
清掃のプロフェッショナル・新津春子さんに、日々のお掃除を楽にするポイントを伺っています。今回は、大仕事になってしまいがちな大掃除にしないための、普段からの掃除の切り分け方について伺います。
定期的に大掃除を行うことで、家の中を綺麗に保っているかたも少なくないでしょう。けれど、新津さんは、大掃除をしなくても家の中は綺麗に保てるといいます。
「前回までに申し上げたとおり、普段、気づいたところを掃除していれば、家の中はかなり綺麗に保てます。その上で、週に1回とか、月に1回、あるいは季節ごとに『片付け』をすればいいと思います」
掃除ではなく片付け、というのはどういうことでしょう。
「例えば、季節ごとに衣替えをしますよね。あるいは季節でカーテンを掛け替えたり。そういうときに、いろいろな物を片付けることで、ホコリを極力減らすことができます」
衣替えといっても、クローゼットの中のコートやジャケットを入れ替える程度の方は、どうすればいいのでしょうか。
「クローゼットにずっと洋服を掛けておくと、隙間からホコリが入ってきて、洋服にもよくありません。春になったら冬物をクリーニングに出し、返ってきたらすぐにビニールカバーを外して、専用の衣装カバーなどに収納することをお勧めします。そうすれば、冬になって洋服を探すのも楽ですし、糸くずやホコリが出ることはありません」
意外なことに新津さんは、整理整頓が苦手だそうです。
「本棚を整理していると、大好きな本が出てきて、ついつい読み始めちゃったりしますよね。引き出しの整理でも、懐かしい写真が出てきて手が止まったりします。整理整頓が嫌いなのではなく、そういったものに時間を奪われてしまうので、効率が悪いんです(笑)」
そんな新津さんは、掃除と片付けを切り分けて、別の日にやることをお勧めしています。
「本棚の整理、食器棚や食品の整理、先ほど申し上げたクローゼットの衣替えなどを普段の掃除や大掃除のときに一気にやってしまうと、時間のロスが多いですし、なにより長時間になるので疲れ果てちゃうんですね。ですので、片付けをするときの掃除、さっとホコリなどを拭き取ったり、掃除機をかけたりする程度にしておいたほうがいいのです」
掃除は掃除で、別の日にやる、というわけですね。確かにそのほうが、効率がよさそうです。
「毎日、気がついたところを湿り拭きして、週に1回や月1回の頻度で、全体を少し丁寧に掃除するのがいいでしょう。そういうときに、窓枠や網戸などをクリーンナップしておけば、定期的な大掃除はほとんど必要ないと思います」
部分部分でポイントを抑え、分散して掃除をするのもよさそうですね。
家の中だけでなく、ベランダや外まわりも、季節ごとに定期的にそこだけを掃除するとよさそうです。掃除をすることで、家や機器の傷みなども発見できますね。
また、週に1回、あるいは季節ごとにちょっと丁寧な掃除をするときに、大きめの家具を少しずらすことがお勧めだと、新津さんは話します。
「片付けの最中に、ちょっと気になった汚れを湿り拭きしたり、軽く掃除機を掛けることもあると思います。そんなときは、リビングテーブルや室内の植木鉢、ゴミ箱などをちょっと動かしてみるといいですよ。家具の足もとは、前回お話しした『スミっこ』と同じですから」
たしかに、重い家具は滅多に動かしません。当然、隠れた部分にホコリや汚れが溜まりやすいですね。
「そうです。だから、動かせるものはほんの少しでも動かすんです。10cmでいいでしょう。そうすると、家具によってできた『スミっこ』や、その下の汚れを拭き取ったり、掃除機で吸い取ることができます。特にゴミ箱の周辺は、案外汚れやホコリが溜まっているものです。動かせないものは周りを拭き取りましょう」
とはいえ、大きなの家具を動かすのはなかなか大変です。
「そんなときのために家族がいるんですよ(笑)。現代は、夫婦共働きの家庭が半数以上でしょう? なのに女性だけが炊事や掃除をやるというのはおかしいですよね。我が家でも家事は分担していますよ。重い家具は、力がある男性が動かせばいいし、どちらかが仕事で遅くなるのであれば、先に帰ってきたほうが掃除をしておくというように、うまく分担してやれば、家族の中で誰か一人だけに大きな負担がかかることもなくなると思います」
掃除も分散、家事の負担も分散でやっていけば、楽しくて明るく、綺麗な家庭が保てるということですね。
次回は、新津さんが「最も気をつけたい」というキッチンのお掃除について伺います。
中国残留孤児2世として17歳の時に渡日。以来、清掃の仕事に携わる。1995年、日本空港技術サービス(現:日本空港テクノ)に入社。97年に(当時)最年少で全国ビルクリーニング技能競技会一位に輝く。現在は羽田空港ターミナルの清掃実技指導だけでなく、同社唯一の「環境マイスター」として、羽田空港の環境整備に貢献するとともに、新たにハウスクリーニング事業を立ち上げるなど常に新しいことにチャレンジを続けています。講演活動や著書も多数。近著に『1か月に1回物を動かせば家はキレイになる』(ポプラ社)など。
取材・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)