ベテラン大工が語る、古い家のリフォーム[第4回]

家づくりにも「サステナブル」を

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大工が見た、新築とリフォームの違い

 新築もリフォームも手がけ、その様子をYouTubeで日々発信している正やんさん。
「仕事としては新築のほうがラク」と言いながらも、「リフォームにも魅力がある」と話します。

「長年暮らした家には、愛着も思い出もたくさんあるでしょう。しかし年月とともに傷んだり、使いにくくなったりした部分も少なくないはずです。そう考えるとリフォームは、価値が20~30くらいに下がった家を100に近づけていく作業なのだと思います。暮らしてみて初めて、『ここが使いにくい』『こうだったらいいのに』と気づくこともあるでしょう。それらを手直しする作業なんです」

木材は時間を経て本当の強さを発揮する

 ところで「SDGs」という言葉が日常的に言われるようになりましたが、家づくりでもサステナブル(持続可能)であることが求められていると思います。
 日々、家づくりの現場にいる正やんさんから見たサステナブルな家づくりとは、どんなものなのでしょうか。

「リフォームで古い建材を再利用するのは、あまり現実的ではありません。わが家のケースでは、木材は基本的に新しいものに入れ替えました。例外が床材の『大引』で、ひとつも傷んでいなかったので再利用しました」

 では、古い家を解体したときに出る「古材」をリサイクルして建築に使うことはないのでしょうか。

キッチンの貼り替えで、床下の太い大引を再利用。

「床を一面貼り替えるとなると、かなりの建材が必要になります。それらをすべて古材でまかなうのは、なかなかできることではありません。古材を使うのは、家の雰囲気づくりのために『ここぞ』という場所に利用するケースがほとんどです。最近は古い家を解体するときも重機でいっぺんに壊してしまうので、再利用しにくいという事情もあります。

 けれど木材は10年、20年と時間がたつにつれて水分が抜けていき、だんだんと強度を増していきます。40年ほどたった木材はそれ以上狂うことも少ないですし、腐ったりシロアリにやられたりしなければ、長く家を支えてくれます」

古い木材と新しい木材のマッチングも大切

 正やんさんのお話を伺っていると、「サステナブルな家づくり」といった場合、木材を再利用するのではなく、「経年変化でゆがんだり傷んだ部分を修正しながら長く使う」と考えたほうがよさそうです。

 最後に正やんさんは、「新築もリフォームも、しっかりした材料を使うことが家を長持ちさせる」と語ってくれました。

キッチンの扉を片引きにするために、古い柱に、色味の違和感が少ない杉の赤身の板材を合わせる。

「しっかりした材料というのは、例えばヒノキでいうと、白みがかって節のない、きれいな木目が通った木材が値段も高く、好まれます。柾目(まさめ)の白太(しらた)といわれる材です。神社を建てるときに求められる材なので、最高位に位置づけられているのでしょう。けれど同じヒノキなら、中心に近い赤身のほうが強度はあります。リフォームでも白太より赤身がおすすめ。古い家の柱や梁は経年変化で色が出てきていますから、そうした空間には赤身のほうがなじみますからね」

 正やんさんのような大工としっかり相談をしながら進めていけば、安心できますね。自分で調べてみることも大切ですが、技術と経験をもった職人に相談することが、いいリフォームへの近道になりそうです。

≪お話を伺った方≫

大工の正やん

大工歴50年のベテラン。数年前から、自分が携わる物件の作業の様子を、新築・リフォーム問わずYoutubeで配信。登録者数64万人。
https://www.youtube.com/@CarpenterShoyan

取材・文◎坂井淳一

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