冬物衣類をおうちで洗おう![第2回]

【ニット編】縮み、型崩れも怖くない!適切な洗い方

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ニット洗いにはいろいろ誤解がある?

 昔からよく「ニットは1シーズンに1回か2回洗えば十分。こまめに洗う必要はない」と言われます。それは本当でしょうか?

「それは正確ではありません。直接肌に触れるコットンシャツや肌着などとは違って、皮脂汚れが軽く、においなどが気にならないものを規則的に洗うことはないという意味で言われていたのだと思います。けれど、気になる汚れが付着したり、いろいろなにおいが気になりだしたときには、早めに洗うことをお勧めします。というのも、衣類に付いてしまった汚れは、時間が経つにつれて変質し、落としにくくなるからです」

 ウール素材を、人間の髪と同じようにシャンプーで洗ってリンスをするとよいと言う方もいるようですが、これはどうでしょう?

「洗剤メーカーとしては、衣類のお洗濯には、衣類用の洗剤をお使いになることをお勧めしています。衣類用の洗剤は、衣類の素材に合わせて、そして衣類に付着した汚れが落ちるように作られております。シャンプー、リンスは、人の髪と、髪や頭皮に付着する汚れに合わせて作られており、衣類に合わせて作られているわけではありません。

  各メーカー、ウールやおしゃれ着洗いに特化した洗剤があります。ライオンでも『アクロン』という洗剤があり、おしゃれ着洗いをするときには、こちらの洗剤を使用することをお勧めしています。その理由は3つあります。1つ目は、普段着を洗う洗剤にはない効果、衣類のダメージを抑え、型崩れや毛玉を防止しながら洗う効果があります。2つ目は、中性洗剤で酵素、蛍光増白剤が無配合なので、ウールなどのタンパク質の繊維にダメージを与えたり、淡い色の衣類や生成りの衣類が白っぽくなったりすることを防止することができます。3つ目は、衣類への浸透性の高い成分が使われているため、手洗いや洗濯機の弱い水流でもすばやく繊維に浸透し、汚れをきれいに落とし、衣類の風合い守りながら洗えます」

 また、大貫さんはウールやカシミアなどの天然素材だけでなく、アクリルなどの化学素材のセーターもウールと同様に丁寧に洗うことを勧めます。

「アクリルのニットは縮みにくいと言う方もいらっしゃいます。素材そのものはウールよりも縮みにくいのですが、ニットなどの編み物は加工している工程で張力がかかっているので、洗濯時の水分や機械力が加わることで元の長さに戻ろうとして収縮することがあります。また、ざっくりと編んであるアクリルのニットを洗濯後にハンガーにかけて干すと、重力がかかり、伸びしまうこともあります。アクリルは毛玉になりやすいのも特徴です」

ニットの適切な洗濯のしかた

 それでは具体的にニットの洗い方を、ウールのセーターを例に伺いましょう。

 まずは洗濯表示を確認します。第1回でお伝えしたように、洗濯表示には大切な情報が記載されています。そのセーターが洗濯機や手洗いで洗えるかを確認します。

[1]汚れている部分に洗剤を付ける

 汚れが目立つ場所や襟ぐり、袖口など汚れやすい場所には原液を直接付け、キャップの裏で軽くたたき、洗剤を浸透させます。

「このときに、ゴシゴシこすったり強く揉んだりしないようにしましょう。型崩れの原因になります」

[2]たたんで洗濯ネットの中に入れる

 洗浄力を向上させるために、必ず1枚ずつ洗濯ネットに入れましょう。そのとき、汚れていうる部分や袖口を外側にするといいでしょう。
「装飾が付いていたり、毛足の長いニットは裏返してから入れましょう」

[3]洗濯機なら「手洗いコース」などの弱水流コースで

 洗濯機の「手洗いコース」「おしゃれ着洗いコース」「ドライコース」「おうちクリーニングコース」などの弱水流のコースを選択して洗いましょう。

「ニットは洗濯で縮みやすいので、標準コースで洗える表示であっても手洗いもしくは洗濯機の弱水流コースで洗うことをお勧めします。

 洗濯機に入れる洗剤の量は、多いからといって洗浄力が上がるわけではありません。むしろすすぎの時に繊維の中に洗剤分が残る可能性もありますので、適量を守りましょう。また前処理で使用した洗剤量は差し引いていただいてかまいません」

手洗いなら洗濯溶液の温度にも注意

「洗濯機を使わない手洗いの場合は、洗面器や洗い桶にぬるま湯を入れて、適量の洗剤を溶かします。気になる汚れには、直接洗剤をかけて軽く叩いてから洗います。洗濯ネットには入れなくてもいいのですが、カシミアなどは水に入れると柔らかくなり扱いづらいので、ネットに入れたほうが洗濯しやすくなります」

 このとき、洗剤を溶かすのはぬるま湯がお勧めだそうです。
「冷たい水よりぬるま湯のほうが汚れを落とす効果を発揮しやすいのです。ただし、温度に注意してください。目安は30℃くらいまで。温度計がない場合は、肘を入れて熱くも冷たくもないくらいの温度が約30℃です」

 洗い方は、ごしごしこすらず、優しく上から押し洗いを。袖口はつかみ洗いをしましょう。すすぎもぬるま湯がお勧めです。すすぎは2回、水を溜めた後、洗うときと同じように押し洗いしましょう。
「すすぎが終わったら優しく丸めて押すように絞ります。ぎゅうぎゅう絞ると型崩れしやすくなります」

[4]タオルで巻いて脱水を

 洗濯機の場合、おしゃれ着洗いコースなら自動で軽く脱水してくれます。手洗いの場合は、洗濯機に入れて約1分脱水をしましょう。

 脱水に洗濯機を使用しないときは、洗濯ネットに入れている場合はネットから取り出してバスタオルの上に広げ、上から押すようにして水分を吸い取ります。
「薄手のものなら1回で大丈夫ですが、厚みのあるニットは、タオルの濡れていない部分に移して再度上から押すといいでしょう」

[5]平干しか陰干しで

(1)ハンガーでニットを干す例

(2)丈の長いニットをハンガーで干す例

 脱水後のニットはまだ水分を含んでいるのでとても自重があります。伸びやすいので、Tシャツを干すようにハンガーに掛けて干すのは避けましょう。

「一番よいのは風通しのよい場所で平干しネットで干す方法です。もしハンガーを使う場合、写真(1)のように身頃を半分に折り、袖をハンガーの上に回すように干しましょう。また、ニットワンピースのような丈の長いものは、写真(2)のように3本くらいのハンガーを使って、重さがかからないようにすることが大切です」

 なお、乾燥機にかけるのは避けましょう。
「ニットは熱をかけると縮みやすいので乾燥機は避けましょう。こうしたポイントを押さえれば、ニットも家庭で気軽に洗うことができ、長持ちします」

次回はコート類の洗濯について伺います。

≪お話を伺った方≫

大貫和泉(おおぬき いずみ)さん

ライオン株式会社のお洗濯マイスター。消費生活アドバイザー、繊維製品品質管理士、健康予防管理専門士などの資格を持つ。洗濯用洗剤などの製品開発・調査に約20年携わり、2児の母親としての経験と研究活動を融合し、主婦・母親・女性目線で日々の洗濯に役立つ情報を伝える。

文・写真◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)