「正しい掃除術」で健康な生活を[第1回]

健康を守るためにまずはココをお掃除

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目に見えない汚れこそ
体に悪さをする

 健康を維持するために気をつけなくてはいけない汚れとはどういったものでしょう? 

「私は長年病院清掃という分野に関わってきました。病院清掃では通常の目に見える汚れはもちろんですが、カビやウイルス、雑菌、花粉などの目に見えない汚れに非常に気を配ります。実際に体に悪さをするのは、そういった目に見えないものなのです」

 目に見えない汚れの代表的なものを教えていただけますか?

「代表的なのは『カビ』です。浴室で見られる黒カビなどは、相当な量のカビが集まっているから見えるのであって、一つひとつのカビは肉眼では見ることができません。でも点ほどの小さなカビでも、顕微鏡で見ると胞子が千個以上も集まっていることがあります。
 たかがカビと思われる方もいらっしゃいますが、免疫力の低下した人や持病を持っている人にとっては、命に関わる大問題になることもあるのです。

 カビの繁殖条件は3つあります。
 まずは温度。20℃~30℃くらいが最もカビが発生しやすいです。2つ目は湿度です。だいたい湿度60%を超えるとカビは急激に繁殖します。3つ目はカビの栄養源になるものがあることです。中でもホコリはカビの栄養源としては最適で、ホコリの中を顕微鏡で見るとカビや細菌がたくさん入っています。この3つの条件の一つでも断ち切ることが、カビを増やさないコツです」

部屋の中でカビが
繁殖しやすいのはこんな場所

 それではお部屋ではどんな場所にカビは繁殖しやすいのでしょう?

「まずは、風が流れず空気が停滞し、ホコリがたまるところが挙げられます。具体的には、部屋の隅や床と壁沿い、家具や物の下などです」

 目に見えないカビがそれらのホコリに含まれているのですね。

「そうです。だからこそ、ホコリがたまる前にお掃除することが大事です。まめに掃除していれば、カビも発生しにくくなります。
 まめに掃除できるようにするためには、床に物を置かず、掃除しやすい部屋にしておくことも大切ですね。家具を脚やキャスター付きにして下まで掃除できるようにするとか、コードがあったらホコリがつかないようにボックスにまとめておくとか、細かいところまでサッと掃除できるようにしておくとラクです。
 次に、結露することが多い窓ガラスも、湿度が上がりカビが発生しやすい場所です。また、意外と気づかないのですが、結露の湿気を吸うため、カーテンの裏などもカビが繁殖しやすい場所になります」

 カビの繁殖しやすい20℃~30℃は人間も快適な温度なので調整が難しいですが、湿度は除湿器を置いたり、換気をまめにしたりして調整するとよいそうです。

 また、汚さないための工夫も必要です。
「例えば顔を洗うとき、いつも洗面所の周囲に水が飛び散ってしまうのであれば水の勢いを弱くするなど、そもそもどうして汚れてしまうかを見直すと、汚さない対策も見えてきます」

エアコンフィルターのカビに要注意

 カビはホコリや湿気を介して家中に潜んでいる可能性がありますが、「エアコン」も気をつけるべき箇所だと言います。

「エアコンはホコリや雑菌が含まれる室内の空気を吸って、フィルターでろ過して暖めたり冷やしたりして、また室内に空気を排出しています。こうしたしくみから、フィルターは汚れやすいものなのです。ここで問題になるのがカビです。冷房する場合は、部屋の空気をエアコンが吸い込み、内部で急速に冷やすことでエアコン内が結露します。さらにフィルターにはホコリがたまっていることも多いため、ここでカビが発生するのです。そのまま使い続けると、エアコンがカビとホコリの放出マシーンになってしまいます」

 それは怖いです。エアコン内部のクリーニングを行うことで解消されますか?

「時々プロのエアコンクリーニングをお願いすることは大事だと思います。1年に1回は行うことをおすすめします。また、こうしたエアコンの汚れた気流の影響を一番受けやすい場所はエアコンの下です。寝室にエアコンを設置する場合、汚れた空気を直接吸い込んでしまわないよう、エアコン下に枕がくるのは避けたほうがよいと思います」

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汚染されやすいトイレに入った後は、
必ず手洗いを

 その他、健康被害をもたらす汚れが多い場所はどこでしょう?

「トイレです。もともとトイレは空間的に狭くホコリがたまりやすい場所です。さらに、排泄の場所なので体に悪さをする大腸菌などの雑菌も多いのです。こうした雑菌がホコリと合わさって、湿気も多いためカビも発生します。だからトイレの床は目に見えない汚れがたくさんついています。
 またトイレを使うときは、ドアノブに手をかけることから始まり、ティッシュや温水洗浄便座、便ふたなど、気づかないうちにたくさんの場所を触っています。大腸菌などの雑菌がついている場所を触ったあとに、そのまま手を洗わずに食べ物を触ってしまうことで、食中毒の原因になることもあります」

 トイレを出たあとはしっかり手を洗うことが大事ですね。

「そうですね。自宅だからといって水洗いですませないで、石鹸を使うようにしましょう。またトイレの床は非常に汚れて汚染されていることが多いので、まめに掃除しましょう。ただし、ここでも注意が必要で、掃除機を使うのはNGです! 汚染されたトイレの床に掃除機のヘッド部分を当ててしまうと、他の部屋を掃除する際に雑菌を広げてしまいかねません。使い捨てドライシートなどでホコリが舞い上がらないように静かに掃除しましょう」

 次回は、見えない汚れをしっかり落とす正しいお掃除の基本についてご紹介します。

(第2回に続く)

≪お話を伺った方≫

松本忠男さん

東京ディズニーランド開園時の正社員、病院清掃35年の健康を守るお掃除士。ダスキンヘルスケア勤務を経て、亀田総合病院のグループ会社に就職。清掃管理者として約10年間、現場のマネジメントや営業に従事。現場で得たコツやノウハウをわかりやすく紹介している。著書に『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)がある。

文◎濱田麻美
取材写真◎平野晋子
画像提供◎Shutterstock

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