ベテラン大工が語る、古い家のリフォーム[第3回]

家事ラクで快適! 話題の「間取り」と「設備」

空間
リビング・寝室・居室
関心
建築リフォーム事例

広い共有スペースが、今のはやり

キッチンと畳敷きのリビングは連続した板貼りにしました。

 50年のキャリアを持つベテラン大工の正やんさん。この間、家の建て方は大きく変わってきたそうです。

「昔の日本家屋は6畳、8畳といった部屋がいくつもつながって、それをふすまで仕切っていました。普段はそれぞれの部屋を居間や寝室などとして使用し、家族や親戚が集まる盆暮れ正月などは、ふすまを取り払って一つの大広間にしていました。ところが、家族の人数が減って、家を建てる敷地も狭くなっていったことで、こうした間取りの家はなくなりました。『狭い面積でいくつ部屋を取れるか』といった観点で家を建てるようになり、廊下や縁側を作ることが減ったんです。

 さらに現代では間取りの考え方も大きく変わりました。かつては家族の人数分の部屋があり、さらに居間やキッチンがあり、客間もありました。ところが最近は、家族が全員で集まれる広い空間を一つつくって、そこを中心に生活するような間取りになっています」

 正やんさんの自宅のリフォームも、そうした形に合わせたそうです。

「私の家は全面リフォームではなく、手を入れたのは全体の2割ほど。大きく変えたのはキッチンとリビングです。隣り合わせだった2部屋の間の壁を一部撤去し、一つの空間にしました」

「リビングにあった押し入れも取りはらって木曽檜の板を貼り、テレビ台と収納につくり替えました。キッチンとリビングの間の間口は変わりませんが、ずいぶん広くなったような感じがします」

キッチンは「動線短く」「高く」がポイント

 このときのリフォームで正やんさんが最も力を入れたのが、キッチンのリフォームだったそうです。

 40年前にこの家を建てたときは、若気の至りで壁を黄色いタイル貼りにしたんです(笑)。それも家族に不評だったことと、キッチン自体が5mほどの長さがあって、動線が長く使いづらかったのです。古いキッチンはかなり低く、小柄な妻にとっても使い勝手はよくありませんでした。そこで、動線を短くできるL字型のシステムキッチンに変更。高さも規格の中で一番高いものにしました」

 システムキッチンは、ショールームでいろいろな製品を見ながら決めたのだそうです。

「最初はシンプルなものがいいと思ったんですが、目移りしました。結局、オプションもたくさん付けてしまいました(笑)。でも、高さの確認もできましたし、今のシステムキッチンは収納力も抜群ですね。シンク上の収納も、それまでは戸棚が高くて手が届きにくかったのですが、手が届きやすい高さまで下がるようになり、ものの出し入れもラクです。トップがフラットになったので、掃除もしやすくなりました」

 正やんさんが付けて一番良かったと思ったのは、ビルトインの食洗機だそうです。

「以前は『食器は手で洗えばいい』と思っていましたが、設置してみると本当に便利です。妻も、とても使いやすくなったと喜んでくれています」

 食洗機にはこのほか、節水にもなるというメリットがあります。

古い家で残したいのは「縁側」

 正やんさんは、昔の家にあった「縁側」は、実はとてもいい空間だと言います。

「工法が大きく変わり、軒(のき)や庇(ひさし)を付ける家が減ったこともありますが、縁側は無駄なスペースだと思われて、現代の狭い家ではあまり見られなくなくなりました。けれど縁側は風情もあるし、人が集まるときにものを置けるし、何より部屋と外窓の間に障子を隔てた大きな空気の層があるわけですから、冬はとても暖かいのです。夏も、縁側と深い庇があれば室内に直射日光が入らず、涼しく過ごせます」

 現代の一戸建てでは、庇と縁側の代わりにテラスを希望する方も多いそうです。

「リビングとひとつながりになったデッキテラスは大人気です。木材で依頼されることもあります。ただ、木製のデッキテラスには一つ難点があって、塗装をしていても、釘を打った場所などから雨水などが入って傷むことがあるんです」

 LIXILには腐食に強いデッキも揃っています。また、庇の代わりに、デッキの上をカバーするオーニングもあります。検討してみてはいかがでしょうか。

 次回は、サスティナブルなリフォームについてお伝えします。

≪お話を伺った方≫

大工の正やん

大工歴50年のベテラン。数年前から、自分が携わる物件の作業の様子を、新築・リフォーム問わずYoutubeで配信。登録者数64万人。
https://www.youtube.com/@CarpenterShoyan

取材・文◎坂井淳一

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