、春先なら「春野菜と酸菜の土鍋蒸し焼き」 など、さまざまな料理に使える鍋です。

【材料】(カンパーニュ1個分)

  • 強力粉
    240g
  • 全粒粉
    90g

  • 6g
  • モルトパウダー
    小さじ1(3g)
  • ドライイースト
    小さじ1/3(1g)
  • ぬるま湯
    230ml

1:生地を作る

 30~40度のぬるま湯にイーストを溶き、モルトパウダーを加えてかき混ぜます。
 強力粉、全粒粉、塩を合わせてふるいにかけ、ボウルの中でイーストを溶いたぬるま湯を少しずつ加えて行きます。

 中央にドライイーストを溶かしたお湯を少しずつ入れ、ヘラなどで周りから粉をかぶせていくようにして、全体を混ぜます。全体に水分が回るくらいまで、ボウルの中で捏ねましょう。小麦粉が水分を吸って、だんだんなめらかになります。

2:生地を徹底的に捏ねる!

生地の端を持ってたたきつけます。生地の自重で長細くのびます。テレビなどでパン屋さんがバンバン生地を叩きつけているのと同じ意味合いの作業です。

 板やシリコンシートの上に生地を出し、のばすように捏ねます。この捏ねでグルテンをしっかりつくることで美味しいカンパーニュになります。最低でも15分くらい、頑張って捏ねましょう! 台の上に叩きつけたり、上から手のひらで押さえつけてのばしたりしながら、ひたすら捏ねると、表面がなめらかになってきます。

 生地を指で押すと跳ね返すような弾力が出たら、捏ねは終了。発酵に移ります。

3:一次発酵

 ボウルやオーブンシートを敷いた土鍋に生地を入れ、乾かないようにラップをします。オーブンに発酵機能があるときは、30度くらいの温度で45分くらい発酵させます。発酵機能がなくても、温かいところにおいて1間程度発酵させれば大丈夫です。発酵時間は温度やイーストの状態で変わります。時間よりも、生地の大きさや状態で判断しましょう。

4:パンチング

 土鍋から出し、まわりから生地をおさえ、ガスを抜きます。再び生地をまとめ、土鍋に入れてラップをして発酵を続けます。このとき、生地の表面が乾いているようなら、霧吹きで水分を少しかけるといいでしょう。

 パンチングをきちんとしないと、パンの中に大きな空洞ができたり、膨らみ不足や膨らみすぎが起きたりします。

 2度のパンチングの後、生地が倍くらいに膨らみ、指で穴を開けても塞がらないくらいまで発酵させたら、一次発酵終了です。

5:二次発酵

 打ち粉をした台の上に生地を置き、軽く手のひらで押さえ、ガス抜きをします。
 手にも打ち粉をして、平たくなった生地をまわりから織り込んで真ん中にまとめたらひっくり返します。

 くしゃくしゃにしたオーブンシートを敷いた土鍋と同じ大きさのどんぶりやボウルなどの中に置き、生地に触れないように濡れ布巾をかぶせます。バヌトンを持っている方は、ここで使いましょう。

 ここからが二次発酵です。温度にもよりますが、25度くらいの室温なら1時間〜1時間半くらいを見てください。生地が膨らんで1.8〜2倍くらいになったら終了です。

6:クープを入れる

 カンパーニュにはたいてい十字の切れ目が入っています。これはクープといって、カミソリやナイフなどで生地の表面に浅く切れ目を入れることでできるものです。
 深さは1cmくらいがちょうどいいと思います。切れ目を入れる前に、上から軽く粉を振ってもいいでしょう。切れ目に刷毛などで油を塗ると、焼いたときに綺麗に裂け目ができます。慣れてくると、クープで模様を描けるようにもなります。

7:焼く

 オーブンまたはオーブントースターに、蓋をした土鍋を入れ、最高温度で予熱をします。オーブンによっては200度までしか上がらないものもありますが、やや膨らみが小さいだけで、きちんと焼けます。土鍋そのものを熱々にすることで、生地を入れたときに温度が下がりにくくなります。

 しっかり予熱をしたら土鍋を取り出し、オーブンシートごと生地を土鍋に入れ、蓋もして200~220度で5分焼きます。蓋を外したら180~200度で焼きます。焼き時間は30分を目安に。

 オーブントースターの場合、庫内の高さが足りない機種もあります。その場合、少し潰して高さを抑え、オーブンシートを敷いた天板の乗せて焼くと良いでしょう。

8:焼き上がり!

土鍋は熱いので必ずミトンなどを使って出しましょう。今回はあえて200度までしか上がらない古いオーブンレンジで焼いてみました。それでもバッチリ焼けますよ!

 パン・ド・カンパーニュは大変そうな気がしますが、さほど難しくはありません。上手に焼けると本当に香りが良く、味わい深い美味しいパンです。シチューなどに添えてもいいですし、サンドウィッチにしても楽しめます。

 カンパーニュがうまく焼ければ、もうパン作りを「得意」だと自慢してもいいでしょう。焼きたての美味しいパンを楽しんでください!


レシピ考案・文・撮影◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

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