
寒い日が続くと、おいしい鍋で身体を温めたいですよね。絶品の鍋レシピ、2回目は、白菜と豚バラでつくる中国の「ピェンロー」。材料もつくり方もいたってシンプル。薬食同源の国、中国の寒い地方から、毎日でも食べたくなる鍋料理をお届けします。
食べ物にちょっとこだわりがあるという方は、「ピェンロー」をご存じかもしれません。
舞台美術家やイラストレーター、作家とマルチな才能を発揮される妹尾河童さんが、日本に広めたことで有名な、中国の鍋料理です。
ピェンローは「扁炉」と書き、実は平たい鍋そのものや、一般的に鍋料理全般を指す言葉。
「中国料理の迷宮」という名エッセイを書いた作家、故・勝見洋一さんに、生前、ピェンローについてお話を伺ったことがあります。「ピェンローという名前の鍋料理が、特別あるわけではない」とのこと。
その勝見洋一さんに、中国では扁炉を使って、どんな鍋料理をたべるのですか、と尋ねたところ、妹尾河童さんとは、少しだけ違うレシピを教えていただきました。ぜひ、本場の味に近い「ピェンロー」を食べてみませんか?
今回は平たい鍋でつくりましたが、ご家庭にある土鍋でも問題ありません。片手鍋や両手鍋でつくり、出来上がりを器に盛って、食卓に出しても良いでしょう。
まずは、干し椎茸を水で戻します。まるごと干したものでもかまいませんが、後にスライスするので、あらかじめ切ってある干し椎茸を買ってくると、手間が省けます。味はさほど変わりません。
まるごとなら、たっぷりの水に入れて冷蔵庫で半日くらい置くと、しっかり出汁も出て柔らかく戻ります。スライスのものなら1〜2時間といったところでしょう。
時間がない方は、ぬるま湯に入れるか、水に入れた干し椎茸を電子レンジで20〜30秒、加熱しても良いでしょう。 このときの戻し汁をたっぷり使いますので、多めの水を使ってください。椎茸はとてもおいしいので、たっぷり使いましょう。
白菜を切ります。どんな切り方でもかまいませんが、幅が広いものなら縦2つに切ってから、2cmほどの幅で切るのが食べやすいと思います。大ぶりに切らない方が、煮たときにとろりと柔らかくります。
白菜を切ったら、鍋へぎゅうぎゅうに詰めます。煮えるとかさが減りますので、多めに入れましょう。ひとり1/4玉くらいは、食べてしまうでしょう!
次はザーサイとショウガです。勝見洋一さんが「絶対に欠かせないよ」とおっしゃったのが、このザーサイ。中国食材店やスーパーなどで買えます。なるべく、化学調味料を使っていないものを選んでください。
最近では、国産のザーサイを薄味で漬け込んだものもありますが、この鍋には、塩ががっつりきいているものが向いています。1パックに4〜5個入って売られているので、余ったらフリーザーバックなどに入れておけば、冷凍庫で長期保存できます。
ショウガもたっぷり使います。新ショウガでも、ひねショウガでもかまいません。たくさん入れることで風味が増し、身体も温まるでしょう。
鍋に入れたショウガは、固くて辛いので食べない人もいますが、スライサーなどで薄く切っておけば、おいしく食べられると思います。
鍋に詰めた白菜の隙間に、ザーサイとショウガを差し込むように入れましょう。
鍋の中に干し椎茸を戻し汁ごと入れます。まるごとの干し椎茸を使う場合は、先に取り出してスライスします。戻し汁は、全体がひたひたになるくらいまで入れてください。
さあ、準備が出来たら火にかけましょう。食卓でカセットコンロを使ってもかまいませんし、キッチンのガステーブルでやっても良いです。最初は強火でも問題ないですが、鍋がくつくつしてきたら、弱火にして蓋をのせ、しばらく煮込みます。
白菜がだんだん煮えてきます。そこで、ごま油をたっぷり回しかけましょう。量はお好みですが、大体50cc〜100ccくらい。食べるときに追いごま油もできます。
最後に、春雨を加えます。あらかじめ水で戻す必要はありません。鍋のつゆを吸って、旨みたっぷりに仕上がります。
蓋をして、弱火で数分待ち、春雨がうまく戻っていれば完成です。
器に具とスープを盛り、お好みで塩と一味唐辛子を。このタイミングで、ごま油を追加しても良いでしょう。
とろとろになった、甘い白菜。干し椎茸やザーサイの食感と味わい、豚肉の滋味深い味、そしてすべてのエキスを吸った春雨のおいしさ。具材も味付けもシンプルなのに、こんなにおいしい鍋が世の中にあるのか、と思わせるレシピです。
次回は、手軽にできる水炊きを、ランクアップさせるレシピをご紹介します!
写真◎大西尚明
スタイリング◎吉田千穂
レシピ開発・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)