「掃除のプロフェッショナル」直伝! 日々の掃除を楽にする[第2回]

「真ん中」から掃除をしない

空間
リビング・寝室・居室
関心
お手入れ

まずは、壁沿いを掃除する

 新津さんは、できるだけ洗剤を使わない、効率的な掃除の仕方を勧めています。

「私の会社では、いま一般家庭のお掃除サービスもやっているのですが、かなり汚れている箇所には、業務用の強い洗剤を使います。けれど、普段から綺麗に保っておけば、洗剤は使わずに済むんです」

 洗剤をなるべく使わずに日々の掃除ができれば、手荒れを防げますし、環境にも優しいですね。前回「湿り拭き」を教えていただきましたが、この方法があれば、洗剤を使わずにほとんどの掃除をできるのでしょうか。

「汚れが少ない場合は、たいてい湿り拭きで拭き取れてしまいます。私は普段、掃除をするときは、湿り拭き用のタオルをつくり、それを空のバケツに入れて持ちながら掃除をします」

 掃除をしていく順番はあるのでしょうか?

「玄関から始めるといいですね。といっても、玄関をすみずみまで掃除して次にトイレを、というわけではありません。玄関に入ったところの右側の面だけを拭いていきます。そのまま、廊下の右端、奥にある居間の右端と進んでいって、窓まで行き着いたら、今度は玄関に向かって、拭いていない反対側の面を拭いていくんです。一番大切なのは、家の真ん中から掃除をするのではなく、端からやっていくことです」

家の中を回遊するような動線で掃除をしていくことで、効率がアップします。

家具や床も「スミ」をしっかり

 それにしても、なぜ新津さんは、端からの掃除をおすすめするのでしょうか。

「掃除機をかけるときは、たいてい部屋の真ん中から始めると思います。部屋の端のほうは、掃除機を壁にぶつけながら吸い取っているのではないでしょうか。最近の掃除機は吸引力が強いのですが、スミに押しやられたホコリやゴミは、完全には吸い取りきれないんです。むしろ、汚れを押し固めてしまいます」

 棚やテーブルの上なども、真ん中から拭くのではなく、端から拭いていくことが肝心だそうです。掃除機をかけるのと同じで、真ん中から拭くと、スミにホコリなどを押し込んでしまうからです。

 皆さんも、テーブルをきれいに拭いたつもりが、置いてあるメモやリモコンをどけると、その輪郭に沿ってホコリが残っていた……、という経験はありませんか?
 部屋の壁でも同じことが起きていると、新津さんは指摘します。

「壁のスミにも、やはり汚れが溜まっています。このアクリル板のついたてを壁のスミに見立てて説明しますと、刷毛や不要になったプラスチックのカードなどで、ときどきつついてほこりや汚れを取り除くと良いでしょう」

このように、まずは部屋のスミに溜まったホコリをかき出すのが正解。

「そのあとで掃除機をかけたり、湿り拭きをしたりすることで、壁に掃除機を打ちつけて掃除をしなくても済みます」

 強引な掃除は、部屋に傷をつけてしまうこともあります。時間的にも、「端から真ん中」という順番のほうが早く済みそうですね。

スミを綺麗にする小道具たち

 新津さんは、家を掃除するときに、ちょっとした小道具を持つことを勧めています。

「使い古しの歯ブラシや刷毛はいいですね。あらゆる『スミっこ』をつついたり払ったりするために、こうした道具が役立ちます。私が特に気に入っているのは、ブラシと串が一体になって、柄の先が尖っているこの道具。じつはこれ、髪を染める洗髪料を買うとついてくるものなんです(笑)。この染髪ブラシは本当に優れもので、普段、仕事の現場でも重宝しています。細かいところに溜まったホコリをかきだしたり、さっとスミをなぞったりするだけでOK。これで落ちない汚れは、歯ブラシを使ってゴシゴシやったりします」

 もうひとつ、常に持っているのが、小さな手鏡だそうです。

「私は京都・よーじやさんの丸手鏡を使っています。手鏡を持っていると、いろいろなものの裏側をチェックすることができます。テーブルの下、浴室の棚の裏側なども、この鏡を使ってチェックしてみましょう。掃除をしているつもりでも、見えないところは案外見落としているものです。水回りなどは、カビが生えたり、金属部分が錆びていたり。そうしたことをチェックできます。100円ショップなどでも小さな手鏡は買えると思います」

 次回は「片付け」と「掃除」を分けることについて伺います。

≪お話を伺った方≫

新津春子さん

中国残留孤児2世として17歳の時に渡日。以来、清掃の仕事に携わる。1995年、日本空港技術サービス(現:日本空港テクノ)に入社。97年に(当時)最年少で全国ビルクリーニング技能競技会一位に輝く。現在は羽田空港ターミナルの清掃実技指導だけでなく、同社唯一の「環境マイスター」として、羽田空港の環境整備に貢献するとともに、新たにハウスクリーニング事業を立ち上げるなど常に新しいことにチャレンジを続けています。講演活動や著書も多数。近著に『1か月に1回物を動かせば家はキレイになる』(ポプラ社)など。

取材・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)

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