毎日食べたくなる簡単スープ生活[第1回]

一杯のスープで大満足の朝食「ソパ・デ・アホ」

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前日にパッと作って朝は簡単に

 寒くなってくると、1分でも長く布団の中に入っていたいものです。キッチンも寒いのに、だしを引いて味噌汁を作ったり、パンを焼いて目玉焼きとサラダを作り、コーヒーを淹れたりするのは大変です。

 鍋や食器を洗う時間や手間もあるので、つい手を抜いて、買って来た菓子パンひとつで済ませてしまいがち。
 けれど、朝ごはんは、1日の活動に必要な栄養を摂り、特に寒い時期は体も温めてくれる大切な食事。きちんとした朝食を摂らないと、集中力が落ちたり、疲れやすくなったりするのです。

 そこで、前の日に作っておいて、朝はガステーブルで温め直すだけで食卓に出せる、バランスのいいスープはいかがでしょう。野菜をたっぷり入れれば、必要な栄養素を摂ることができます。体も温まって、1日を活動的に過ごすためにぴったりだといえます。

スペインの日常的な朝食スープ「ソパ・デ・アホ」

 スペイン・カスティーリャ地方に「ソパ・デ・アホ」というスープがあります。ソパとはスープ、アホとはニンニクのことです。ニンニクをたっぷり使い、パンを入れて煮込むので、おなかも満たされる料理です。

 たっぷりのニンニクでにおいが心配という方もいらっしゃるでしょうが、しっかり加熱してから煮込んだニンニクは、気になるにおいも少なく、とても優しい味わいです。
 ビタミンB1、B6など豊富な栄養が含まれ、抗酸化作用も高く、昔から「スタミナを付けるならニンニク」と言われていますよね。

 もともとは、裕福ではない羊飼いの食事で、固くなってしまったパンを、煮込むことで食べられるようにした料理だそうです。
 現代でも、買って来たパンを食べきれないことはよくあります。そういったパンを無駄にせずに済むという点でも、サステナブルな料理です。

 もちろん、わざわざ固いパンを使うのではなく、フランスパンでも、ライ麦の入ったパンでも、食パンでもかまいません。
 ナッツやドライフルーツが入ったパンだと、味も複雑になって楽しく食べられます。

ソパ・デ・アホはとてもシンプル

【材料】(4人分)

  • ニンニク
    5〜6粒
  • オリーブオイル
    大さじ2〜3
  • ※感触としてたっぷり、というくらいの量
  • 鷹の爪
    1本
  • 生ハム切り落とし
    50gくらい
  • 水またはスープストック
    約1000cc
  • ※チキンコンソメなどのスープの素を水に溶いても可
  • たまご
    1〜2個
  • パセリ
    適量
  • パプリカパウダー
    小さじ1〜2
  • 食塩
    適宜

 ソパ・デ・アホの材料はとてもシンプルです。
 ニンニクは皮を剥いてスライスします。縦に半分に切り、真ん中の芽を取り除いてからスライスすると、さらににおいが抑えられます。

 生ハムの切り落としは、細かく切っておきます。スペインではハモンセラーノという熟成させた生ハムの端っこなどを使います。具というよりは「旨み」を出すためのものです。別物になってしまいますが、ベーコンやソーセージでもいいでしょう。
 本格的なスペイン料理を作るのではなく、家庭で手軽に美味しいスープを作るのが目的ですから、あまりこだわりすぎずにいきましょう!

【作り方】

 スライスしたニンニクと種を抜いた鷹の爪、たっぷりのオリーブオイルを鍋に入れ、弱火で炒めます。オリーブオイルの量は好き好きですが、たっぷり使った方が美味しくなります。強火だとニンニクが焦げます。

 生ハムを入れ、ニンニクがきつね色になったタイミングで鷹の爪を取り出します。辛いものが好きな方は、唐辛子は入れっぱなしにしてかまいません。 

 さらに、パプリカパウダーを加えます。パプリカパウダーはスペイン料理には欠かせないスパイスで、甘いもの、辛いもの、燻製したものなど、さまざまな種類があります。

 どんなものでもかまいませんが、燻製したものに人気があるようですから、機会があれば手に入れてみると良いと思います。

 スープストックがない方は、水を入れ、そこにチキンブイヨンなどのスープの素を入れましょう。スープの素はあまりたくさん入れすぎない方が、自然で美味しい仕上がりになります。

 パンをちぎって加えます。固いものは包丁で切ってもかまいませんが、手でちぎった方が、食感が良くなります。煮込んでいくと膨れるので、あまり大きくしない方がいいでしょう。軽く沸騰するくらいの弱火で15分くらい煮込みます。
 味を見ながら塩を加えます。ここまでは前の晩にやっておきましょう。

 翌朝、鍋の中はパンがスープを吸って膨れています。もしまったく汁気がないようなら、コップ半分くらい水を入れてから鍋を火にかけましょう。弱火から中火で、あまりぐらぐら煮立てないように温めます。沸騰をしたら、溶きたまごを回し入れ、火が通ったらできあがりです。
 器に装って、好みで胡椒を挽きましょう。

◎できあがり

落としたまごで巣ごもり風に

「もう少し野菜が欲しい」と思う方のためのバリエーションを紹介しましょう。
 ニンニクなどを炒めている時に、ざくざくと切ったキャベツを入れます。その後、水またはスープを入れてさっと煮ます。

 翌日、温め直すときに、溶き卵ではなく、全卵をそのままおとして火を入れます。一人分を小さな土鍋に入れて火にかけても良いでしょう。鳥の巣の真ん中にたまごがあるように見えるので「巣ごもり風」と呼ばれるスープです。

トマト缶でさらにアレンジ

 イタリアのミネストローネのように、トマトを使うのもいいでしょう。水またはチキンストックを入れるときに、まずトマトの水煮缶を入れ、ひたひたになるくらいまで水を加えて煮ます。翌日食べるときにたまごを入れてもいいですが、省略してもいいでしょう。

 ニンニクを炒めるときに、なすやズッキーニ、タマネギなどの野菜を5mm角くらいの角切りにして一緒にいれると、野菜たっぷりのスープになります。

 こうしたスープは「家庭の料理」。レシピを基本にしながら、さまざまなアレンジを加えて、自分ならではの味を作り上げていくのも楽しいでしょう!


文・レシピ◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
撮影◎大西尚明
スタイリング◎吉田千穂

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