今のうちに! 真夏の暑さ対策[第1回]

暑苦しい部屋。原因は「日差し」と「熱の流入」

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断熱すれば万事解決?

 家の断熱対策や省エネ性能というと、冬の寒さ対策を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、蒸し暑い夏がくる日本においては、「暑さ対策」も非常に重要です。

 とはいっても、ひとつの家で暑さと寒さの両方に対応することができるのでしょうか。

 二重構造のタンブラーで考えてみると、ホットの飲み物はずっと熱く、冷えた飲み物はずっと冷たく飲むことができます。
 同じように断熱性能が高い最近の建物であれば、夏は涼しく、冬は暖かく過ごしやすい空間だといえそうです。

「その考えは一面では正しく、もう一面では間違っているといえます。夏の場合は部屋の断熱だけではなく、日差しをカットすることも重要です」

 そう語るのは、LIXIL Housing Technology サッシ・ドア事業部の小林貴明です。

「たしかに、密閉して家の外と中の温度差による影響を抑えることで、夏は外からの熱を伝えないように、冬は暖房で温めた部屋の熱を外に逃がさないようにするという面では、断熱はとても重要な要素です。

 けれども、夏の冷房時、室外から流入する熱の約7割は、窓などが侵入口となっています。そのため、室内の温度上昇を抑えるには、窓まわりの日差し対策をしっかりとすることが大切でしょう」

最大のポイントは「窓」

 窓から入ってくるのは、外気の熱だけではありません。真夏に窓から差し込む直射日光が、室内の温度をどんどん上げていくのです。

「南側の窓から入る夏の日差しは、部屋の温度を40℃くらいまで上げてしまうことがあります」

 熱気がこもった部屋を、一般的に快適だといわれる28℃くらいまでエアコンの力で下げるのは、電気代が高くついてしまうでしょう。もちろん、夏でも涼しい家にしたいからといって、窓を無くすわけにはいきません。

「窓は外から光を取り込むという大切な役割がありますし、冬の寒い時期は、特に南側の窓から入り込む日光が家の中を暖かくしてくれます。この窓から伝わってくる熱と光をうまくコントロールすることで、夏は涼しく、冬は暖かい家にすることができるんです」

 つまり、夏は日差しを部屋の中に入れないことが、過ごしやすい部屋づくりの秘訣ということ。

「ですから、日差しをカットして、部屋の中をできるだけ暑くしないことが重要です。南側の窓だけではありません。夏の西日は高度が下がるので、西側の窓から部屋の奥まで太陽の光が入ってきます。

 また、周囲の建物などによって程度は異なりますが、東側の窓からは夜明けの直射日光が差し込みますから、暑さで目が覚める、ということもあるでしょう」

 窓以外からの熱の侵入も、見逃せないポイントです。

「築古のマンションや、コンクリート打ちっぱなしの建物などは、蓄熱効果が高いといわれています。日中の太陽光で壁が熱を持ち、夜になって気温が下がっても、溜まった熱が部屋の中に伝わってくることもあるんです。夜でもエアコンをかけていないと寝苦しいのは、こうした原因もありますね」

 適切な対策を施すことによって、夏は涼しく、冬は暖かい部屋を実現することができそうです。夏の暑さを軽減するためには、特に日差しに注意することが必要なようです。

 次回は、日常生活の中でできる暑さ対策について、具体的に聞いていきます。

≪お話を伺った方≫

小林貴明(こばやし たかあき)

LIXIL Housing Technology サッシ・ドア事業部 窓まわりSBU SBU推進室 推進G グループリーダー。日射遮蔽や窓リフォームなど、窓の安心・快適・省エネにつながる窓まわりの商品企画に携わり、現在は「安心・快適な住まい」「脱炭素社会」に向けて窓まわり商品の重要性を伝え、世の中に普及・浸透をすすめている。

取材・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

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