誰でも知っている水炊きはとても簡単
水炊きは、鶏肉や白菜、葱などをさっと水で炊いて、ポン酢などで食べる鍋のこと。「寄せ鍋」との違いがわかりにくいですが、寄せ鍋の場合、煮る出汁そのものに、淡く味がついています。
水炊きのルーツは関西といわれ、メインの具材は鶏以外にも牛肉や魚介など、さまざまなものを使っていました。今日では、牛肉を使うものは「しゃぶしゃぶ」、魚介を使うものは「ちり鍋」と呼ばれており、水炊きといえば鶏肉を使った鍋を指すことが多いでしょう。
鶏肉以外には、白菜、葱、水菜やほうれん草など、さまざまな野菜やきのこ類、焼き豆腐などを入れて楽しみます。
九州や中国地方では、鶏のガラなどをしっかり煮込んでとった、白いスープが特徴的。一般的に博多水炊きと呼びますが、ルーツは長崎であるとも伝えられています。江戸時代の料理書では、「南蠻(蛮)料理」として紹介されていますから、鶏白湯でつくった中国の鍋にルーツがあるのかもしれませんね。最近は白湯スタイルのお店が日本中にできていますが、家庭でつくる水炊きは、さっと煮たシンプルで簡単にできるものが多いでしょう。
さて、その水炊き。誰がつくっても同じように思えるのですが、食材の下処理や切り方で、ぐんとおいしくすることができます。そのポイントを見ていきましょう。
【材料】(4人前)
- 鶏もも肉
400〜600g - (むね肉でも可)
- 昆布
1片 - 白菜
1/4玉 - 長ネギ
2本 - 春菊
1/2束 - 焼き豆腐
1丁 - きのこ類
えのき、ぶなしめし、舞茸 - (きのこの種類はお好みで)
- 生椎茸
4枚 - 葛きり
適宜 - 鶏挽肉
100g - ショウガ
1片 - いりごま
小さじ1 - ポン酢
適宜 - 柚子または酢橘
1〜2個
【作り方】
1:野菜の切り方を揃える
鍋ものの野菜は適当に切っておけば良いと思われがちですが、実はその切り方にポイントがあります。
特に白菜を食べやすく切っておくことで、口に入れたときにワンランク上の味わいに。白菜は、葉の柔らかい部分と芯の部分に切り分け、芯の部分は半分の長さに切り揃えてから、繊維に沿って5〜7mmの太さで長細く切ります。
葉の部分も、残っている固い部分に沿うように細切りにして、できるだけ食感を揃えましょう。
白菜に合わせて、長ネギは斜め切りに、春菊なども同じ長さの切り方にします。
口に入れたときの大きさを揃えることで、全体に統一感が出る、というわけです。
きのこ類は石突きを切り落として、ぶなしめじやえのきは小房に分けます。椎茸の傘に飾り切りを入れる人もいますが、それは好き好きで。
2:鶏肉はあらかじめ、皮に焼き目を付ける
鶏肉はひとくち大に切りましょう。むね肉でもかまいませんが、もも肉の方が食べたときジューシーで、スープにコクが出るように感じます。
一般的にはそのまま煮ることが多いと思いますが、ここでひと手間。魚焼き網をガステーブルの上にのせるか、カセットコンロを使ったバーナーで、皮目の部分に軽く焦げ目がつくように焼くのです。
こうすることで、鍋で煮ても皮目の食感や香りが良くなります。
3:鶏団子の種をつくる
ボウルに鶏挽肉と塩をひとつまみ、長ネギの青い部分やショウガをみじん切りにしたもの、いりごま、卵黄を入れて、よくかき混ぜます。とても柔らかい種ですが、スプーンなどで鍋の中に落とすと、ふわっとしてショウガやごまの食感が楽しい鶏団子になります。
4:そのほかの食材も、食感を考えて
葛きりはパッケージに記載してある半分くらいの時間、お湯で茹でて戻しておきます。あまりしっかり茹でてしまうと、鍋の中で柔らかくなりすぎて、存在感がなくなってしまうからです。
焼き豆腐は、あまり大きいと口に入れたときに熱くて食べにくいので、鶏肉より少し小さめのサイズに切りましょう。
5:昆布と水を入れた鍋で炊き始める
鍋に水を張り、昆布をひとかけら入れて、テーブルで火をつけます。沸騰する前に、野菜をどんどん盛り込んでいきましょう。鶏の出汁を出すために、鶏肉も数片いれて煮始めます。
沸騰してきたら火は弱めにして、鶏肉をさらに加え、鶏団子の種をスプーンで落とします。葛きりは、食べる直前に入れれば良いでしょう。
6:さあ、食べましょう!
鶏肉は、あまり煮すぎると固くなります。食べながら、徐々に足していくと良いでしょう。
市販のポン酢で食べてもかまいませんが、酢醤油に今が旬の柚子や酢橘をぎゅっと絞った、即席ポン酢の方が爽やかな香りを楽しめると思います。柚子胡椒やかんずりなどを、お好みで使いましょう。
食べた後には、野菜やきのこ、鶏肉から出たおいしいスープが残りますから、そこにうどんやごはんを入れて締めるのもいいでしょう。
鍋でおなかをいっぱいにしておき、翌日の朝、温め直して朝食スープにするのもおすすめです。塩胡椒で味を整えたら、少し残って柔らかくなった具材が、優しくほっこりします。
次回は、ちょっと変わったポルトガルの海鮮鍋をご紹介します。
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