「掃除のプロフェッショナル」直伝! 日々の掃除を楽にする[第5回]

カビを防ぐ! 浴室のトリセツ

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シャワーを使う向きを変える

 キッチン以外の水まわり、特に毎日使う浴室や更衣室などは、掃除を怠りがちです。浴槽は毎日洗っても、それ以外はつい忘れがちで、気がつくと排水口や浴槽のパネル裏などにカビが発生してしまうこともあります。

「水だけではカビは発生しません。石けんなどのかすや、洗い流された汚れに水分が加わって湿度が高くなり、さらに占めきった空間で温度も高いことで、カビが生じやすくなるんです」と、新津さん。

「お風呂は、毎日水を流すから清潔だろうと思いがちですが、むしろ毎日水を使う場所だからこそ、よくない環境なのです。特に問題はシャワーですね。髪や身体を洗うと、シャワーの水はねがあちこちにつきます。それがカビの栄養源になるのです」

 毎日できる対処法はあるのでしょうか。

「実は、浴室で一番洗いにくいのが、入口のドア付近です。溝が多いですし、当然パッキンなども使われています。そこにシャワーの水はねで石けんかすや髪の毛、垢などの汚れが付かないようにすることで、日々のメンテナンスは楽になります。その方法は、実はシャワーを浴びる向きを変えることなんです」

 一般的な浴室は、シャワーの水栓がある壁面の真正面に出入り口があります。そのままシャワーを浴びると、身体に向けたお湯の一部が扉にかかり、床で跳ねたお湯や汚れも扉方向に押し流されることになります。

「なので、シャワーを浴びるときは、浴槽を背にするといいですよ。一般的な浴室なら、90度横を向く、ということです」

 水栓の位置は変えずとも、シャワーホースの長さがあれば簡単にできますね。プチリフォームで、シャワーヘッドのハンガーの位置を変えてもいいかもしれません。

毎日、汚れを洗い流す

 また、お風呂に入ったときに、最後の人が浴室全体の汚れなどを洗い流すのもいいそうです。

「まずは熱めの温度にして、シャワーで壁、浴槽などを綺麗に洗い流しましょう。ブラシなどでこすったり、洗剤を使ったりする必要もありません。床だけは、汚れが残っていますので、軽くブラシでこすってもいいかもしれません。天井は毎日洗い流す必要はありませんが、念入りに掃除するときに流すといいでしょう」

 熱めのシャワーで汚れを洗い流したら、こんどはぬるめにしてもう一度流すといいそうです。

「浴室は温度と湿度が上がっていますから、少しぬるめのお湯で流して、全体を冷やすという意味もあります。これをしておくことで、カビが生えやすい温度や湿度より下げるのです」

 カビが生えやすい温度は20~30℃です(※1)。お風呂を出るときに換気を始めれば、冬の間はその温度帯から抜け出せるということです。

(※1 参考:文化財虫害研究所webサイト掲載論文「カビの予防と防菌防黴」より)

「浴室の使用後は水切り、扉開放、換気扇をワンセットで考えるといいですよ」

 この3つをセットにすることが最も効果的だそうです。

「ゴムヘラやスクイージーのようなもので、壁に付いた水滴をかき落とします。温度同様、湿度もカビの原因になりますから、なるたけ浴室に水分を残さないようにするといいと思います。タオルなどで拭き上げるのは大変ですが、ヘラならあっという間です」

 水滴などを落としたうえで、換気扇をつけたままお風呂場を出るといいそうです。

「浴室に窓があるなら、開けましょう。更衣室に出て身体を拭き、着替えたら、浴室の扉も5cmくらい開けて換気をしてもいいです。換気扇も回して90分、風通しをよくすれば浴室は乾燥します。カビを落とすために強い洗剤を使ったり、ごしごしこすったりする大掃除は必要ありませんよ」

棚の裏もしっかり洗う

「お湯を流してからヘラなどで水分を落とすときは、ラックや棚の下などもきちんとやりましょう。普段の入浴時でなければ、前にお話しした手鏡で確認してみるといいと思います。上から見て汚れていなくても裏側が汚れているというのは、キッチンでも、浴室でも同じです」

 新津さんは、浴室だけでなく、更衣室・洗面所も同じように棚の裏までさっと掃除することで、汚れが溜まらなくなるといいます。

新津さんは清掃の仕事で棚の裏側などをチェックするために、小さな手鏡を持っているそうです。

「洗濯機の裏や脱衣所の端などは、髪の毛や布ボコリ、糸くずなどが溜まりやすい場所です。また、棚の下側や、配管の下側など、見えない部分が汚れます。こうした水まわりのスペースは、2~3週間も放っておくとカビだらけになる危険性がありますから、日々、ちょっと気づいたときに汚れやゴミをかき出すといいでしょう。また、洗濯機なども手の皮脂が残りやすいところです。ここも洗濯をするときに、洗濯物のタオルなどでさっと拭くと、常に綺麗になります」

 5回にわたって、お掃除のプロ・新津春子さんから、大仕事にならない掃除の方法を伺ってきました。肝心なのは、気がついたときに、気になるところだけを、さっと掃除すること。こまめに汚れやゴミを取っておくことです。

 習慣化すれば、大仕事の大掃除をしなくても、わが家はいつも快適な空間になります。

≪お話を伺った方≫

新津春子さん

中国残留孤児2世として17歳の時に渡日。以来、清掃の仕事に携わる。1995年、日本空港技術サービス(現:日本空港テクノ)に入社。97年に(当時)最年少で全国ビルクリーニング技能競技会一位に輝く。現在は羽田空港ターミナルの清掃実技指導だけでなく、同社唯一の「環境マイスター」として、羽田空港の環境整備に貢献するとともに、新たにハウスクリーニング事業を立ち上げるなど常に新しいことにチャレンジを続けています。講演活動や著書も多数。近著に『1か月に1回物を動かせば家はキレイになる』(ポプラ社)など。

取材・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

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