新時代の花粉症対策[第4回]

花粉症の薬はどう選ぶ?

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西洋薬の基本は「抗ヒスタミン」

西洋薬の花粉症の薬たち。ドラッグストアで買えるもの、病院で処方されるもので、同じ成分でも名前が違っていたりします。

 花粉症で苦しんでいる人が飲むのは、対症療法としての薬です。医師に処方してもらえますし、ドラッグストアでもさまざまな薬が売られています。
 これらの薬について、信川院長はこう言います。
「基本的には、アレルギー症状を緩和する抗ヒスタミン薬です。アレルゲンにはさまざまなものがありますが、ヒスタミンを抑えることで緩和されます」

 連載の第2回で解説したように、抗ヒスタミン剤の中には眠くなるものがありますが、最近は鈍脳が起きにくい「第2世代の抗ヒスタミン」と呼ばれる薬もあります。気になる効き目はどうなのでしょうか。

「眠気の有無と効き目に相関関係があるわけではありません。実際に飲んでみると、どの薬も効く人、効かない人が出てきます。うちのクリニックでは、西洋薬も漢方薬も、患者さんとお話をして背景を確かめ、まず合いそうな薬を処方します。西洋薬できちんと効果が出ればそれでも良いですし、効き目があまり出ないようなら薬を変えます。当然、漢方薬という選択肢もあります」

保険適用の漢方薬

 漢方薬について「効かない」「効果がわかるのに時間がかかる」などと懐疑的な人もいるようですが、実際にはどうなのでしょうか。また、保険適用の漢方薬と、自由診療の漢方薬があるようですが、どう違うのでしょうか。

保険適用の漢方薬。粉末や顆粒状で、あらかじめいくつもの生薬が配合されています。

「西洋薬は、基本的には化学的に合成した薬効成分を製剤しています。つまり、抗ヒスタミン効果がある物質を配合して、それにさまざまな成分を加えているわけです。それがうまく効く人もいますし、あまり効かなかったり、効き過ぎて副作用が出たりする人もいます。対して漢方薬(保険適用)は、生薬からエキスを抽出し、粉末や顆粒、錠剤などにしています。化学合成ではないぶん、強すぎることがないと言えますが、人により効き方もさまざまなのです」

 花粉症で良く出される保険適用の漢方薬には「小青竜湯」など、いくつか名の知られているものもあります。

「これがなかなか難しいんです。というのも、例えば小青竜湯はいくつかの薬効がある生薬をミックスしてつくられるのですが、メーカーによってその配合量に差があります。それぞれのメーカーの薬について、どんな配合がされているのかを考慮して、患者の症状を見て薬を変えたりもしています。ただし、漢方医学が専門ではない病院もありますので、通院しても症状が改善されないようなら、漢方が専門の病院に通院することも必要でしょう」

自由診療でオーダーメイドの処方を

 信川院長の場合、西洋薬で効果がうまく出なければ、さらに話を聞いたうえで、保険適用の漢方薬を勧めるケースもあるそうです。

自由診療で処方される漢方薬。患者に合わせ、さまざまな生薬からその都度調合される。

「西洋薬や保険適用の漢方薬は3割負担なので、費用的にもいいですよね。でも、それでは効かないこともある。そういう人には、自由診療の漢方薬を調合して飲むことをお勧めすることもあります。私のクリニックではすべて生薬で、症状だけでなく、生活習慣など患者さんのさまざまなことを聞きながら、最適と思われる配合をします。『効かなかったらまた別の配合』というように、段階を踏んでその患者さんに最適な薬を処方するというわけです。あくまで保険適用の薬をトライしてみてからという前提で、そういう選択肢もあると思います。」

 生薬での処方の場合、それを煮出すなどの手間がかかるのも、漢方薬が敬遠される理由の一つかもしれません。

「確かに少し手間がかかりますが、習慣化してしまえばそれほど大変ではありません。現在はコーヒーメーカーのような機械で、簡単に作ることもできます」

花粉症のオフシーズンに次の年の準備を!

 対症療法的な薬だけではなく、根本的に花粉症が出なくなるような治療法はあるのでしょうか。

「西洋医学では最近、減感作療法といって、花粉シーズン前に少量ずつアレルゲンを投与し、過敏性を抑える身体にする方法があります。これも、効く効かないは個人差があるのですが、トライしてみるのも悪くないでしょう」

 漢方薬には、対症療法だけでなく体質改善などをして花粉症が出にくくするイメージがあります。

「まさにその通りで、生薬の力を借りて免疫力が強い、アレルギーを起こしにくい身体に改善していくことは重要だとされています。ただし、薬を飲んでいるからどんな生活をしても良いわけではありません。大切なのは薬より、普段の生活習慣です。薬を飲んでいるから暴飲暴食も喫煙も大丈夫というのは間違いです」

 体質改善は、どういうタイミングで行うのが良いのでしょうか。

「減感作療法も、漢方薬での体質改善も、時間がかかる場合があります。花粉の季節が終わってから病院に行って相談するのも良いでしょう。5月末か6月くらいからじっくり取り組めば、翌年の花粉症をある程度は抑えられると思います」

 喉元過ぎれば花粉症のつらさも忘れがちですが、症状が出る前に対処する「未病」の考え方で実践するのが良さそうですね。

 次回、最終回は「アロマテラピー」について伺います。

〈お話を伺った方〉

信川益明さん

漢方薬と西洋薬を組み合わせた治療を行う千代田漢方内科クリニック院長。内科一般、漢方全般を診る。アレルギー、皮膚科の治療の評判が高い。医学博士、慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了、慶應義塾大学医学部教授を経て、現職。(一社)日本健康科学学会理事長、厚生労働省委員、(一社)日本健康食品認証制度協議会理事長なども務める。

取材・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

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