犬と暮らす家づくり[第1回]

愛犬のための「心地よい」環境とは?

空間
リビング・寝室・居室
関心
建築ファミリー

 今西さんは8年半ほど前から千葉県で現在の戸建てにお住まいです。一緒に暮らしている2匹の犬はどちらも保護犬で、右の後ろ足が不自由な17歳の未来ちゃんと、12歳のきららちゃんです。

「以前も同じ千葉県内に住んでいましたが、未来は後ろ足に障害があるので、犬が暮らしやすい家に住み替えようと思いました。家づくりでは、人も犬も暮らしやすい環境のために、いろいろな工夫をしました」

 犬との生活といっても、その犬の個性によってさまざまです。すぐに誰にでも飛びかかってじゃれる犬、よく吠える犬、トイレのしつけができていない犬もいれば、とてもおとなしい犬もいます。

「犬との生活でまず大切なのは『信頼関係』だと思います。信頼関係ができていなければ、どんなに快適な空間であっても、犬は快適だと感じることができません」

「しつけ」を押しつけない

 そんな犬たちとの信頼関係を深めるには、どんな接し方をすればよいのでしょう。ソファやベッドに犬が上がらないように「しつけ」をして、人間との上下関係をきちんとつくるのがよいという人もいるようです。

「私はどちらかというとベッドで犬と一緒に寝たい派ですが、犬の個性にもよりますし、飼っている方それぞれでいいのではないかと思います。
 ごはんやおやつといったご褒美を与えてトレーニングするのもいいと思いますが、何を愛犬に求めるかは、飼い主さんそれぞれ。『お互いに心地よい関係をつくる』ことで信頼関係はできていくと思います」

 無理矢理序列をつくるのは、かえって犬に対するハラスメントになってしまいそうです。上下関係をつくるのではなく、こちらが犬に対して「大切な存在だよ」という気持ちをしっかり伝えてあげることが大切なのでしょうか。

「一番大切なのは、犬を裏切らないことです。人間は日によって気分にムラがあることもありますが、それを犬に押しつけない。例えば、毎朝きちんと散歩に連れて行ってあげるとか、そういうことの積み重ねが大切です。そうすれば、犬は飼い主が絶対に自分を裏切ることはないと、信じてくれる。犬に留守番をさせるときも、飼い主が必ず帰ってくるとわかっているので、問題行動にもつながらないと思います」

犬が落ち着ける場所をつくる

 信頼関係を構築する上で、家の設備などで大切なことはあるでしょうか。

「家の中に、犬が居心地のよい場所をつくってあげるといいですね。プライバシーを保てて、のびのびできる場所が必要です。
 居心地のよい場所は犬によって違うので、あらかじめ『ここに寝床を』と決めるのはあまりうまくいかないかもしれません。例えば、我が家の未来は屋根が付いた空間が落ち着くようなので、テーブルの下に未来専用のスペースをつくってあげています」

 今西さんは、犬とのよりよい暮らしには、ご近所との関係性も重要だといいます。

「散歩で外に連れて行くときなど、ご近所と愛犬が出会う場面は毎日あります。日頃からご近所との関係を良好にしておけば、トラブルも起きません。犬が苦手な方もいらっしゃるので、そうした方には不安を感じさせないよう最善の配慮をして、ご挨拶もより丁寧にすることが肝心だと思います」

家の防音性能を高める

 ご近所との良好な関係づくりのために、家の防音性能を高めることもひとつの手だそうです。

「防音は案外重要かもしれません。犬が鳴いたり少し吠えたりするのは飼い主はあまり気にならなくても、ご近所の方にはうるさく感じるかもしれません。また、室内にいる犬が外からの音に過剰反応して吠えてしまうこともあります。うちの場合、未来はあまり吠えない犬でしたが、歳をとって認知症になってからは昼夜逆転で夜鳴きがひどくなり、防音対策の必要性を身にしみて感じています」

 今西さんのお宅は、一般的な住居レベルの防音性能はあるのですが、特別に犬の鳴き声が聞こえないレベルの防音対策は施していなかったそうで、そこは反省点だといいます。お住まいの防音効果に不安があるなら、窓に対策をするのもひとつの手でしょう。

 LIXILの「インプラス」なら、窓のサッシの内側に内窓をプラスすることで、高い防音効果を実現できます。防音は室内の音が外に漏れるのを抑えるだけでなく、外からの騒音を抑えることもできます。また、防音効果の高い窓は同時に断熱効果も高まります。

「夏は犬のためにエアコンをかけっぱなしにしますし、冬もなるべく家の中が暖かいほうが快適だと思います。そうした意味でも、防音・断熱効果の高い家は犬にとって居心地がいいと思います」

 次回は、今西さんが犬のために工夫したお住まいの内部についてさらに伺っていきます。

≪お話を伺った方≫

今西乃子さん

児童文学作家。
主に児童書のノンフィクションを手掛ける。執筆の傍ら愛犬・未来をテーマに学校にて「命の授業」を展開。主な著書に愛犬の未来ときららを描いた『捨て犬・未来、しあわせの足あと』『子犬のきらら ゆれるしっぽふんじゃった!』(ともに岩崎書店)などがある。

文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)