今年の鍋はひと味違う! 第3回

いつもの「水炊き」をランクアップ!

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誰でも知っている水炊きはとても簡単

 水炊きは、鶏肉や白菜、葱などをさっと水で炊いて、ポン酢などで食べる鍋のこと。「寄せ鍋」との違いがわかりにくいですが、寄せ鍋の場合、煮る出汁そのものに、淡く味がついています。

 水炊きのルーツは関西といわれ、メインの具材は鶏以外にも牛肉や魚介など、さまざまなものを使っていました。今日では、牛肉を使うものは「しゃぶしゃぶ」、魚介を使うものは「ちり鍋」と呼ばれており、水炊きといえば鶏肉を使った鍋を指すことが多いでしょう。
 鶏肉以外には、白菜、葱、水菜やほうれん草など、さまざまな野菜やきのこ類、焼き豆腐などを入れて楽しみます。

 九州や中国地方では、鶏のガラなどをしっかり煮込んでとった、白いスープが特徴的。一般的に博多水炊きと呼びますが、ルーツは長崎であるとも伝えられています。江戸時代の料理書では、「南蠻(蛮)料理」として紹介されていますから、鶏白湯でつくった中国の鍋にルーツがあるのかもしれませんね。最近は白湯スタイルのお店が日本中にできていますが、家庭でつくる水炊きは、さっと煮たシンプルで簡単にできるものが多いでしょう。

 さて、その水炊き。誰がつくっても同じように思えるのですが、食材の下処理や切り方で、ぐんとおいしくすることができます。そのポイントを見ていきましょう。

【材料】(4人前)

  • 鶏もも肉
    400〜600g
  • (むね肉でも可)
  • 昆布
    1片
  • 白菜
    1/4玉
  • 長ネギ
    2本
  • 春菊
    1/2束
  • 焼き豆腐
    1丁
  • きのこ類
    えのき、ぶなしめし、舞茸
  • (きのこの種類はお好みで)
  • 生椎茸
    4枚
  • 葛きり
    適宜
  • 鶏挽肉
    100g
  • ショウガ
    1片
  • いりごま
    小さじ1
  • ポン酢
    適宜
  • 柚子または酢橘
    1〜2個

【作り方】

1:野菜の切り方を揃える

 鍋ものの野菜は適当に切っておけば良いと思われがちですが、実はその切り方にポイントがあります。

 特に白菜を食べやすく切っておくことで、口に入れたときにワンランク上の味わいに。白菜は、葉の柔らかい部分と芯の部分に切り分け、芯の部分は半分の長さに切り揃えてから、繊維に沿って5〜7mmの太さで長細く切ります。

 葉の部分も、残っている固い部分に沿うように細切りにして、できるだけ食感を揃えましょう。

 白菜に合わせて、長ネギは斜め切りに、春菊なども同じ長さの切り方にします。
 口に入れたときの大きさを揃えることで、全体に統一感が出る、というわけです。

 きのこ類は石突きを切り落として、ぶなしめじやえのきは小房に分けます。椎茸の傘に飾り切りを入れる人もいますが、それは好き好きで。

2:鶏肉はあらかじめ、皮に焼き目を付ける

 鶏肉はひとくち大に切りましょう。むね肉でもかまいませんが、もも肉の方が食べたときジューシーで、スープにコクが出るように感じます。

 一般的にはそのまま煮ることが多いと思いますが、ここでひと手間。魚焼き網をガステーブルの上にのせるか、カセットコンロを使ったバーナーで、皮目の部分に軽く焦げ目がつくように焼くのです。
 こうすることで、鍋で煮ても皮目の食感や香りが良くなります。

3:鶏団子の種をつくる

 ボウルに鶏挽肉と塩をひとつまみ、長ネギの青い部分やショウガをみじん切りにしたもの、いりごま、卵黄を入れて、よくかき混ぜます。とても柔らかい種ですが、スプーンなどで鍋の中に落とすと、ふわっとしてショウガやごまの食感が楽しい鶏団子になります。

4:そのほかの食材も、食感を考えて

 葛きりはパッケージに記載してある半分くらいの時間、お湯で茹でて戻しておきます。あまりしっかり茹でてしまうと、鍋の中で柔らかくなりすぎて、存在感がなくなってしまうからです。

 焼き豆腐は、あまり大きいと口に入れたときに熱くて食べにくいので、鶏肉より少し小さめのサイズに切りましょう。

5:昆布と水を入れた鍋で炊き始める

 鍋に水を張り、昆布をひとかけら入れて、テーブルで火をつけます。沸騰する前に、野菜をどんどん盛り込んでいきましょう。鶏の出汁を出すために、鶏肉も数片いれて煮始めます。

 沸騰してきたら火は弱めにして、鶏肉をさらに加え、鶏団子の種をスプーンで落とします。葛きりは、食べる直前に入れれば良いでしょう。

6:さあ、食べましょう!

 鶏肉は、あまり煮すぎると固くなります。食べながら、徐々に足していくと良いでしょう。
 市販のポン酢で食べてもかまいませんが、酢醤油に今が旬の柚子や酢橘をぎゅっと絞った、即席ポン酢の方が爽やかな香りを楽しめると思います。柚子胡椒やかんずりなどを、お好みで使いましょう。

 食べた後には、野菜やきのこ、鶏肉から出たおいしいスープが残りますから、そこにうどんやごはんを入れて締めるのもいいでしょう。
 鍋でおなかをいっぱいにしておき、翌日の朝、温め直して朝食スープにするのもおすすめです。塩胡椒で味を整えたら、少し残って柔らかくなった具材が、優しくほっこりします。

 次回は、ちょっと変わったポルトガルの海鮮鍋をご紹介します。


写真◎大西尚明
スタイリング◎吉田千穂
レシピ開発・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

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