猫も人も幸せになれる住まいづくり[第1回]

猫と暮らすための環境づくり、どこから考える?

空間
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関心
建築リフォーム

「定番」にとらわれない猫のためのリフォーム

 猫のための家をつくりたいと、愛猫家ならば皆さん考えるでしょう。大路さんはリフォームの依頼を受ける際、最初にいくつかのポイントを尋ねることからコンサルティングを始めると言います。

「まず尋ねるのは、いったいどんな猫たちなのかという点です。多頭飼いなのか、1匹の猫と暮らすのか。その猫たちの年齢や性格などはどうなのか。癖はあるか。そうしたことを伺ってから、いろいろな提案をしてプランを練り上げていきます」

 犬が暮らしやすい空間と猫が暮らしやすい空間は異なるそうです。また、飼い主さんにもある種の傾向があるようです。

「犬の場合、滑りやすい床だと足腰を傷めるので、無垢の木材やLIXILの滑りにくい床材などを勧めます。また、粗相をしてしまう犬には、コンセントの位置を高めに設置するなどの定番の方法があります。けれど、猫の場合はそういったことよりも、飼い主さんの『猫はこういうもの』という思い込みが先行してしまって、実際にその猫がどういう猫なのかを判断する前にいろいろ想像を膨らませてしまう方が少なくありません」

 大路さんが「まず猫の年齢や性格をヒアリングしてから」というのは、飼い主さんの思い込みでリフォームを進めると、猫にとってもあまり意味のないものができてしまうことがあるからなのだそうです。

猫の年齢によって行動は違う

写真提供:わんにゃんホーム

 例えば、キャットタワーやキャットステップを付けたいという依頼がよくあるそうです。

「子猫や3~4歳くらいまでの若い猫ならいろいろなものに興味を持つので、キャットタワーのような設備を付けたら遊んでくれるでしょう。でも5歳、6歳……と年齢を重ねた猫や老猫の場合、高いところには上らなかったりするんです。また年齢を重ねた猫は、住み慣れた家に新たなものができると、それを異物と受け止めることが往々にしてあるのです」

 猫は高いところに上りたがるというイメージがありますが、それが苦手な猫も少なくないそうです。また高いところは好きでも、キャットステップを使わなかったりすると、せっかく取り付けた飼い主さんもがっかりです。

猫の個性を重視したプランづくりを

 新しく子猫が生まれた場合や、保護猫などの子猫を迎える場合は、ある程度こういう風に育てていこうと意図を持って家づくりの計画をするのもいいでしょう。一方、すでに成猫と暮らしていたり、大人の猫を迎えて暮らし始めたりする場合は、その猫がどういう暮らし方を好むのか見極めてからリフォームを検討するほうがいいそうです。

「広いリビングの壁一面にキャットステップを付けたり、ぐるりと一周できる回廊を設けても、肝心の猫たちがそこに上りたがらなければ、それは飼い主さんの自己満足にしかなりません」

 大路さんは数カ月から半年くらい、じっくり猫と向き合うことが大切だと言います。

「猫の性格を見極めた上で、リフォームのメニューを決めていくことが大切だと思います。家の中をあちこち動き回る猫ならキャットドアを設置してあげるといいですし、あまり移動しない猫なら、むしろ部屋の中でのんびりできる場所を増やしてあげるといった具合です」

 保護猫の場合、何かのトラウマを抱えていたり、人に心を許さず、逃げ出そうとしたりすることもあります。

「保護柵を設けるなどの対策を講じた上で、猫が心を許すようになるまで時間をかけるのがいいと思います。数カ月から半年くらいかかるかもしれませんが、逃げ出そうとしたり家のどこかに隠れたりもしなくなるでしょう。その間、ゆっくりと猫も自分も快適なリフォームについてアイデアをまとめて、猫が落ち着いたところで業者さんと相談を始めればいいと思います」

壁を有効活用して、 ネコちゃんの遊び場に。
https://www.lixil.co.jp/ouchijikan/article_livingroom_bedroom05.htm

 次回は、アクティブな猫たちが動き回っても傷が付きにくい空間づくりについて伺います。

≪お話を伺った方≫

大路信宏(おおじのぶひろ)さん

愛猫家と愛犬家のために新築工事やリフォーム工事を提案するイーグル建創のペットリフォームの専門サイト「わんにゃんホーム」担当者。自身も愛猫家・愛犬家。東京・町田に見学可能なショールームがある。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
画像◎Shutterstock(トップ画像)

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