「掃除のプロフェッショナル」直伝! 日々の掃除を楽にする[第1回]

手垢汚れは「湿り拭き」で一掃!

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よく触れるところが汚れるところ

 掃除は本当に面倒なものです。けれど、普段の掃除を怠っていると、ある日はっと気がつきます。

「家が……汚い」

 そんな気持ちにならないためには、日々の掃除が大切です。新津さんは、まずは「汚れない」部屋にすることが大切だと言います。

「一番お勧めしたいのは、こまめな拭き掃除です。といっても、毎日家の隅々まで綺麗に磨き上げることではなく、ある特定の場所を、気がついたときにさっと拭くだけでいいんです」

 いったい、どんな場所を拭けばいいのでしょうか。

「普段の生活の中で頻繁に手で触れるところがありますよね。人により、部屋のレイアウトにより、さまざまですが、必ず1日の中で何回も触れるところがあります。気がついたときに、そんな場所をさっと拭くだけで、部屋の汚れ方は違ってくるんです」

 日頃使っているスマホの画面は、綺麗な手で触れていてもいつの間にか汚れています。メガネのレンズも、軽く触れただけで指紋がついてくもります。
 新津さんは、同じようなことが部屋のあちこちで起きているのだといいます。

「スマホ画面の汚れやくもりの原因は、手の皮脂などです。綺麗に手を洗っても、指先などから手の保護のために分泌されるのです。TVのリモコンや壁のスイッチ回り、テーブルや椅子など、普段生活しているなかで、1日に何度も触れる場所はたくさんあります。そういうところには、見えないだけで、いつの間にか皮脂が付着しているのです」

ソファから立ち上がるときなどにテーブルの角に手を置いて身体を支えたりすることは毎日の生活の中でよくあること。

 木のテーブルなどは、スマホの画面のようにガラスではないので、手脂の汚れはほとんど目立ちません。

「目立たないからいい、という訳ではないのです。手の脂などは放置しておくとホコリや細かいゴミを吸い寄せて、離れにくくするんです。ですから放っておくと、そういうところからどんどん汚れていくんです」

 新津さんは、仕事やご自宅の掃除をしている中で、気がついたことがあるそうです。

「住んでいる人の生活スタイルや年齢などによって、触れる場所は違います。例えば若い元気な方なら、椅子から立ち上がるときに手を触れるのは、目の前のテーブルくらい。けれど、お年を召した方は、テーブルや椅子の背など、何カ所も触りながら自分の身体を支え、立ち上がります。そうした行動のしかたの違いで、汚れる箇所も違ってくるんです」

 まずは日頃、自分や家族がどんなころに触れたり掴まったりするか、チェックしてみることから始めるのが良さそうです。

放置しない。気づいたら拭く

 では、そうした汚れやすい場所を綺麗なままにキープするには、どうしたらいいのでしょうか。

「気がついたときに、よく触れるところをさっと拭き掃除することを習慣化するといいと思います。意識して拭くようにしておくと、いつの間にか習慣になるものです。肝心なのは、大して汚れていないからあとでまとめてやろう、と放置しないことです。あとでやろうと放置すると、結局なかなかやらないものですし、いざ汚れを落とすとなると、しっかり時間を取ってやらなくてはなりません。
 一番肝心なのは、何かのついでに部分的に掃除をすること。そうすれば、大掃除はほとんど必要なくなりますよ」

 気づいたときにさっと拭くために、新津さんは、常にタオルなどを用意するといいと教えてくれました。

「私は『湿り拭き』と呼んでいるのですが、わずかに湿り気をおびたタオルや布巾などを常に用意しておいて、それを使ってさっと拭くのが一番手軽だと思います」

 湿り拭きのタオルをつくるには、どうすれば良いでしょう。

「タオルや布巾などを濡らして、固く絞ります。そこに、乾いた布巾やタオルを重ね、くるくると巻き、絞るんです。濡らしたほうから乾いた方に水分が移ることで、濡れすぎていない、かといってカラカラに乾いていない状態になります」

絞ったぬれタオルと乾いたタオルを重ねて巻き、絞ることでちょうど良く水を含み、湿り拭き用のタオルになります。

 乾いた布巾などではダメなのでしょうか。

「乾いた状態だと、さっと拭いても皮脂などは完全には取り除けないんです。少しだけ湿っていた方が、力も要らず、かるく拭くだけで汚れのもとが取れます。かといって、しっかり濡れている布巾だと、水分がありすぎます。テーブルの上などが濡れると、乾くまで時間がかかりますし、空気中のホコリなどが濡れているところに付いたりします。乾きすぎはダメですけれど、濡れすぎもダメなんです」

 テーブルの上などに、ほんの少し湿らせたタオルや布巾を置いておき、気づいたときに手の皮脂などが付いたところをさっと拭く。そうした習慣をつけることが大切だということですね。

「そうです。そうすれば、集中して掃除するときにも作業が楽になるんです。掃除は日々のことですから、なるべく楽にしないと続きませんよね」

 次回は、日々の掃除の中で部屋を綺麗に保つポイントについて伺います。

≪お話を伺った方≫

新津春子さん

中国残留孤児2世として17歳の時に渡日。以来、清掃の仕事に携わる。1995年、日本空港技術サービス(現:日本空港テクノ)に入社。97年に(当時)最年少で全国ビルクリーニング技能競技会一位に輝く。現在は羽田空港ターミナルの清掃実技指導だけでなく、同社唯一の「環境マイスター」として、羽田空港の環境整備に貢献するとともに、新たにハウスクリーニング事業を立ち上げるなど常に新しいことにチャレンジを続けています。講演活動や著書も多数。近著に『1か月に1回物を動かせば家はキレイになる』(ポプラ社)など。

取材・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

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