まずは、壁沿いを掃除する
新津さんは、できるだけ洗剤を使わない、効率的な掃除の仕方を勧めています。
「私の会社では、いま一般家庭のお掃除サービスもやっているのですが、かなり汚れている箇所には、業務用の強い洗剤を使います。けれど、普段から綺麗に保っておけば、洗剤は使わずに済むんです」
洗剤をなるべく使わずに日々の掃除ができれば、手荒れを防げますし、環境にも優しいですね。前回「湿り拭き」を教えていただきましたが、この方法があれば、洗剤を使わずにほとんどの掃除をできるのでしょうか。
「汚れが少ない場合は、たいてい湿り拭きで拭き取れてしまいます。私は普段、掃除をするときは、湿り拭き用のタオルをつくり、それを空のバケツに入れて持ちながら掃除をします」
掃除をしていく順番はあるのでしょうか?
「玄関から始めるといいですね。といっても、玄関をすみずみまで掃除して次にトイレを、というわけではありません。玄関に入ったところの右側の面だけを拭いていきます。そのまま、廊下の右端、奥にある居間の右端と進んでいって、窓まで行き着いたら、今度は玄関に向かって、拭いていない反対側の面を拭いていくんです。一番大切なのは、家の真ん中から掃除をするのではなく、端からやっていくことです」
家の中を回遊するような動線で掃除をしていくことで、効率がアップします。
家具や床も「スミ」をしっかり
それにしても、なぜ新津さんは、端からの掃除をおすすめするのでしょうか。
「掃除機をかけるときは、たいてい部屋の真ん中から始めると思います。部屋の端のほうは、掃除機を壁にぶつけながら吸い取っているのではないでしょうか。最近の掃除機は吸引力が強いのですが、スミに押しやられたホコリやゴミは、完全には吸い取りきれないんです。むしろ、汚れを押し固めてしまいます」
棚やテーブルの上なども、真ん中から拭くのではなく、端から拭いていくことが肝心だそうです。掃除機をかけるのと同じで、真ん中から拭くと、スミにホコリなどを押し込んでしまうからです。
皆さんも、テーブルをきれいに拭いたつもりが、置いてあるメモやリモコンをどけると、その輪郭に沿ってホコリが残っていた……、という経験はありませんか?
部屋の壁でも同じことが起きていると、新津さんは指摘します。
「壁のスミにも、やはり汚れが溜まっています。このアクリル板のついたてを壁のスミに見立てて説明しますと、刷毛や不要になったプラスチックのカードなどで、ときどきつついてほこりや汚れを取り除くと良いでしょう」
このように、まずは部屋のスミに溜まったホコリをかき出すのが正解。
「そのあとで掃除機をかけたり、湿り拭きをしたりすることで、壁に掃除機を打ちつけて掃除をしなくても済みます」
強引な掃除は、部屋に傷をつけてしまうこともあります。時間的にも、「端から真ん中」という順番のほうが早く済みそうですね。
スミを綺麗にする小道具たち
新津さんは、家を掃除するときに、ちょっとした小道具を持つことを勧めています。
「使い古しの歯ブラシや刷毛はいいですね。あらゆる『スミっこ』をつついたり払ったりするために、こうした道具が役立ちます。私が特に気に入っているのは、ブラシと串が一体になって、柄の先が尖っているこの道具。じつはこれ、髪を染める洗髪料を買うとついてくるものなんです(笑)。この染髪ブラシは本当に優れもので、普段、仕事の現場でも重宝しています。細かいところに溜まったホコリをかきだしたり、さっとスミをなぞったりするだけでOK。これで落ちない汚れは、歯ブラシを使ってゴシゴシやったりします」
もうひとつ、常に持っているのが、小さな手鏡だそうです。
「私は京都・よーじやさんの丸手鏡を使っています。手鏡を持っていると、いろいろなものの裏側をチェックすることができます。テーブルの下、浴室の棚の裏側なども、この鏡を使ってチェックしてみましょう。掃除をしているつもりでも、見えないところは案外見落としているものです。水回りなどは、カビが生えたり、金属部分が錆びていたり。そうしたことをチェックできます。100円ショップなどでも小さな手鏡は買えると思います」
次回は「片付け」と「掃除」を分けることについて伺います。
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