【9月1日は防災の日】災害への備え、見直しませんか[第4回]

自宅の住宅用火災警報器、寿命を迎えていませんか?

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住宅用火災警報器は
10年を目安に交換を!

 煙や熱を感知し、火災の発生を知らせてくれる住宅用火災警報器。実はこの警報器、すべての住宅で設置が義務化されていることをご存じですか。

 2004年、すべての戸建て、共同住宅で住宅用火災警報器の設置を義務化する消防法の改正が行われました。それにより、新築住宅については2006年から、既存住宅については2011年までに各市町村の条例に基づいて設置することが法令で定められました。

 山本さんによると、設置が義務化された背景には、住宅火災による死者の増加があったといいます。

「2003年、住宅火災による死者数が17年ぶりに1,000人を超えました。住宅における防火安全対策を強化するため、電池式の火災警報器をすべての住宅に取り付けることが義務化されたのです」

 消防法が改正された後の動向を見てみましょう。総務省消防庁の調べによると、2020年の出火件数は2010年の74.2%(46,620件→34,601件)、火災による死者数は76.3%(1,738人→1,326人)と、おおむね減少傾向にあります。住宅用火災警報器の普及は、火災件数および死者数の低減に一定の効果をもたらしたといえるでしょう。

 一方で課題も残っています。ひとつは、火災警報器がまだすべての住宅に設置されていないことです。総務省消防庁の調べによると、令和3年6月1日時点での住宅用火災警報器の設置率は83.1%にとどまっています。

 もうひとつが、交換・点検の必要性が認知されていないことです。住宅用火災警報器の多くは電池式であり、約10年で電池切れとなります。電池切れや故障はブザー音で通知されますが、山本さんは「ブザーが鳴っても放置されているケースが多い」と話します。

「住宅用火災警報器は国家検定品であり、電池切れになると『ピッ』というブザー音が1時間に1回程度の頻度で、72時間以上鳴り続けるよう定められています。しかし、新築ではじめから設置されている場合、住んでいる人は警報機の存在を意識していないことが多く、10年以上鳴らなかった警報器のブザー音になかなか気づきません。たとえ気づいても、『10年火事がなかったのだから大丈夫だろう』と放置されがちです」

逃げ遅れを防ぐためにも、定期的な点検を!

 2020年に住宅火災で死亡した人の約7割が65歳以上の高齢者で、死因の約5割は「逃げ遅れ」だという統計があります。今後ますます高齢化が進んでいく中で、より一層の防火対策が必要です。

 防火対策の一環として、「住宅用火災警報器を継続して設置するとともに、交換・点検をしてほしい」と山本さん。

「消防法では、寝室および階段に煙式の住宅用火災警報器を設置することが義務付けられています。その他の部屋についても、各市町村の条例によっては設置が必要な箇所があります。まずはしかるべき場所にきちんと住宅用火災警報器が設置されているか、確かめてください。

 また、いざという時に火災警報器がきちんと作動するよう、この機会に一度、ご自身で点検してみてください。方法は簡単で、本体のボタンを押すか、付属のひもを引きます。正常な場合は、音声やブザー音などの警報音が鳴ります。なお、各メーカーの火災警報器のブザー音は、一般社団法人日本火災報知器工業会のホームページでチェックできます。

 もし鳴らなかった場合は電池が切れているか、故障している可能性があるので、新しいものと交換してください。設置から10年以上経過している場合も寿命が近いので、交換することをおすすめします」

住宅用火災警報器の購入場所、選び方

ニッタンの住宅用火災警報器/煙式の「KRH-B」(左)と熱式の「CRH-B」(右)。高齢者でも聞き取りやすいよう、女性、男性の声で交互に警報が鳴る仕組みになっている。
https://www.nittan.com/download/pdf/J1003.pdf

 住宅用火災警報器は、家電量販店やホームセンター、ECサイトなどで購入できます。取り付けも簡単で、ドライバーがあればDIY感覚で取り付けが可能です。自力での取り付けが難しい場合は、取り付けサービスを行っているホームセンターなどにお問い合わせください。

 なお、住宅用火災警報器には煙を感知する「煙式」と、熱を感知する「熱式」の2種類があります。火災はまず煙が出てから炎を出すため、法令上ではすべての部屋に「煙式」を設置することが義務付けられています。ただし、調理の煙や湯気が出る台所では誤作動が起こりやすいので、各市町村の条例によっては「熱式」の設置が認められている地域もあります。

 住宅用火災警報器は家族と住まいを守る重要な機器。商品の性能、機能を十分理解し、いま一度点検・交換をきちんと行ってください。

【参考資料】

総務省消防庁「令和3年版 消防白書」

www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r3/63931.html

≪お話を伺った方≫

山本浩史さん

一般社団法人日本火災報知器工業会住宅防火推進委員会副委員長。ニッタン株式会社にて、国内事業部および商販事業推進部の担当次長兼特販課長を務める。

文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
画像提供◎Shutterstock

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