
築40年を超えた戸建てに一人で暮らしている木元ヤスヱさんのリフォームのお話を伺いながら、独居高齢者世帯のバリアフリーリフォームについて考えていく連載の第3回は、トイレと浴室についてです。実は、高齢者のためのリフォームで最も重要なのは、この2箇所なのだそうです。
高齢者のためのリフォームで、つい見落としがちなのがトイレです。「手すりを付けておけば大丈夫」と思われがちですが、高齢になるとトイレを使用する頻度が高くなることも多く、そのたびに立ったり座ったりを繰り返すのですから、とても重要な箇所なのです。
「もともと、和式のトイレだったところにかぶせる形で洋式便座を設置していましたが、使い勝手が悪くてちょっと難儀でした。そこで、子どもたちがトイレのリフォームを強く勧めてくれました」(ヤスヱさん)
和式型で段差があるトイレの床面をフラットにしてフローリング材を張り、そこに新たに暖房便座のシャワートイレを設置しました。暖房便座は冬の寒い時期でも暖かく、シャワートイレならば身体も楽に清潔さを保てます。ドアも開き戸からスライド式の引き戸に替えて、出入りも楽にしました。
「高齢者の場合、脚力が落ちてしまい、低めのトイレだと立つのが困難というケースもあります。そうした場合には、補助的な手すりなどを設置して立ちやすくすることもあります」(小西さん)
また、施工後の話ですが、新しいトイレは節水タイプのタンクでした。ヤスヱさんは「小」方向にレバーをひねって、トイレットペーパーを詰まらせてしまうトラブルもあったそうです。最近のトイレは節水型で少ない水でも流せる設計になっていますが、トイレットペーパーを使う場合は「大」の方向にレバーをひねって確実に流すことを徹底するといいでしょう。
洗濯機の横には小さな洗面台を設けました。水栓は、キッチンと同様にシングルレバーの混合水栓を採用しています。
「キッチン同様、こちらも片手で水の出方が調整できるので便利ですね」(ヤスヱさん)
LIXILの製品にも、コンパクトな洗面台やシングルレバータイプの洗面台用水栓がラインナップされています。
ヤスヱさんのお宅は、今回のリフォームでは浴室のリフォームはしなかったそうです。
「実は5年ほど前に浴室のリフォームをしているんです。今のままでも不便はないので、今回は見送りました」(ヤスヱさん)
ヤスヱさん宅の浴室は、浴槽の底を床面より下に設置して、浴槽への出入りが楽に行えるようになっています。埋め込み式の浴槽なのでフチの高さは低めですが、深さは一般的なものです。
LIXILでも浴槽の出入りが楽なバスタブがラインナップされています。
「今回はご要望がなかったので手を入れませんでしたが、高齢の方の家は、浴室をリフォームすることは本当に大切です」と小西さんは強調します。
「古い家の場合、浴室の床はタイル張りなどが多いです。これは冬に大変冷えやすく、寒い浴室はヒートショックの危険性があります」(小西さん)
実は、高齢者の入浴中の死亡者数は交通事故の死亡者数並みだといわれています。その中には、ヒートショックが原因で亡くなる方もいます。冬になると入浴中の死亡者数が増加するというデータもあるので、高齢の方の独居の場合、特に浴室のヒートショック対策を講じたほうがいいといえるでしょう。
「リフォームすれば、暖かく、ヒートショックを起こしにくい床に替えることができます。ユニットバスにしなくても、床だけをそうした材質に替えることもできます」(小西さん)
また、入浴前に浴室を暖めることができる浴室暖房乾燥機などを増設するのもお勧めできます。LIXILでは冷たくない床を備えたユニットバスシリーズもありますので、浴室リフォームの際に検討してみてはいかがでしょう。
次回は、高齢者のためのリフォームの細かいポイントやオーダーの仕方について伺います。
木元ヤスヱさんは千葉県の一軒家に一人暮らし。ヤスヱさんの娘さんの夫である淳一さんは、電車で1時間ほどの距離にお住まい。リフォームの期間は淳一さん夫妻のマンションで一緒に過ごされたそうです。
東京・東駒形の工務店「修繕屋コニー」代表。最近は高齢者のためのバリアフリーリフォームの依頼が増えている。
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文・撮影◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
画像◎Shutterstock