「正しい掃除術」で健康な生活を[第3回]

「病気」予防のために注意すべき掃除法

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季節お手入れ

「インフルエンザ」の感染を予防

 冬にかかりやすいウイルス性の病気といえば「インフルエンザ」。家族の中で誰かが発症するととても大変です。

「冬場は乾燥しているので、ウイルスが空気中を舞うことも多いです。そのため、インフルエンザをはじめとしたさまざまなウイルス性の病気に感染しやすくなります。対策としては、加湿が有効です。ウイルスを含んだくしゃみや咳の飛沫は、空気中の水蒸気を取り込むことで重くなり、床にすぐ落ちやすくなります。ウイルスが人に感染する前に床に落ちれば、感染拡大を防ぐことができます。ただし、加湿しすぎると部屋にカビが生える原因にもなるので加湿しすぎにも注意が必要です。

 加湿器を使うときにおすすめの設置場所は、部屋のなるべく中心に置き、床への直置きは避けましょう。空気に含むことができる水分のことを「飽和水蒸気量」と言いますが、この量は温度によって決まります。窓際や床に近い場所は温度が低い場合が多く、温度が低いほど水蒸気は水に変わりやすいので、部屋の中央や上のほうの暖かい場所に設置したほうが効果的に水蒸気を取り込めます」

 その他、家の中で感染リスクが高いのは、寝室のベッドまわりだそうです。

「寝室は布団などの寝具がホコリを生み出すため、ホコリの量も他の部屋に比べて多い傾向があります。そしてそのホコリがエアコンの気流などにのって部屋の中を舞うため、感染リスクが高くなるのです。また、ウイルスは咳やくしゃみとともに拡散するため、顔の近くや枕まわりは汚染されている傾向があります。ただ、洗いたくてもシーツやベッドカバーは大きくて大変ですよね。そんなときは、顔や頭の近くだけバスタオルなどでカバーして取り外して洗えるようにしておくと便利です。それも面倒という場合は、粘着ローラーなどで頭や顔のまわりだけでもホコリを除去しておくとよいです」

ホコリを舞い上げない掃除法で
「気管支喘息」の発作を防ぐ

 現在、喘息の患者が日本では増加傾向といわれています。喘息を予防するために気をつけたいのはどんなことですか?

「喘息とは、慢性的に気道が炎症を起こし、空気の通り道が狭くなる病気です。喘息を防ぐには、やはりホコリを除去することが大切なのですが、掃除をするときにも注意が必要です。ホコリを舞い上げないように、ゆっくり静かに掃除をするのです。バタバタと大人数で掃除をするとホコリが宙を舞ってしまい、掃除をしたつもりでも、後から宙に舞ったホコリがゆっくりと床に落ちてきて結局また汚れてしまいます。

 また、喘息を起こす原因の一つにダニの死骸があります。喘息が悪化しやすいのは秋だといわれていますが、それは秋になると急激にダニが死んで、その死骸とフンがホコリとともに空気中に舞い上がるためです。このアレルゲンを吸い込むことで喘息が増えるのです。ダニは暗い場所を好むため、布団やカーペット、畳の中などに多く生息しています。喘息のある方は、できればカーペットは敷かないようにしたり、畳に布団を敷く就寝スタイルを避けたり、ダニの住処となる場所に接しないようなスタイルがおすすめです」

感染力は最強!「ノロウイルス」への対策法

 冬場はノロウイルスも流行しますが、家族が感染した場合のことをお伺いします。

「ノロウイルスはウイルスの中でも感染力が最強です。なんと1カ月くらいはノロウイルスが生き延びるといわれています。サイズもインフルエンザなど他のウイルスよりも小さく、飛び散りやすいので掃除での予防も非常に手ごわいといえます。一番感染リスクが高いのはトイレです。ノロウイルスに感染した人がトイレで嘔吐した場合は、トイレ全体に飛び散ります。そしてそのトイレに触ることによって、さらに家中にウイルスが広がってしまうのです」

 ウイルスが広がらないためにはどうしたらよいのでしょう?

「まずはトイレを流すときは必ずふたを閉めること。そして家族の誰かがノロウイルスに感染したら、トイレ内をはじめとしたいろいろな場所にウイルスがついていると思って、まめに手を洗うことが大事です」

「また、嘔吐物が衣類などについてしまったら、嘔吐物が乾いて空気中にウイルスが飛散する前に、除菌することが大事です。

 除菌剤はハイターやブリーチなどの台所用漂白剤を0.1%程度に希釈します。だいたい500mlペットボトル1本分の水に、台所用漂白剤をキャップ2杯分入れ、ふたをしてシェイクするとそのくらいの濃度になります。汚物をペーパータオルで覆い、消毒液をペーパーの上から静かに染み込ませて拭き取ります。これを何度か繰り返し、ペーパータオルはビニールの袋を閉めて捨ててください。

 また、カーペットなど色落ちする場所で漂白剤が使えない場所にはスチームアイロンを使って漂白する方法もあります。スチームを80℃以上にして、嘔吐物がついた場所に1~2分当てます。そうするとノロウイルスは死滅します」

「花粉症」は部屋に持ち込まない

 2月くらいになると花粉症に悩まされる人が増えますが、花粉症対策としてできることはありますか?

「花粉症は家の中に持ち込まないことが一番重要です。例えば外から帰ってきたら、コートは部屋に持ちこまず玄関に掛けるといった具合ですね。ただし、花粉を落とそうと玄関でパタパタと服をたたいたりするのはNG。花粉が玄関に舞い散ってしまいます。もしコートや服についた花粉を落としたいなら、ウェットティッシュや粘着シートなどでスタンプのように静かに花粉を吸着させて取るのがおすすめです。玄関は特に花粉が落ちやすい場所なので、この時期は空気清浄機を置いておくのもよいと思います」

 また、花粉症がひどい人に注意してほしいのが、外から家に帰ってきてすぐにトイレに行くことだそうです。

「衣類を脱ぐためトイレに花粉をまき散らしてしまいます。一番よいのは帰って部屋着などに着替えるときに、換気したバスルームで着替えること。そうすれば落ちた花粉をシャワーですぐ流すことができます。また、玄関の他にはカーテンの裏などに花粉がたくさんついていることが多いので、カーテンを開閉するときは静かに行い、洗うことも大事です」

 第4回は、正しい洗剤の選び方や便利なお掃除グッズについて取り上げます。

(第4回に続く)

≪お話を伺った方≫

松本忠男さん

東京ディズニーランド開園時の正社員、病院清掃35年の健康を守るお掃除士。ダスキンヘルスケア勤務を経て、亀田総合病院のグループ会社に就職。清掃管理者として約10年間、現場のマネジメントや営業に従事。現場で得たコツやノウハウをわかりやすく紹介している。著書に『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)がある。

文◎濱田麻美
取材写真◎平野晋子
画像提供◎Shutterstock

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