台風対策は早め、早めに![第3回]

集合住宅の台風対策

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戸建てとは違う被害が起こる集合住宅

 構造的に強度があり、台風の風で屋根が飛んだり、崩壊する危険性はほとんどない集合住宅。高層階は特に飛来物の被害も受けにくそうで、台風がやってくるからといって特段の対策をしない方も多いのではないでしょうか。

 しかし、近年の台風は大型化するケースも多く、しっかりとした対策を施しておいた方が安心です。
 高層階でも、決して油断はできません。近畿地方を中心に甚大な被害を出した2018年9月の台風21号では、大阪のマンションの8階にスレート材が飛来、窓ガラスを打ち破って、破片が当たった女性が亡くなられるという痛ましい被害も出ています。

 高層階は周囲に遮蔽物がなく、風も強くなる傾向があります。「もしも」の時を考えて、きちんと対策をしておくことが肝心です。

マンションには雨戸がない

 多くのマンションには「雨戸」がありません。その理由は、なくても台風に強いからではなく、何かあったときにそうした部材が飛ばされて危険だからなのです。

 戸建ての場合、雨戸を閉めることで簡単に安全性を高められますが、マンションの場合は規約で後付けの雨戸をつけられないケースがほとんどです。

 そこで有効なのは「窓の養生」です。

 台風の予報を見て、勢力が強いようであれば、窓に段ボールなどを貼って保護をします。ただし、左のイラストのように、家の外側に貼ると、段ボールが風で飛んでしまう危険性があります。養生で飛来物から窓を守るというよりは、もし何かが飛んできて窓が割れた場合にも、破片や飛来物でけがをしないためのものと考えてください。
 同じような考え方から、台風が接近しているときは、なるべくカーテンを閉めるといいでしょう。

 また、網戸がある場合は、網戸にがたつきがないかも確認してください。

ベランダを片付ける

 飛来物からの保護とともに、しっかり対策をしておきたいのは「自宅からものを飛ばさない」ということです。

 収納スペースが限られているマンションでは、ついついベランダにいろいろなものを置いてしまいがちです。椅子やテーブルを置いて、おうちカフェを楽しまれている方も少なくないと思います。

 しかし、ひとたび台風がやってくると、ベランダに置いたものが強風であおられて飛んでいってしまう危険性があります。
テーブルや椅子は、折りたためるものはたたみ、ひもなどで固定するか、低いところに置いて飛ばないようにします。部屋の中に入れられるなら入れる方がいいでしょう。

 ベランダの手すりなどにかけてある植物のハンギングバスケットはもっとも危険です。外して、下に置きましょう。同様に、エアコンの室外機の上などに置いた鉢植えなども下ろし、できれば部屋の中に置く方がいいでしょう。

 意外に見落としがちなのが物干し竿です。最近のマンションは手すりなどの低い位置に物干し竿を通すことが多いのですが、少し前の物件だと、屋根部分にかけるタイプもあります。どちらも、物干し竿はハンガーから下ろしてベランダの床の上に置くといいでしょう。

 また、マンションのベランダは、火事などが起きた場合、隣室との間の隔壁を破って隣室のベランダに避難できるような構造になっています。これは、裏返せば、案外強度がないということです。もしそこに亀裂などがある場合は、強風で割れて飛んでしまうことも考えられます。台風が来る前に確認をしましょう。もちろん隔壁前には物は置かないというのが原則です。

ベランダの排水まわりを掃除する

 ベランダに雨が吹き込むことを考えて、室外機まわりや排水口まわりを掃除することも重要です。吹き込んだ雨がうまく排水されないと、エアコンの室外機が水に浸かったり、最悪の場合、溜まった雨水が室内に流れ込んだりと、思わぬトラブルに発展することがあります。

 ベランダの床にウッドパネルなどを敷いている場合は、その下にゴミなどが溜まっている場合もあります。

駐車場・駐輪場も注意

 最後に、室内とは別に、駐車場や駐輪場についても確認しておくと良いでしょう。
 クルマを停めてある場所の周囲は飛来物から守られているか、また周辺が冠水した場合、クルマを水没から守れるか、普段から確認しておくことが肝心です。

 また、駐輪場に停めた自転車も、風でなぎ倒されて破損する可能性もあります。高価なモデルの場合、最悪を考えて室内に移動できるならした方がいいでしょう。最近増えている電動アシスト自転車などは、バッテリーが外せるなら外し、自転車カバーをしっかりと固定してかけましょう。

 次回は、台風に備えて用意しておく食料や防災グッズについて見ていきます。


文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
イラスト◎とりやま忠治

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