エネルギー高騰に負けない省エネライフ[第4回]

電気・ガス会社「乗り換え」はあり?なし?

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電力・ガスの自由化とは?

 電気やガスの契約会社の乗り換え(切り替え)が一般的になったのは、2016年に電力、2017年にガスの小売り自由化がスタートしたことにあります。エネルギーの価格が比較的高いといわれていた日本の電力料金を下げる意図で取られた政策です。それまで家庭や商店用の電力は、東京電力など地域ごとに区分けされた9つの電力会社だけが販売していましたが、「新電力」と呼ばれる電力販売会社が参入し、自由化によって一般家庭は契約する電力・ガス会社を自由に選択することができるようになりました。

 ただしプロパンガスに関しては、もともと自由化されていました。この一般家庭向けの自由化がスタートしたことで、さまざまな企業が電力・ガスの販売に乗り出し、個人向けにいろいろなプランが登場しました。

 各社、電力とガスをまとめて契約すると割引になるプランがあります。従来の電力会社やガス会社は、新電力に比べて経営が安定していることがメリットのひとつでしょう。また、料金の安さだけでなく、自然・再生可能エネルギーを中心にした電力会社もあります。環境問題に関心がある方はそうした会社を検討してみるのもいいかもしれません。

今すぐ「乗り換え」はお得になるか?

 しかし、和田さんはこの冬の請求額が上がったからといっていきなり電力会社やガス会社を乗り換えるのはあまりおすすめできないと言います。

「各社の価格が変動しているのは、この社会情勢によるエネルギー価格急騰によるものです。中には安くなるプランのはずがむしろ高くなっているケースや、この急騰で新規受付を停止している会社もあるようです。

 2022年4月時点で、事業を撤退した新電力会社は31社、うち14社が倒産。2023年1月段階では、原油や天然ガスの価格高騰やコロナ禍の影響も受け、146社が事業停止や倒産しています。乗り換える際は、経営の安定面に注意が必要です」

乗り換えるならきちんと下調べを

 スマホやPCで、電気料金やガス料金がどのくらい安くなるかシミュレーションできるサイトもたくさんあります。どんどん高騰する電力やガスの小売単価が反映されているかを確認した上で、そういったサービスを利用するのもいいでしょう。

 また、契約する会社によっては、さらに別の会社に乗り換えるときに違約金を支払わなければいけない場合もあります。

 春先は転居をしたり、お子さんが進学や就職などで家を出たりすることが多い季節です。それをきっかけに電力やガスの切り替えを検討する方も少なくありません。引っ越し業者が新電力を勧めてくるケースもあります。

「そのときに簡単に契約をせず、きちんとシミュレーションをしましょう。一人暮らしの場合、ほとんど料理をしない、家にあまりいないということもあります。また、家族が減ったことで電力やガスの使用量が減るのかどうかもきちんと見極めるほうがいいでしょう」

使用量をしっかり把握しよう

 かつては、電気やガスの使用量は請求書の明細、引き落とし額やクレジットカードの支払い明細で漠然と見ていただけでした。しかし、現在では国内の9割以上で電気のメーターはスマートメーターに変わっています。また、都市ガスも2000年代中盤にはマイコンメーターというスマートメーターに切り替わっています。

「スマートメーターになることで、電力会社はオンラインで使用状況が把握でき、災害時の供給停止なども含め、安全性が向上したと言えるでしょう。同時に、スマートメーターは電力の消費状況を確認できるメリットもあります」

 各電力・ガス会社のwebサイトでは、それぞれの使用状況を確認できます。月別、週別、日別、時間別などの使用状況、また昨年の使用量や料金の比較もできます。

「オール電化のご家庭に多いと思いますが、HEMSという追加設備を設置すると、自宅に設置したモニターやスマホ、PCなどでリアルタイムの電力使用量を確認できます。我が家も今はオール電化の戸建てで、このシステムを導入することで節電意識がいっそう高まりました」

 契約を見直すときは、具体的なデータを基に考えると、よりきめ細やかなプランニングができますね。

契約中の会社にもさまざまなプランが

 和田さんは新電力・ガスに乗り換えることを検討する前に、まずは現在契約中の会社のプランを見直すことがお勧めと言います。

「電力・ガスの自由化をきっかけに、従来の電力・ガス会社も新電力も、さまざまな家庭に応じて多様なプランをつくりました。また、オール電化の家は従来の電力と違う料金体系なので、プラン内容を改めてきちんと見直してみるのもいいでしょう。

 携帯キャリア系の新電力は、料金に応じてポイントのキャッシュバックもあります。従来の電力・ガス会社も独自のポイント制度があり、中にはほかの決済サービスの電子マネーに交換できるものもあります。それ以外にも、政府主導で導入されたサービスで、前年より電気の使用量が少なければポイントがもらえるといったプログラムもあります。あまり知られていないサービスもいろいろあるので、自分に合ったプランをぜひ探してみてください」

 中には電気やガス代が安くなるという宣伝文句を大きく謳っているものの、実際はそうならないケースもあります。きちんとご自分の使用状況や契約プランをチェックして、長期的な視点を持ちながら「乗り換え」を検討してみましょう。

 次回は最終回。最も省エネに効果がある「おうちの断熱」について伺います。

≪お話を伺った人≫

和田由貴さん

消費生活アドバイザー、節約アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱。『和田由貴のシンプル節約術』『快適エコのライフスタイル冬の省エネ生活』などの著書がある。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)