「前処理」で生地の傷みを防ぐ
ニットほど頻繁には洗わないものの、クリーニングに出すと料金もなかなか高くなってしまうコート類。大手チェーン店の料金表を調べてみると、ごく平均的なもので2000円ほど、種類や素材によっては3000円、4000円……とエクストラチャージで上がっていくようです。
「ニット製品ほどこまめには洗わないと思いますが、コート類は常に一番外側に着るものなので、汚れやすいのも事実です。一般的にシーズンに1回くらいのクリーニングといわれますが、ニット同様、汚れが気になってきた場合はなるべく早く洗うのがベターです」と大貫さん。
コートはニットより多様な素材が使われています。ポリエステルの混紡、綿100%、ウールやカシミアなど、表生地もさまざまで、さらに裏地が付けられています。中には家庭では洗えない素材が使われている場合もあるので、洗濯タグの表示で、家庭で洗えるか、洗濯機なのか手洗いなのかなどを確認しましょう。
「その上で、まずはベルト類やフードなどが付いている場合、外せるものはすべて外してください。ベルト類は金具などで本体の生地を傷める恐れがあります」
コートの適切な洗濯のしかた
コートの洗い方も、基本的な手順はニット製品と同じです。
[1]気になる部分におしゃれ着洗い用洗剤を付ける
ニット同様、袖口や襟ぐりといった汚れが特に付着している部分におしゃれ着洗い用の洗剤の原液を少しかけます。
「洗剤は、型崩れや色あせ防止効果のあるおしゃれ着洗い用のものがお勧めです。ニットと同じように、こすったり強く揉んだりしないようにして、特に汚れが目立つ部分は、洗剤のキャップや洗濯ブラシ、柔らかいスポンジなどで軽く叩いてあげるといいでしょう。けっしてゴシゴシこすらないことを心がけてください。洗剤を生地の中に染みこませ、汚れを浮かせるのが目的です。
[2]たたんで洗濯ネットの中に入れる
袖を前身頃の上に置き、洗濯ネットの大きさに合わせて内側を折り、洗濯ネットの中に入れます。ニットよりかさばるので、大きめのネットを使いましょう。取り外したフード、ベルトなどは、コートとは別の洗濯ネットに入れましょう。
[3]洗濯機なら「手洗いコース」などの弱水流コースで
洗濯機の「手洗いコース」「おしゃれ着洗いコース」「ドライコース」「おうちクリーニングコース」などを選んで洗います。洗剤は前処理した量を差し引いて入れましょう。
「色移りや色落ちの可能性がありますので、ほかの洗濯物とは一緒にしないで、単独で洗うことをお勧めします」
☑手洗いをする場合は押し洗いで
「手洗いをする場合は、洗濯ネットに入れたまま桶の中で優しく押し洗いをします。もし入る桶がない場合は、洗面台の洗面ボウルなどに洗濯液を作り、そこで押し洗いするとよいでしょう」
洗濯液の温度は30℃以下にしましょう。30℃の目安は、液に肘を付けて熱くも冷たくもないくらいの温度です。
[4]すすぎには柔軟剤を
すすぎ時に柔軟剤を入れることをお勧めします。ふんわり柔らかく、肌触りが良く仕上がり、静電気やほこり、花粉の付着防止にもなります。
「洗濯機の場合は柔軟剤の投入口があるので、あらかじめ入れておきましょう。すすぎ時に自動で柔軟剤が投入されます。手洗いの場合は、2度目のすすぎのときに柔軟剤を加え、軽く押し洗いしましょう」
[5]脱水は1分程度
洗濯機のおしゃれ着洗いコースなどの場合は、自動的に軽く脱水してくれます。手洗いの場合は、ネットに入れたまま押すように絞ってから洗濯機に入れて、1分程度脱水をしましょう。
[6]針金ハンガーを使わない
脱水が終わったら洗濯ネットから取り出し、たたんだまま、軽く上下に手のひらで叩きます。こうすることで、シワが寄るのを防ぐことができます。さらに、左右の肩の部分を持って軽く振りさばきます。
干すときは、針金のハンガーではなく、スーツやコートなどをかける厚みのあるハンガーを使いましょう。
「肩の部分に丸みがあるハンガーを使わないと、湿ったコートの重みで肩の部分が型崩れを起こしやすいです。肩幅に合わせた大きさのハンガーを使うことも大切です。また、袖口にタオルを丸めて差し込むことで、袖口が型崩れせず、早く乾きます」
干すのは室内、または室外でも直射日光が当たらない場所で陰干しをしてください。
次回は、スーツや学生服などの洗い方を伺います。
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