新時代の花粉症対策[第3回]

花粉の屋内侵入はこう防ぐ!

空間
その他
関心
健康季節悩み

窓を開けない、という選択肢

 花粉症がひどい人が最も注意すべきことの一つが、家の中に花粉を持ち込まないことです。けれど、コロナ禍では換気のために窓を開ける家庭が増えています。以前ご紹介したように、換気しながら花粉症対策をする方法もありますが、窓を開けるとどうしても花粉は入り込みます。

 埼玉大学の王青躍教授は、次のようにアドバイスします。
「外からウイルスを持ち込まないことに重点を置き、感染対策を徹底することで、自宅では換気をしないという選択肢もあると思います。花粉もアレルゲン物質もウイルスも入り込まない家にするのです」

 千代田漢方内科クリニックの信川益明院長も、「コロナも花粉も家の中に持ち込まないことが最大の防御策」だと言います。

「そのためには、玄関で徹底的に花粉を払い落とすことが肝心です。コートや帽子、カバンなど、外で花粉にさらされたものは玄関に起き、部屋の中に持ち込まないことです。また、帰ってきたらすぐに手や顔を洗い、うがいをすると良いでしょう」

 玄関に空気清浄機を置くのも有効です。リビングやキッチンに花粉を入れないことで、安心して室内ノーマスクの生活が送れます。

 また、外に着ていくものは、静電気が起きにくいものを選ぶことが重要です。素材の組み合わせによっても静電気が発生しやすいのですが、花粉は静電気によっても付着するので、服選びは重要だそうです。

空気清浄機は性能表示を確認して

 王教授は「換気をしない生活を選択するのなら、ウイルス除去可能な高性能の空気清浄機は不可欠」と、玄関のほかリビングや寝室にも空気清浄機を置くことを勧めます。

 ところで、空気清浄機は方式も価格もまちまちです。どんなものを選べば良いのでしょうか。

「HEPAフィルターなどを採用したものが良いでしょう。飛散直後の花粉は40μmと言われますが、都市部ではさらに小さくなります。花粉と反応して微細なアレルゲンを発生させるPM2.5は2.5μm、排気ガスなどの汚染物質はそれ以下です。コロナなどのウイルスも0.3μm程度ですから、ウイルス除去率の高さを謳っているものなら、花粉症対策でも良い仕事をすると思いますよ」

 その上で、国産のものをお勧めしています。

「これはあくまでも個人的な見解ですが、市販の空気清浄機の中には、ウイルス除去を謳っていても性能的に疑問を抱くものがあります。以前、私が購入した市販製品も、ウイルス除去を売りにしていましたが、どう見ても無理だろうと思ってそのメーカーに問い合わせたところ、翌年、『ウイルス対応』の表記を外したものがありました」

 ウイルス除去性能に関しては、規格があり、国産のものはテストで実証した上で明記されているそうです。宣伝文句を鵜呑みにせず、調べて購入することをお勧めします。

室内の掃除方法にも一工夫を

 王教授は、日常生活を送る際には「花粉を舞いあげないことが大切」だと言います。

「花粉はとても軽く、床に落ちていたとして、人が歩くだけで部屋中に拡散します。室内では、部屋の隅に溜まりやすいのはもちろんですが、毛足の長いカーペットなども花粉をからみ取っています。カーテンも、静電気が起きやすいものは花粉を寄せ付けますから注意しましょう」

花粉シーズンの掃除機の使用は禁物。

 さらに、掃除機の使用は避けるべきだと言います。

「HEPAフィルター採用の掃除機などもあり、花粉も吸い込んでくれると思いがちですが、掃除機が吸い込んだ空気は勢いよく排気され、部屋の中に空気の対流が起こります。花粉のシーズン中は掃除機を使わないのが賢明でしょう。濡れたモップと乾いたモップで床を二度拭きすれば、飛散は抑えられます」

 次回は信川院長に、花粉症の薬選びについて伺います。

〈お話を伺った方〉

王青躍さん

埼玉大学教授。都市大気汚染計測、対策技術、再生可能なエネルギーの研究と同時に、花粉症原因物質の飛散挙動、PM2.5などの大気汚染による花粉症への増悪、花粉や大気汚染対策研究を行う。NHK「おはよう日本」をはじめ、近年110回以上のテレビ番組等に出演・解説。ほか、新聞・学術誌でも研究成果も数多く取り上げられている。

信川益明さん

漢方薬と西洋薬を組み合わせた治療を行う千代田漢方内科クリニック院長。内科一般、漢方全般を診る。アレルギー、皮膚科の治療の評判が高い。医学博士、慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了、慶應義塾大学医学部教授を経て、現職。(一社)日本健康科学学会理事長、厚生労働省委員、(一社)日本健康食品認証制度協議会理事長なども務める。

取材・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)