「正しい掃除術」で健康な生活を[第2回]

間違ったお掃除を見直そう

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“グルグル拭き” “ゴシゴシ拭き”はNG

 第1回では、カビはホコリの中に潜んでいるとお伺いしました。ホコリや汚れを正しく掃除するためには、どんなことに注意したらよいのでしょう?

「一般的にお掃除というと、掃除機で吸うか、ワイパーやクロスで床やテーブルを拭くかという作業が多いと思うのですが、みなさん、どんな拭き方をしていますか? 多いのはグルグルと円を描くように拭く“グルグル拭き”と、ワイパーのように往復拭きする“ゴシゴシ拭き”。でも実はこの拭き方、両方間違っているのです。
 拭くときは雑巾やクロスを手で床などに押しつけて掃除します。汚れと最初に出会うのは、クロスの端の部分です。でも “グルグル拭き” や“ゴシゴシ拭き”をすると、せっかく拭いていても汚れがまた拭いたところについてしまいます。結果的に汚れを広げてしまっているのです」

 無意識のうちにやってしまっている方も多いのではないでしょうか。それではどんなことに注意したらよいのでしょう。

「拭くときは“一方向拭き”が基本です。汚れを複数の粒だと想像してみてください。その粒状の汚れを拭いたときに、一番汚れているのはクロスの進行方向側の端です。その汚れを別の場所につけないためには、一方向に拭かなくてはなりません」

 大きな面を拭くときには、一方向に拭いたらクロスを180度回転させて、同じ端を使うようにして拭いていきます。

「まずはこの拭き方を意識してみてください。掃除の基本として、ここだけは覚えてほしいポイントです。私は子どもたちに拭くことによって心も育てていく“福育”活動を小学校や保育園を訪れて行っているのですが、この拭き方をできる子はあまりいません。だからこそ、最初にお伝えしています。
 壁を掃除するときも同じです。ドライシートなどをワイパーにつけて上から下へと一方向に静かに動かして、ホコリが舞い上がらないように取っていきます。100円ショップで売っている化繊ハタキなどを使って上から一方向に動かしていくのもよいでしょう」

食器はまとめ洗いしない

 食品を扱うキッチンも清潔に保ちたい場所です。気をつけることはありますか?

「キッチンなどの水まわりは汚れと水気が多いので、カビや雑菌がたまりやすい場所です。清潔さを保つうえで注意しておきたいのは、ふきんの取り扱いと食器のまとめ洗いです。
 まずふきんは、常に湿っていることが多く、食器に残った汚れ(栄養)がついていることもあり、室内の温度が高いと細菌がすごいスピードで増えていきます。定期的に塩素系漂白剤で漂白し、しっかり乾かすようにしましょう。
 また、食器のまとめ洗いも細菌を増やす原因になります。使用済みの食器を洗い桶などにつけ置きしておくという習慣をよく見ますが、つけ置きをしていると、シンク内には相当な数の雑菌が繁殖します。その後、食器の洗浄が不十分であれば雑菌を体内に入れてしまうことにもなります。食器を使ったら、すぐ洗って拭く習慣をつけましょう」

浴室は冷水でお掃除を

 浴室も水気が多くカビが繁殖しやすい場所です。浴室掃除に関しては、仕上げに冷水をかけたほうがよいという先生と、逆に、高めのお湯をかけたほうがよいという先生がいらっしゃいます。

「いろいろな説がありますが、私は冷水で行ったほうがよいと考えています。単純にカビ対策で考えると、確かにカビは50℃以上で死滅します。ただ、温水シャワーは50℃まで上がらないという家庭も多いですし、浴室中くまなく50℃以上のお湯をかけられるかというとそれも難しいと思います。お湯を使うと蒸気が出て、それが残るとカビの原因にもなるので、そのリスクのほうが大きいと考えています。
 一番よいのは使ったあとに水気を拭き取ることですが、それが難しいのであれば、浴室用洗剤などで洗ったあとに冷水シャワーをかけましょう。また、浴室は雑菌が多い場所なので、掃除後は窓を開けたり、換気扇を回したりしましょう」

ロボット掃除機だけに頼るのは危険

 ロボット掃除機を使う方も年々増えていますが、ロボット掃除機でのお掃除についてはどうでしょう?

「ロボット掃除機は確かに忙しい現代人にとっては便利な面もあると思います。ただ、ロボット掃除機だけですべてホコリや汚れが取れると過信してはいけないと思っています。
 床の汚れは空気中の湿度や足で踏みつけられることでピッタリと床にくっついていることが多いですし、足裏の皮脂汚れなどもついています。それらをすべてロボット掃除機だけで取れるかというと、難しいと思います。また、部屋の隅のホコリなどは取りきれず残っていることも多いです。大きいホコリやゴミはロボット掃除機に取ってもらって、部屋の隅や汚れがへばりついてしまっているところは拭き掃除でしっかり汚れを除去することが必要だと思います」

除菌用アルコールは万能ではない

 コロナウイルスなどの感染症対策として除菌スプレーをお掃除に使う人も増えました。使い方のコツはありますか?

「まず、勘違いしてほしくないのが、すべてのウイルスがアルコールで死滅するわけではないということ。ウイルスの種類によっては除菌できないものもあります。ウイルスを除去する一番よい方法は、やはり洗浄です。手も除菌スプレーをつけるより、石鹸で洗って洗い流すほうがウイルスは取れるのです。ここを勘違いしている人もいます。
 除菌に関しても、スプレーなどで除菌するより先に、ウイルスや汚れを可能な限り減らすことが大事です。だからこそ、まずは掃除なのです。雑菌やウイルスを掃除で減らして、そこにスプレーなどで除菌するのがよい方法です」

 第3回は、インフルエンザや喘息など病気を予防するためのお掃除のポイントを取り上げます。

(第3回に続く)

≪お話を伺った方≫

松本忠男さん

東京ディズニーランド開園時の正社員、病院清掃35年の健康を守るお掃除士。ダスキンヘルスケア勤務を経て、亀田総合病院のグループ会社に就職。清掃管理者として約10年間、現場のマネジメントや営業に従事。現場で得たコツやノウハウをわかりやすく紹介している。著書に『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)がある。

文◎濱田麻美
取材写真◎平野晋子
画像提供◎Shutterstock

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