今年の鍋はひと味違う! 第5回

タジン鍋で羊の煮込みをつくろう!

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無水調理ができるタジン鍋

 数年前に、日本でもちょっとブームになったタジン鍋。焼きものの浅鍋で、とんがり帽子のような蓋が特徴的です。本来は素焼きに近い、素朴な陶器製なのですが、弱火で使わないと割れてしまいます。

 そのため現在では、ヨーロッパでも日本でも、この形を模倣して、強火にかけられるものが多数つくられています。金属製のものや、中に蒸し料理をするための内鍋がつけられるものなど、さまざまな調理法に対応した製品も登場しています。

 タジン鍋は、重い蓋をのせることで、食材の水分だけで蒸し煮ができる「無水調理」機能を持っています。ルーツは地中海沿岸、特にアフリカ大陸の北側で日常的に使われているもの。モロッコ、チュニジア、アルジェリアなどの料理には、このタジン鍋が多く使われています。

 そんなタジン鍋を使って、スパイスのきいた羊肉の煮込み料理をつくってみましょう。もちろん、ご家庭では一般的な鍋や土鍋でもつくることができます。でも、食卓にこの鍋が登場して、蓋を開ければ、気分も盛り上がることでしょう。

【材料】(4人前)

  • 羊肉
    300〜500g
  • 小麦粉
    適宜
  • タマネギ
    中1個
  • ニンニク
    2片
  • クミン
    小さじ1/2
  • パプリカ(パウダー)
    適宜
  • コリアンダー(パウダー)
    適宜
  • サフラン
    5〜6本
  • ローリエ
    2枚
  • オリーブ
    12粒
  • ドライフルーツ
    アプリコット・プルーンなど
  • ホールトマト缶
    1/2
  • ローストアーモンド
    適宜(なくても可)
  • ハリッサ
    適量
  • クスクス
    2カップ

  • 適宜
  • バター
    (お好みで)

【作り方】

1:羊肉に下味を付け、焼く

 羊肉は、クセがあるものを好むならマトン、クセがないものを好むならラムを選びましょう。今回はマトンのもも肉の塊を使います。

 お肉屋さんだと、ひとくち大に切ったものがほとんどだと思いますので、それを使ってもかまいません。お値段は少々上がりますが、骨付きのラムチョップでも良いと思います。

 お肉に塩胡椒をしてから、小麦粉をまぶします。タジン鍋にオリーブオイルを入れ、熱してお肉に焦げ目がつくくらい焼いて、別皿に取ります。

2:タマネギとニンニクを炒め、スパイスを

 オリーブオイルを足し、くし形にきったタマネギと皮を剥いて潰したニンニクを炒めます。そこにクミンなどのスパイスを加え、タマネギが半透明になるまで待ちましょう。

3:サフランを加え、肉を戻す

 サフランを加えます。サフランはアヤメ科の花のめしべで、とても高価なスパイスです。今回は、国産のサフランが手に入ったので、それを使います。

 1〜2本、水に入れただけでもしっかり色づき、「サフランウォーター」になります。サフランウォーターを飲んでいると、女性特有のPMSや生理不順などにも、効果があるといわれています。
 ただ、一度にたくさん摂取するのは良くないとされていますから、ほどほどに。

 サフランを入れたら、肉を戻します。

4:トマト缶とオリーブ、ドライフルーツを加え、煮込む

 トマト缶、オリーブ、ドライフルーツを加え、蓋をして煮込みます。

 ドライフルーツは地中海で、肉の煮込みによく使われます。アプリコット、イチジク、プルーンなど、さまざまなものがありますが、今回は甘酸っぱいアプリコットとプルーンを使いました。

 トマト缶はたくさん入れすぎると、その味が強くなってしまうので、控えめに。代わりにフレッシュトマトを2〜3個加えてもいいでしょう。

 タジン鍋の蓋は重さと高さがあるので、鍋の中でうまく蒸気が対流し、無水調理ができます。弱火で、じっくり煮込むことで、おいしく仕上がるのです。

5:クスクスを戻す

 タジン鍋の煮込み料理とセットで食べたいのが、クスクスです。小麦粉を粒状にしたパスタで、地中海沿岸ではお米の代わりに食べられています。フランス料理の「タブレ」というサラダは、このクスクスを使ったものです。

 本来、クスクスは蒸して戻すのですが、もっと簡単な方法を。

 クスクスを器に入れ、ひとつまみの塩と、同量の沸騰したお湯を加えて、隙間がないようにラップをします。そのまま10〜15分置いておくだけで戻ります。そこにバターをひとかけら、加えてもいいでしょう。

6: ハリッサを添えて食卓へ!

 クスクスが戻ったところで、タジン鍋の様子を見てみましょう。煮えているようなら、ソースの味を見て、塩気が足りなければ、少し塩を加えて味を調えます。仕上げに、ローストしたスライスアーモンドをのせると、ぐっと雰囲気が出ますよ。

 カレーのように、クスクスにかけて食べてもいいですし、そのまま食べても、おいしくいただけます。

 おすすめなのは「ハリッサ」という、地中海沿岸で好まれる調味料です。唐辛子やニンニクをベースにしたもので、自分でつくることもできますが、輸入食材店などで瓶入りの商品が売られているので、それを買うのが手頃で良いでしょう。

 爽やかな辛味があるので、トマトやニンニク、そしてもちろん羊の肉にも良く合います。

 5回にわたって、さまざまな鍋をご紹介してきました。どれも、自信を持って「おいしい」と言ってもらえるはず。簡単なのに、家庭料理のクオリティを超えた味わいですので、ぜひ、この絶品鍋を楽しみながら、寒い冬を過ごしてください!


写真◎大西尚明
スタイリング◎吉田千穂
レシピ開発・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

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