ウィズコロナ時代の「間取り」の新常識 [第3回]

介護対策にもなる!住まいづくりのヒント

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コロナにも介護にも有効なゾーニング方法

 コロナ対策に有効な間取りとは、洗面所や来客スペースといったレッドゾーン(ウイルスに汚染されるかもしれない場所)と玄関が直行動線で、なおかつ動線が短い間取りのことです。実はこの間取り、将来の介護対策としても有効だと小木野さんはいいます。

「高齢者の住まいと介護を考えるなら、高齢者ご自身の動線を確保するだけでなく、訪問介護員やデイサービスの方の動線も考慮する必要があります。その点、レッドゾーンと玄関が直行動線で、なおかつ動線が短い間取りは、介護する側とされる側の双方にとって利便性が高い間取りだといえます」

 第2回でもご紹介した「3階建て都市型住宅」の1階の間取りを例に考えてみましょう。
「この間取りはコロナ対策としてだけでなく、介護対策としても理にかなっている」と小木野さんは話します。

「この間取りが介護対策として優れている点は、まず1階だけで生活を完結させることが可能な点です。高齢者になって階段の上り下りが困難になった場合を想定すると、1階だけで生活できるというのは必須条件になります。

 介護する側にとっても、寝室や洗面所、トイレ、お風呂といった水回り全般の動線が近いため、最小限の行き来ですませることができます」

 訪問介護員やデイサービスの方の行き来を最小限に抑えられるというのは、介護される方のご家族にとっても負担が少ないといいます。

「ご家族にとっては、外部の方がリビングに出入りするのは負担が大きいでしょう。外部の方に“立ち入られても大丈夫なエリア”と“立ち入られたくないエリア”にゾーニングすることは、コロナ対策はもちろん、介護対策としても有効です」

介護がよりラクになる「水回りの移動」

 子どもが独立して親だけになった時、介護リフォームを検討される方は多いでしょう。右図の間取りを例に、「コロナ対策と介護対策を兼ねたリフォーム」のポイントについて小木野さんに伺いました。

 この間取りは、一昔前のマンションにおける典型的な間取りです。子どもが独立した後、子ども部屋として使用していた玄関付近の洋室が「物置き」と化しているご家庭は多いのではないでしょうか。

 このマンションをリフォームする場合、コロナ対策を考慮するなら、洗面所をより玄関に近づけたほうが良さそうです。介護対策としても、「寝室と水回り全般を玄関付近に移動するのはおすすめ」だと小木野さんはいいます。

「前述した通り、玄関と寝室、水回り全般の動線が短ければ短いほど、訪問介護員やデイサービスの方の行き来を最小限に抑えることができます。奥のリビングで家族が過ごしていることを考えると、外部の方の出入りを玄関付近で抑えることは、家族の負担を軽減することにもつながります」

 寝室と水回り全般の動線が短いことは、「排泄トラブルの防止」にも役立つそうです。

「将来おむつをつけるような状態になった時、排泄の問題はご本人にとっても介護する方にとっても大きなストレスになります。その点寝室とトイレが近ければ、粗相をしてしまった時でも移動が楽です。ご自身と介護する方のストレス軽減のためにも、介護リフォームするなら寝室と水回りの動線を短くすることをおすすめします」

 とはいえ、実際に水回りを移動するとなると、大掛かりなリフォームが必要になりそうです。小木野さんも、「マンションのような集合住宅だと大変かもしれない」と話しました。

「水回りを移すには、配管の確保が必須です。一戸建て住宅であれば配管の自由度が高いため、水回りの移動もそれほど大変ではないでしょう。

 ただし、マンションの場合は配管を上階から下階まで真っ直ぐに落としているため、配管の移動が難しいです。そもそも、水回りの配管移動自体を管理規約等で禁止しているケースが多いでしょう。配管を増設するかたちでの移動なら認めてもらえることもあるようので、まずは管理規約の確認が必要でしょう。

 リフォームにかかる費用としては、住宅環境や状況によって異なりはしますが、およそ800万円が目安となります」

(第4回に続く)

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〈お話を伺った方〉

小木野貴光さん

株式会社小木野貴光アトリエ一級建築士事務所 代表取締役。一級建築士。1973年静岡県生まれ。大学の建築学科を卒業後、建築設計事務所において、住宅、シニアハウジング、商業施設の設計を手掛ける。その後、筑波大学大学院にて、環境心理に関する研究でデザイン学修士号取得。住宅・リノベーション ・医療福祉施設の建築設計から環境デザインまで行う設計事務所として、2006年4月に一級建築士事務所を開設(2012年4月に法人化)。

文◎八木麻里恵
人物写真◎加々美義人
図版提供◎小木野貴光
画像提供◎Shutterstock/PIXTA

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