
電力と同様、欠かせないエネルギーが「ガス」です。昨年末の東京都の消費者物価指数では、電気料金は26%程度の値上がりだったのに比べ、ガスはなんと36%もの値上がりになっています。今年1月の請求額を見てあまりの高さに驚いている方も多いのではないでしょうか。ガス料金を抑えるためには、どんな対策をすればいいのでしょうか。消費生活アドバイザーの和田由貴さんに、具体的な方法を伺っていきます。
電気に比べ月の料金が低いことや、使用量を把握しづらいこともあって、ガスの節約は見落とされがちでした。しかし昨今のガス代の高騰で、どうしたら節約できるのかという関心が高まっています。
「家庭の中で最もガスを使うのはお風呂です。ガス使用量の7~8割といわれています。そこを効率的にすることで、ガス代はかなり抑えられます」という和田さん。
「最近はシャワーだけですませる方も少なくないですが、シャワーはけっこうお湯を使います。シャワーの時間を減らせば節水になりますが、流しているのは給湯器で加熱しているお湯です。つまり、シャワーの時間を短くするほどに、水だけでなくガスの使用量も節約できます」
ある研究論文によると、シャワーの使用時間の平均値は、夏は7分55秒、冬は9分43秒だそうです。浴槽にお湯を溜めて入浴する場合は、シャワーの使用時間の平均値は5分以下。冬は約2倍の時間、シャワーでお湯を流していることになります。また別のアンケート調査では、女性の場合、髪が長いなどの理由もあり、浴槽で温まってからでも10~20分シャワーを使用するケースが少なくないのだそうです。
「冬季は浴室が寒く身体も冷えていますから、温まるために当然シャワーの時間も長くなるでしょう。一般家庭の浴槽では約200Lのお湯を使用します。シャワーは、節水タイプではないシャワーヘッドの場合、毎分10~11Lのお湯が出るので、20分使用すると200~220Lのお湯を使うことになります。浴槽にお湯を溜めてゆっくり入浴し、身体や髪を洗うためのシャワー時間を短くすることで、給湯器を使う時間を短縮することにつながります。一人暮らしより、2人、3人と家族の数が増えるにつれ、お湯の使用量は減らせます。
また、リクシルでもラインナップされている節水型のシャワーヘッドに替えるのもいいでしょう。手元にスイッチが付いているものなら、シャワー中でもワンタッチでお湯を止められるので、より省エネ効果が高まります」
浴槽へのお湯の汲み方にもひと工夫あります。
「沸かし・追い炊き機能がある浴槽も、水道から冷水を汲んでから沸かすのではなく、給湯器からのお湯を入れるほうがエネルギー効率が上がります。また、家族が順番に入浴する場合、なるべく間隔を開けないで入るほうが追い炊きをあまりせずにすむので、省エネ度は上がります」
リクシルには沸かした浴槽のお湯が冷めにくい「サーモバスS」という浴槽があります。保温組フタと浴槽保温材のダブルの保温構造になっています。家族が多い方、入浴の時間が家族でまちまちな方などには特にお勧めです。
浴槽をあまり使わずシャワー入浴が中心という方には、浴槽にお湯を張らなくても全身を温められる「ボディハグシャワー」もお勧めです。また、換気乾燥暖房機を使って事前に浴室を温めておくことでシャワー時間を短くすることもできます。
浴室に次いでガス使用量が多いのはキッチンです。
「キッチンでも、肝心なのはお湯を必要以上に使わないことです。最近はシンクの水栓は1レバー式で、冷水も温水も出せる混合水栓が増えてきました。それぞれの水栓をひねるのに比べ、ワンアクションで水を出せるのでとても便利ですが、冷水を出せばいいシーンでも、ついレバーを真ん中にしたまま水を出してしまうことも。自動的に給湯器に火がついてしまい、蛇口からは冷水とお湯が混ざった水が出てきます。もちろん、お湯が必要なときはよいですが、冷水だけでいいのであれば、なるべくお湯を出さないようにしましょう。普段から使用後のレバーを冷水側に寄せておくといいかもしれません」
レバーハンドルをお湯側にひねる際「カチッ」という音と手ごたえがあり、水とお湯の使い分けできて節ガス・節湯になるLIXIL(INAX)エコハンドル水栓。
LIXILの製品でも、一番右に寄せるとクリック感があってうっかりお湯を出さずにすむ混合水栓があります。
また、節水の王道といわれる食洗機の導入も、手洗いに比べてはるかに少ない量のお湯で洗うため、電気やガスの消費量を抑えられます。
「食洗機は手洗いに比べて、水の使用量がぐんと抑えられます。ということは、バスルームのシャワーと同じようにガスの使用量も減ることになります。ぜひ導入を検討されるといいのではないでしょうか。食器洗いの手間も減って楽になりますよ」
浴室やキッチンでお湯を使う時間をセーブすることは、省エネだけでなく節水にもつながります。家計へのプラス面と環境への配慮の両面で有効ですから、ぜひ取り組みたいですね。
次回は、電力・ガスの自由化など、お得な電気やガスの選び方、使い方について伺います。
消費生活アドバイザー、節約アドバイザー、家電製品アドバイザー、食生活アドバイザーなど、幅広く暮らしや家事の専門家として多方面で活動。快適と節約を両立したスマートで賢い節約生活を提唱。『和田由貴のシンプル節約術』『快適エコのライフスタイル冬の省エネ生活』などの著書がある。
文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)