毎日、仕事に着て出かけるスーツやお子さんの学生服は、一見汚れていないように見えて、実はとても汚れが付着しています。最近では家で洗えるスーツも増えてきました。1シーズンに1回といわず、気になるタイミングでこまめに洗いましょう。ライオン株式会社のお洗濯マイスター・大貫和泉さんに、適切に洗う方法を伺います。
毎日着るものは毎日消臭・乾燥を
こまめに洗うといっても、スーツや学生服を毎日洗うことはできません。けれど、喫煙をする方のスーツはタバコのにおいが染みついていることもあります。本人は気づかなくても、非喫煙者は不快に感じるものです。
「毎日のお手入れとして、着用後はジャケットとズボン、スカートをハンガーに掛けましょう。このとき、においやしわが気になる場合は『しわ取り消臭スプレー』を使いましょう。
全体的に軽く湿る程度にスプレーし、しわがついた部分はしっとりする程度にスプレーし、斜め、縦、横に軽く引っ張りながら伸ばします。こうすることで、乾燥したときに、しわもにおいも取れて気持ちよく着用できます。目立たないところでシミにならないかを確認してから行いましょう。もしスプレーを使いたくない場合は、アイロンのスチームを当てるのも効果があります。
ジャケットは、型崩れしないように肩の部分にフィットする肉厚なハンガーにかけます。パンツはベルトを着けたまま、裾をパンツ用のハンガーのピンチで逆さに吊すのがお勧めです。ベルトの重みで膝などに寄ったしわもある程度伸ばすことができます」
その上で、定期的に洗うことをお勧めするそうです。
「特に、汗もかきやすい学生の制服などは、週に1回、週末のお休みに洗うのがよいかもしれません。クリーニングに出すのはコストだけでなく、週明けに間に合うか心配もありますよね」
スーツの適切な洗濯のしかた
［1］汚れが気になる部分に洗剤を付ける
ジャケットの袖口や襟ぐりといった汚れが付着している部分に洗剤の原液をつけます。型崩れ防止や洗濯時の色あせ防止効果のあるおしゃれ着洗い用の洗剤をお勧めします。
「基本的にはコートを洗うときと同じ手順です。特に汚れが目立つ部分は、洗剤のキャップや洗濯ブラシ、柔らかいスポンジなどで軽く叩いてください」
［2］たたんで洗濯ネットの中に入れる
型崩れを防止するためにジャケットのボタンはすべて外します。
「ジャケットは、袖を前身頃の上に置き、二つ折りにして洗濯ネットに入れます。パンツやスカートはファスナーを閉めてひだを整え、3〜4つ折りにして別のネットに入れて洗いましょう」
［3］洗濯機なら「手洗いコース」などの弱水流コースで
洗濯機の「手洗いコース」「おしゃれ着洗いコース」「ドライコース」「おうちクリーニングコース」などを選んで洗います。
「縦型でもドラム式でも、洗濯機に入れる際はジャケットを入れてからその上にパンツ・スカートを入れます。重いジャケットを先に入れることで、ズボンやスカートの洗濯じわを防ぐことができます」
☑手洗いをする場合は押し洗いで
コート同様、手洗いをする場合は、洗濯ネットに入れたまま桶や洗面台の洗面ボウルの中で優しく押し洗いをします。洗濯液の温度は30℃以下に。30℃の目安は、液に肘を付けて熱くも冷たくもないくらいの温度です。
［4］すすぎには柔軟剤を
コート同様、すすぎの際に柔軟剤を使います。洗濯機の場合は、あらかじめ柔軟剤の投入口に入れておきましょう。手洗いの場合は、1度目のすすぎを丁寧にしてよく洗剤を落としてから、柔軟剤を加えて2度目のすすぎを行います。
［5］脱水は1分程度
コート同様、脱水は1分程度までの最小限にします。
［6］「お助けタオル」を使って干す
タオルを使うとジャケットの型崩れを防ぐのに一役買う。
洗い上がったジャケットやパンツは陰干しにします。干すときに軽く引っ張るとしわが寄りにくくなります。
「ここできちんとしわを伸ばしておくと、あとでアイロンをかけるときに楽になります。上下、左右、斜め方向に軽く引っ張るだけでOKです」
ジャケットは、コート同様厚みのあるハンガーに干します。もし針金ハンガーしかない場合は、ハンガーの肩の部分にタオルを巻いて厚みを作るといいでしょう。
「また、袖部分にもハンドタオルを重し代わりに丸めて差し込みましょう。こうした『お助けタオル』を活用するとしわも寄りにくく、きれいに干せます」
パンツやスカートは筒状に干すと型崩れを防ぎ、早く乾くそうです。
「空気の通り道ができ、乾きやすくなります。パンツは裾の部分に『お助けタオル』を入れるとしわが寄りにくくなります」
次回は、ダウンジャケットや分厚いアウターの洗い方を伺います。
≪お話を伺った方≫
大貫和泉（おおぬき いずみ）さん
ライオン株式会社のお洗濯マイスター。消費生活アドバイザー、繊維製品品質管理士、健康予防管理専門士などの資格を持つ。洗濯用洗剤などの製品開発・調査に約20年携わり、2児の母親としての経験と研究活動を融合し、主婦・母親・女性目線で日々の洗濯に役立つ情報を伝える。
文・写真◎坂井淳一（酒ごはん研究所）
